【緋彩の瞳】 2014年04月06日

緋彩の瞳

2014年04月の更新履歴

2014年03月2014年05月

ポイ捨て小説] Believe(R18) End

 概要: 「……レイ……」携帯電話を何度鳴らしても、レイは出てくれない。きっと待っていてくれて、待ちくたびれてしびれを切らして帰ってしまったのだろう。広いリビングの冷たいフローリングに膝から倒れるようにしゃがみ込んだ。両手に抱えたプレゼントやヴァイオリンが腕から落ちてしまっても、動けない。携帯電話も手からこぼれ落ちた。ドクドクと心臓が震える音が耳に響いて、何かしないとって思うのに、何もできない。神社に行かなきゃ...

ポイ捨て小説] Believe ⑦

 概要: 卒業式は、ほとんどの先輩はそのまま大学に持ち上がりなので、特に感動とか感慨深いという想いを抱くこともなく、粛々と行われた。全員での聖歌合唱も、先輩の歌がソロで聞こえてくると言うわけでもなく、学院長の挨拶、生徒の送辞、答辞、予定通りに終わる。思った以上に早く式も終わり、レイはまこちゃんとの待ち合わせまでの空き時間を潰そうと、毎日ミサの行われている講堂に入ることにした。古くて、寒々しくて、めったに寄り...

ポイ捨て小説] Believe ⑥

 概要: 目の前の舞台に集中することしか、できることがなかった。レイのことを考えるという思考を停止させなければ、多くの人の協力と観客を失望させるわけにはいかない。レイから連絡が来るかもしれないという期待を自分に持たせないように、携帯電話もあれからずっと切ったままでいる。誰のための演奏で、何のために舞台に立っているのか。ヴァイオリニストは物心ついたころからの夢だった。それが今現実になり、身体中から溢れだす喜び...

ポイ捨て小説] Believe ⑤

 概要: 聖歌隊に入ったら、なんて誘われてそれだけは無理ですと必死になって断る。歌なんて学校の音楽の授業以外では口ずさむことさえしない、レイはもっぱら耳だけしか使わないのだ。乾いた笑い声でごまかしていると、視界の端に柔らかな弧を描いた長い髪が入って来た。「………みちるさん?」みちるさんの背中だった。見間違うものでもない、その背中はレイの愛している全てなのだから。「みちるさん?」レイは聞こえなかったのかと、少し...

ポイ捨て小説] Believe ④

 概要: 日曜日の朝、訪れた麻布教会は半分が外国人だった。今更気にも留めないくらい、この町は外国人が溢れているけれど、TAの教会に慣れているから、少し不思議な光景だった。制服じゃない先輩ののびやかな歌声は、みちるさんのいない朝だというのに、清らかな想いで肺を満たしてくれるような気がした。神父の言葉も今日はすんなりと聞けたし、素直に楽しいと思える時間だった。先輩の歌が耳に残っている。ちらほらとTAの生徒の姿も見え...

ポイ捨て小説] Believe ③

 概要: 「レイ、何かいいことでもあった?」「は?……なんで?」「いや、なんとなく。みちるとデートの約束でもあるのか?」「地方に行ってるのに、デートなんていつするのよ」みちるさんは明日帰ってくるけど、何時に帰ってきて、そのあと会えるのかどうか、とりあえず不透明。もしかしたらまた、夜遅くに来てくれるかもしれない。それは単純に嬉しい気持ちはある。コンサートはただでさえ疲れるのに、地方へ行くということはもっと負担も...

ポイ捨て小説] Believe ②

 概要: 「顔色悪いけれど、どうしたの?」「……亜美ちゃん。みんなは?」「みんな、クラスが違うから。ホームルームが長引いているみたい」「そう」亜美ちゃんは挨拶を抜いて、レイの体調を気にする声をかけてきた。うつむいていたのに、よっぽどなのかもしれない。「体調悪いの?」「うーん、そんな自覚はないわ」別に悪いとは思っていない。憂鬱だなって思っているくらい。みちるさんと付き合うようになったことは、全員に伝えている。今...

ポイ捨て小説] Believe ( R18 ) ①

 概要: 「………まさか」カチカチと秒針が広いリビングに響いている。短い針は2を指していたが、外は暗闇に包まれている。3月に入ったばかりだというのに、雪がちらつく寒さだった。明日も、いや、今日も2月上旬の寒さが戻ってくるらしい。スタッフからもらった花束を抱えて帰って来たみちるは、部屋の明かりを付け、見慣れた自分の部屋に違和感を覚え、立ち尽くしていた。アンティークのダイニングテーブルの真ん中には真っ白なカサブランカ...
BACK|全1頁|NEXT