【緋彩の瞳】 我 君ヲ 愛ス(R18)

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

我 君ヲ 愛ス(R18)

その言葉は
高く小さく響きわたり
心の水面を細やかに震わした



歌わない
語らない
囁くこともしない

愛しいとその心に柔らかく吐息を吹きかけても、
一歩引いて俯くだけ

それでも、それが彼女の愛に対する答えなのだと推し量る

それができるのは、みちるだけ


「レイ?」
「………何?」

満月が麗しく闇を照らす夜。
部屋の明かりを消すとカーテンの隙間から洩れる光が、愛しい人に影を与えた。
影はみちるの身体を覆い尽くし、全身を預けてくる。
「何かあって?」
愛しさはせき止められることなく、溢れ続けては溺れてしまいそうになる。
溺れ、苦しくて死にそうになるたびにレイを誘った。
汗ばむレイの背中を抱きしめて、みちるはいつもコトノ葉にのせて、愛をつづる。
“愛しているわ”
みちるの冷えた背中に腕を巻き付け、縋りつく姿がその答え。

いつもこちら側から誘わないと、唇を重ねてくれない。

「何もないけれど。……嫌?」
「まさか。珍しいこともあるものね、って思っただけよ」
「そう?」

身体を這う冷たい指先は、刺青を刻むような痛みさえ覚える。
それは鮮烈な愛。
細くしなやかに。
身体に刻みつけて、削がれることのないように強く祈る。

這うような口づけを受けながら、冷たいその漆黒の髪を握った。
レイのシルエットはもう視界から消えて、愛で濡れたみちるの身体を果てへと誘う。
「痛くない?」
「大丈夫……」
深海を泳ぐ指を溶かして、この身の一部になればいいのにと強く願った。
「ん…あっ……はぁ…」
レイの指も舌も果てへと誘う愛の行為に没頭されて、かろうじて握りしめている髪も心もとなくて。握りしめるシーツでは、愛しさを伝えきれなくて。
「レ……レイ…っ」
脚の内を彼女の腰にすりよせて、右手をのばす。
レイの空いた手が添えられて、縋るように指を絡めて握りしめる。
それだけで波が押し寄せた。
「あぁっ!」
ビクンと身体が跳ね上がっても、レイは指の動きを止めてくれたりはしない。
「レイ…レイ……レイ」
何度も小さく跳ね上がる腰を、それでも追いかけて追い詰めて、果ててもその指を引き抜いてはくれない。
“もっと”と求めているのは、たぶんみちるの方。
壊しても構わないくらい愛で満たして。
次に寄せるレイの気まぐれが、いつ訪れるのかわからないのだから。

もっともっと深く。


朦朧とする意識を繋ぎとめるように、ついばむ口づけをされた。
「ん………レイ」
「大丈夫?」
「……えぇ」

あぁ、レイが愛しい。

必死に溺れまいともがいた身体から力を奪われて、抱きついてくる彼女をかろうじて受け止める腕の力も、すぐに途切れてしまうだろう。
「いつもは誘わないと受け入れてくれないのに……抱いてくれるなんて、もっと…」
首筋に戯れのように唇を押しあてるレイは、そのまま汗ばむ互いの身体をくっつけて、小さく深く息を吐いた。
余計なひと言を口にしてしまったのかもしれない。
「レイ…ごめんなさい。ただ、嬉しいだけなのよ。気に触った?」

「………月が…」

月の光も時間が過ぎてほとんど差し込まなくなってきた。
満月の麗しい姿を2人で眺めることもせず、二人が眠りに落ちたら、まもなく姿をひそめてしまうだろう。

「月?」


「……月が綺麗ね」


独り言のように呟いたレイは、みちるの身体から下り横に寝転がると、乳房に縋りつくように抱きついて眠る体制を整える。

恥ずかしさを隠すようなしぐさ。

ふと、ある小説家のある逸話を思い出した。

「そうね。……月が綺麗ね」

いちいち確認を取ってしまえば、レイの情緒的で繊細な気づかいを台無しにしてしまう。
きつく抱きしめる力は奪われていて、もうレイを愛する体力は底をつきてしまっていた。
満足そうにみちるの腕の中で眠ろうとしているから、今日はその身体を優しく抱いていたい。


照れて熱くなった頬を撫でて、おやすみのキスを送る。

彼女の言葉は
高く小さく響きわたり
心の水面を細やかに震わした


“愛しているわ”

だから今日だけは、その言葉を使わないで瞳を閉じた。



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Date:2013/05/31
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