【緋彩の瞳】 人魚殺人未遂事件 ③

緋彩の瞳

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みちる&レイ小説[幼馴染]

人魚殺人未遂事件 ③

「それ、どこにも私は登場していないじゃない」
みちるはカフェ・ラテを一口飲んだ後、だらだらと続いた美奈子とうさぎの話しに突っ込みを入れた。
「いやいや、人魚ってね」
「そうそう、人魚って言われるとね、つい」
双子のような顔つきで人魚人魚と言われても。
「あんたたちさ、その人魚を探しているっていう子の目的は聞いたの?」
レイは美奈子の横に座って、まるで自分は関係ないと言わんばかりに腕を組んでいる。そもそも、その子は最初レイを探していたというのに。
「いや、もう、人魚っていうのがさ、ほら、例えかと思って」
「それで?」
「海王みちるっていうヴァイオリニストのこと?って聞いたわよ」
「……それで?」
「足はあるのか?って聞かれたわ」
美奈子の話しは、結局はその子が本物の人魚を探しているというオチでいいのかしら。なんて思っても、だから、なぜその子が人魚を探しているのか、という肝心なところがわからない。
「私たちには足に見えるとしか答えようがないよね、美奈P」
前世でも今でも、みちるはずっと二足歩行で生きてきたし、海の中で生きてきたことはない。
「失礼なこと言わないで」
「そうよ、本物の人魚が聞いたら怒るわよ」
間髪いれずに言い放ったレイ。みちるは目を細めて睨んだ。何の効果もないし、その横の美奈子だけがビクビクしている。
「あんたたち、私の居場所を教えたりしていないでしょうね?」
レイの心配は自分のことだけね。
「してない。人魚なんて東京にいないって伝えたわよ。だったら、ヴァンパイアでもいいなんて言い出すからさ、ますますメルヘン過ぎて。そんなのレイちゃんでも探せないからって言って逃げたわ」
その女の子は何かの本を読んで、知識を得たみたいだ。みちるは睨んでいた目の力を抜いて、レイが何を考えているのかを探るように見つめた。重なる視線の先に言いようもない不安が見え隠れしている。
「美奈、人魚とヴァンパイアの共通点って知ってる?」
「え?何?……ぐ、グリム童話?」
「馬鹿、違うわよ」
「あー。だよねだよね、アンデルセンだよね~」
共通点って言っているのに。レイも一々聞かないで先に説明してあげないから。会話を楽しんでいるのかもしれないけれど、聞かされているこっちはため息しか出てこない。
「人魚姫はアンデルセンよ。でも、ヴァンパイアは言い伝えみたいなもので、童話じゃないわよ」
「おー。んじゃ、共通点って何よ。あれ?王子様のキスなんてあったかな?」
「ヴァンパイアは男も女もいるじゃない。明確に物語なんてないわ」
「ふーん」
「中国ではキョンシーって言われているでしょ。世界中に言い伝えはあるのよ」
「人魚との共通点ねぇ……」
美奈子が悩む横で、うさぎも首をかしげている。みちるはレイにこれをいつまで続けるのか、という視線を送った。日が暮れてしまう前に家に帰りたい。
レイはそっぽ向いて、それからみちるの足を蹴って来た。代わりに伝えてくれっていうことらしい。
「ヴァンパイアに血を吸われると、その人間もヴァンパイアになって不老不死になるの」
「あ、知ってる!あと鏡に映らなかったり、十字架が苦手なんだよね」
水を得た魚のように美奈子が手を挙げた。
「人魚はね、童話じゃないけれど……言い伝えで、人魚の死肉を食べたら不老不死が手に入るって言い伝えがあるのよ」
日本だけなのか、世界共通なのかはわからない。みちるは付けくわえた。
「じゃぁ、何?その子って不老不死になりたいわけ?」
美奈子は小学生のくせに生意気、と意味のわからないこと叫んでいる。レイはアイスコーヒーにささっているストローを口にくわえて、ブクブクと泡を立てていた。
「……どうかしらね。あるいは、誰かを不老不死にしたいとか」
「ふーん」
美奈子はレイの機嫌をうかがうように覗きこんで、何か言葉を求めている。
まだ、そっぽ向いたまま。
「わからないわよ。それぞれに別の思い入れがあるだけかもしれないし。とにかく、子供の夢を壊すのもかわいそうだから、関わらない方がいいと思うわよ」
「…………そうする」
美奈子はレイの態度があまりいい状況だと思っていないのか、素直に返事をした。



美奈には1週間の神社出入り禁止を言い渡している。うさぎが全く覚えていないからといって、思わぬ来客のある時間帯に、嫌だと言っても聞いてくれなかったことへの罰だ。
「どうせ今日もダメなんでしょ?」
「当たり前でしょ?それに、今日は用事があるから」
「……ちぇ。あーぁ、うさぎちゃんのせいだ!」
薄暗闇になった頃、クラウン前で追い払うように別れて、少し離れたところで待っていたみちるの元へと向かった。
「素直に帰ったのね」
「今週は立ち入り禁止なのよ」
「あら、私はいつも無許可の立ち入りを制限されているのに」
みちるもめんどくさいんだから。
「私もみちるが暮らしている家には無許可で立ち入らないでしょ」
「はるかたちがいるからでしょう?実家には不法侵入したじゃない」
「はいはい。いつかね、いつか」
もう、美奈はあんまりしつこくみちるとの間柄を聞いてこなくなった。みちるの実家で起こした騒動で、少なくとも親同士の付き合いはある、みたいなことになっているからなのか、こちらから言うのを待つことにしているのか。
「気になるの?美奈子たちの言っていた子」
「ちょっとね。何をどうするつもりなのかしら、っていう興味はあるわね」
「それだけ?」
「…………不老不死もそうだけど、私が引っ掛かっているのはもう一つの方なのよ」
「ヴァンパイアは死者を蘇らせるわね」
「人魚にそんな伝説はある?」
秋風が漆黒の髪をさらりと靡かせる。レイはみちるに鞄を押しつけると、背中の髪の動きを嫌がる様に手で梳いてひとつにしてシュシュで纏めた。相変わらず色白い首筋。
「調べておくわ」
「厄介なことに巻き込まれないようにしたいのよ」
レイの予感は当たってしまうから。特に死者を蘇らせたいだなんて思っているなんて、まったく笑えない話しだ。
「……吸血鬼に噛まれたみたいね」
「え?………あぁ…みちる、薄暗いのに目ざといわね」
赤い愛の約束事が薄く残る。夕闇で見えないと思ったのか、それとも忘れていたのか。
二つの鞄はそのままで、レイの腕を取った。
「レイ、不老不死にならないでね」
「年を取らないっていうのは遠い昔に経験してるでしょ?」
今思うと、残酷なまでの孤独だったはずなのにそれが普通だと思っていた。
あの死にたくても死ねない孤独には、今のみちるでは耐えられないだろう。
仲間と共に生きる喜びを身体に刻んでしまったのだから。
年齢を重ねることの愛しさを、身体に浴びてしまっているのだから。
「それもそうね」
「みちるも殺されないように、気をつけなさい」
「あら、レイが守ってくれるんでしょ?」
「はるかさんがいるでしょ」
「近くの恋人より、もっと近くの幼馴染よ」
「ふん」
でも、みちるを助けてレイが死ぬくらいなら、みちるが死ぬからレイは生きておいて欲しい。
レイのいない世界を生きて行けるわけがないのだから。
「頼りにしているわよ、レイ」
「ふん」
涼しげな首筋に噛みついてやろうかしら。かわいくない幼馴染は、みちるの歩くテンポなんてまるで無視して、さっさと点滅する信号を渡ろうとしていた。



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Date:2014/03/23
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