【緋彩の瞳】 人魚殺人未遂事件 ④

緋彩の瞳

みちる&レイ小説[幼馴染]

人魚殺人未遂事件 ④

人魚の名前は海王みちると言うらしい。美咲は高校生が言っていた人の名前をしっかり記憶していたけれど、名前がわかったからといって、その辺を歩いているわけでもない。ヴァンパイアは人の姿をしているって聞いたことはあるけれど、人魚は人間に化けているのだろうか。でも、絵本では声を失う代わりに人間になったとか。人間になってしまっているということは、人魚とは言えないのではないだろうか。いや、海水に浸けたら下半身が魚になるとか、そんな話しじゃなかったかな。
いろんな人魚にまつわる絵本やアニメのエピソードがごちゃごちゃになって、美咲は何が正しいのかわからなくなって来た。
あの高校の制服を着た人たちをもう一度見つけることができたら、いや、あの人たちじゃなくても同じ高校の制服を着た人にその名前の人を知っているのか聞いてみたら、もう少し近づけるかもしれない。同じ高校なのか、もっと大人なのか、何も分からない。
学校が終わってから、千尋と一緒に高校の前で待ち伏せをした。大人たちがゾロゾロと出てきて、想像以上の人の多さに、怖くて誰にも声をかけられない。
「お姉ちゃん、あの綺麗な人に聞いて来て」
「え~!」
「ほら、早く」
千尋に背中を押されて、電信柱の陰から強制的に追い出されてしまった美咲は、ちょうどその目の前で立ち止まった背の高い女の人を見上げた。
女の人……のはず。スカート穿いているし。
「あ、あの…あのっ」
「なぁに、お嬢さん」
背の高いその人は腰をかがめて視線の高さを合わせてくれる。ごくりと生唾を飲み込んだ。
神秘的で綺麗な人だ。
「あの…か、海王みちるって言う人を探しています。知りませんか?」
「みちる?知っているけれど、どうかしたの?みちるのファン?」
ファンって、その人はアイドルなのかな。聞いたことないけれど、そう言えば、ヴァイオリンがどうとかこうとか。ヴァイオリンっていう楽器を演奏している人って言うことなのかもしれない。
「え?…えっと、はい!そうです」
「ふーん…っていうか、ほら、そこにいるけれど」
そこ、と言った指先を辿ると、前に会った変な髪型の女の人と赤いリボンの女の人、そして絵本から飛び出してきたような“人魚”がいたのだ。
「ありがとうございます!」
「え?いや、ちょっと!」
美咲は電信柱に身体半分隠している千尋の元へ戻ると、手を引いて一目散に逃げた。今なら運動会でぶっちぎり1位になれるんじゃないかって言うくらい、ものすごく走った。
顔と名前がわかったのなら、あとはあの人魚を捕まえてしまえばいい。
大人相手だけど、2人で力を合わせればきっとうまく行くだろう。



「はるか、小さい子供をナンパして逃げられたの?」
「いや……みちるのファンって言う子がいて。でも、みちるの顔を見た瞬間、ビビって逃げた」
「失礼な」
先に校門を出たはるかから、逃げるように走り去ったランドセルを背負った女の子2人。何かはるかが悪さでもしたのかしらなんて思ってみたけれど、確かにみちると目が合ったのを合図にするかのように逃げ出して行ったから、不思議だった。
「もしかして、あの子たち…前に言っていた子たちかもしれない」
「あぁ、レイに人魚を探してもらおうとしていた子」
何日か前に美奈子とうさぎが会ったという、レイに人魚の居場所を探してもらおうとしていた子たち。みちるにたどり着いたということは、美奈子たちがみちるの名前をうっかり出したことを真に受けているのか、それとも別の用事なのか。
「人魚?なんだよ、それ」
「あの子たち、人魚を探しているんですって」
「へー。イマドキの小学生のくせにメルヘンチックだな。みちるのファンって言ってたけど」
「さぁ、それはどうかしら?口実かもしれないわよ」
もう姿を消してしまっては、何をどうしたいのかがわからない。でも、はるかのいうビビったというよりも、みちるという人物を見に来たと言ったような感じだった。
「あの子たちの態度さ、人魚を見たいという好奇心って言うわけじゃなさそうなんだよね」
美奈子の声色は冗談ではない。心配の色を含んでいる。はるかは事情をよくわからないと、説明を求めるような視線を投げかけてくる。
「はるか。私のことを殺そうとする子供がいたら、容赦なくその子に剣を向けられる?」
「なんだよ、それ。人魚に会いたいっていうだけだろ?」
「だといいわね、本当。というか、私が人魚っていう前提で話しているような気がするんだけど」
「人魚ってさ、要するに身体の半分魚の化け物でしょ?合ってるじゃん、ねぇ?」
美奈子は同意を求めるようにはるかとうさぎに問いかけているけれど、うさぎもはるかもツンと無視を決め込んでいるようだ。
みちるの鞄が美奈子の頭のてっぺんに直角にめり込んだのは、言うまでもない。




催促↓
関連記事

*    *    *

Information

Date:2014/03/23
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/102-03bd4e69
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)