【緋彩の瞳】 人魚殺人未遂事件 ⑥

緋彩の瞳

みちる&レイ小説[幼馴染]

人魚殺人未遂事件 ⑥

「…………あっ!」

人魚が振り返ったと思ったら、両手に鋭い痛みが走った。
何が起こったのかわからなかった。
痛いと思った瞬間、バチン!という音が手元から聞こえてきた。
人魚まであと1メートルもない。手にあったはずの重みがいつの間にかなくなっていて、代わりに痛みとしびれがやって来た。

「残念だったわね。あと一歩だったのに」

「お……お姉ちゃん!」
勢いを失くした美咲が呆然と立ち尽くしていると、後ろにいた千尋が肩をゆする。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
人魚と2人の間のわずかな隙間。鋏が見当たらない。
「鋏……鋏は?!」
人魚はわずかな距離にいるのに、逃げるそぶりを見せずにじっとこっちを見つめてきている。
美咲はわけがわからず、手にあったはずの鋏を探した。
「鋏ならそこよ」
人魚姫が睨みつけてくる。そして指差す場所には落ちた鋏と弓矢があった。
弓矢を放ったと思われる方向を見ると、30メートル以上離れた場所に、黒髪の女の人が弓を構えて立っている。先に腰を抜かしたようにしゃがみ込んだのは千尋だ。どんなことがあっても、泣いたりしないという約束を破って、大声を出して泣き始めた。
「私の最愛の幼馴染は、私を殺そうとする人間に対して残酷なことをすることは平気なの。相手が子供であろうと女であろうと。次は妹さんの頭に弓矢が刺さるかもしれないわね」
「千尋!」
泣かないって決めたのに。美咲は怖くて悔しくて泣きそうになるのをそれでもこらえて、千尋が持っていた鋏を奪った。
「まだやるの?」
「人魚の肉をママに食べさせないとダメなの!」
「私を殺しても無意味よ。私は人間だから」
「だって、人魚だって言っている人がいたもん!」
鋏を勢いよく振りあげた瞬間、またさっきと同じ痛みが右腕を襲った。
「あっ!」
ビュンと音がして、バチン!と手に持っている鋏が落とされる。
「ママ~~!パパ~~!」
千尋がさらに声をあげて泣いた。
「どうする?素手で私を殺す?妹の頭に穴が開いてもいいのなら、どうぞおやりなさい」
遠くにいる黒髪の人は、もうすでに3本目の弓矢を構えている。

千尋が殺される。
美咲は大泣きしている千尋を守る様に抱きしめた。

「千尋は関係ない!千尋を殺さないで!」
「どうかしら?あの子から私を奪うのなら、あなたにも同じ痛みを与えるのでしょうね」
「お願い、殺さないで!」
泣きじゃくりながら美咲は叫んだ。その叫び声に反応したのかわからないけれど、近くでカラスの鳴く声がする。異様な泣き声で、それも恐怖を助長させた。

「私から大事なものを奪おうとしたから、あの子たちが怒っているのよ」

目を瞑って恐怖に耐えていると、頭上から人魚とは違う声がした。
恐る恐る顔を上げると、弓矢を持っていたあの、長い髪の女の人だ。

「ごめ……ごめん、なさい」

怖い。
本気を含んだ二つの瞳が、きつく美咲を睨みつけてくる。

「二度とみちるに近づかないと約束するのなら、今日は見逃してあげる。でも、次は本当にあんたの妹を殺すわよ。いいわね?」
胸ぐらを掴まれて、千尋は脅されながら身体を揺さぶられた。人を殺すと言う気持ちの強さは美咲よりもずっと上のように感じた。だからこの人は本気なのだ。
「……ごめん、なさい…」
「妹を連れて、さっさと帰りなさい」
泣きじゃくりながらなんとか立ち上がり、もっと大声で泣く千尋の腕を引っ張った。カラスがぴたりと鳴きやんだ。空を飛んでいた二羽が黒髪の女の人の両肩に止まる。
美咲は震えを抑えきれずに、赤い鳥居めがけて千尋の手を取り走った。



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Date:2014/03/30
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