【緋彩の瞳】 『ABO式』

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

『ABO式』


「O型って、あれよね。大雑把。適当なのよ、適当」
「AB型の変わり者に言われたくないわ」

ぴりぴりしたムードがリビングを包んでいる。美奈子は一歩踏み込むことができずに、同じく一歩踏み出すことが出来ないで、廊下で立ち尽くしたままのはるかの肩を指先でつついてみた。
「あれ、何をそんなに揉めているの?」
「さぁ…」
ソファーに向かい合って座っている二人は、お互いがなにやら雑誌を片手に冷戦を繰り広げている。
「繊細といってよ。AB型はね、繊細な人間が多いのよ」
「O型は、おおらかなのよ。誰とでも分け隔てなく接することが出来る、いわば日本人には必要なタイプなの」
「だから、誰にでも愛想笑いが出来る人間の集まりって言うことでしょう?」
「失礼ね。めったにない血液型がそんなに自慢なの?せいぜい献血のときに喜ばれるだけじゃない」
「希少価値のある人材だもの」
「呆れた。そういうの自意識過剰って言うのよ。お分かり?」
「そういうのを負け犬の遠吠えっていうのよ、みちるさん」
お互いよくもまぁネチネチとがんばるものだ。はるかは美奈子と目を合わせると、仕方なく二人の間に割って入った。
「2人とも、何?血液型がどうかしたの?」
2人はぞれぞれ別の雑誌を手にしているようだ。きっ!とはるかを睨んだ二人はタイミングを計っていたかのように同時に立ち上がると、はるかに詰め寄った。
「見てよ、これこの雑誌にっ」
「みちるさん、邪魔よ!」
はるかに雑誌を見せようとするみちるをレイが押しのける。今回はレイのほうが強かったようだ。どんっと背中を押されて倒されかけた。
「O型のうお座の女の人は、今週は恋人と大喧嘩して別れる可能性が高いらしいわ。終わりよね」
普段表情を表に出さないレイが、なんだか勝ち誇ったような笑みを零している。と、押し合いに負けたみちるは気がつくと美奈子に向かってなにやら問い詰めていた。
「ほら御覧なさい。AB型の牡羊座は生まれつき浮気性なんですって。長く付き合えないタイプらしいわ。美奈子、残念ね」
「は?はぁ…って。え?!」
訳も分からず頷いた美奈子は、それがようやくレイのことだと分かった。
「おまえら、何か?そんなつまらないことを張り合っていたのか?!」
鏡占いの得意なみちるが。タロット占いどころか未来まで占えちゃうレイが。よりによってこんなつまらない雑誌の占い情報を真に受けて……
「だって、最近面白いことがないもの。だからね、レイと賭けをしたのよ。ランダムに選んだ雑誌の占いでどちらが有利かっていうのをね。負けたらレイン・ツリーのフルコースを奢るっていう約束をして」
みちるは雑誌の記事をしつこく美奈子に読ませようと迫りながら、なぜ2人が争っているのかを説明する。しかしランダムに選んだって、リビングには大量の雑誌が散らばっているというのに。
「言い出したのは、みちるさんよ」
「所詮、お互いB型とは相性が悪いのよね。どの雑誌にもそう書いてあったわ」
みちるは読もうとしない美奈子に飽きたのか、B型たちに向かってちくりと嫌味を言った。
「そうよね。B型ってあれでしょ?自己中が多いって」
レイも雑誌をぽんとテーブルに放り投げて、ヒートしていた熱を冷ますようにソファーに座る。
「どうでもいいけれど、B型を悪く言わないでよね、2人とも」
黙って聞いていた美奈子が拳を作って抗議した。
「あら美奈子、やっぱりABとBは相性が悪いのね。さっさと別れてしまいない。フルコースは私のものになるわ」
小悪魔みちるが優雅に微笑む。
「結構です!そんなつまらん雑誌に振り回されないわよ!レイちゃんもレイちゃんよ!なーにやってるのよ!」
「だって、最近面白いことがないもの」

2人はたびたび(しょっちゅう)こうやって、お互いの相棒を困らせる遊びをする。振り回すだけ振り回したうえに、文句まで付けられるのはいつものこと。
「面白いことがない?そう言われて、昨日映画見に行ったじゃない!」
「美奈の選んだ映画はB級。あ、そうか。血液型と同じね」
「血液型とは関係ないわよっ!」
「あら、そうでもないわよ。現にあなたたちは相性が悪いもの」
「横からしゃしゃり出てこなくて結構!」
何かとちょっかいを出そうとするみちるに、美奈子は爆発しそうになる。
「まぁまぁ、美奈子。バカお嬢様たちのつまらない遊びなんだからさ。放っておこうよ」

根っこの部分は血液型とは関係なく同じタイプらしいレイとみちるは、まだまだたくさん積んである本屋の袋の中から、必死になって占いのページを探そうとするところだ。お金を持っている一人娘は、そんじょそこらの遊びではものたりないらしい。
「レイちゃん、もういいよー。遊ぼうよ」
「ダメ、もっと破壊的な占いがないと。うお座のO型で、東京に住むヴァイオリニストの運勢が、もう、すんごく最低なものとか」
「レイ、本気で抱き絞め殺すわよ?」
「普通に殺してよ。抱きしめて殺すのはやめて。気持ち悪いわ」
なんだかんだやっぱり根っこの部分では仲がいい二人は、お互いを利用して悪い遊びをすることも趣味らしい。
「美奈子、諦めよう。ここにいたら被害がこっちにくるからさ、2人でどこかへ行こうか」
「そうね。B型とB型は相性がいいのよ」
「お互い、苦労性なのは間違いないからな」


その後、ドライブして戻ってきた二人は、雑誌の山の中でレイが疲れきってみちるの膝枕で寝ている姿を見る羽目になる。
「仲が悪いのかいいのか、どっちかにしてくれよ」
AB型の繊細な性格を持つレイと、O型のおおらかな包容力のあるみちるとは、やっぱりなんだかんだ相性は最高なようだ。

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Date:2006/05/08
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