【緋彩の瞳】 瞳を閉じたらキスが降る END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

瞳を閉じたらキスが降る END

目を閉じてウトウトしていると、襖が開いてレイちゃんが入って来た。目を閉じたまま、寝た振りを決め込んだ。ちょっと眠たくなってきているし、簡単に追い出されたくはない。無視されて隣で寝られたら、その時に甘えた声ですりよったらいいや。それで、おめでとうって言ってプレゼントを渡そう。
「……美奈…ちょっと」
レイちゃんは控え目な声で美奈子を呼ぶ。
目を閉じたまま寝息っぽく呼吸を繰り返した。
布団がはがされたから殴られるのかと内心ビクビクしていても、みぞおちはずっと安全を保っている。
「………美奈」
本気で起こすつもりはないらしい。寝ているのを確認するような囁き声で美奈子を呼ぶ。
その声はとても穏やかで、優しい声で。
目を閉じていることがもったいないとさえ思った。
どんな顔で名前を呼んでくれているのか、見ていたい気持ちにもなる。

「………馬鹿」

瞼を閉じているけれど、部屋の明かりは瞼の裏でちゃんと感じている。それでも一瞬暗くなった気がしたから、電気でも消したのかな、なんて思ってたら



唇に、冷たくて柔らかい感触が舞い降りてきた。


レイちゃんから……


………キスをされている?



まさか


これはきっと、冷たくて柔らかい別のものを押しあてて
美奈子の反応を試しているとか

きっとそうなんじゃないかな……


いっそ、このまま腕をまわしてやろうかな、なんて思っていたら唇が離れて行ってしまった

恐る恐る目を開けてみる
至近距離すぎるところにレイちゃんの瞳があって
重なり合った

「………」

……
………

…………

「……みっ…」

ものすごくわかりやすく顔を赤くしていくから


「……………好きよ、レイちゃん」

なんだ、レイちゃんも美奈子のことが好きなんでしょ

知っていたけどさ
このツンデレ

寝てるときにしかキスしてくれないってどういうことよ


「好きよ、レイちゃん。大好き」
「あ……あんた、寝たフリしてたの?」
話題を変えようとたって無駄。
「起こすようなことをしたのは、レイちゃん」
「ひっ、人の布団で、寝てるから、でしょ?」
「レイちゃんが好きだから、一緒に寝たくて待ってただけよ」
レイちゃん、起き上ればいいのに。真っ赤な顔のどアップはずっと美奈子の顔の近くにあって、
もう、そのまま力を抜いて美奈子に身体を預けるか、いっそ美奈子が抱き寄せるか。抱き寄せても文句言われたくないんだけど。この場合、仕掛けたのはレイちゃんだし。
「い、嫌よ。なんで美奈と……」
「キスしてくれたじゃない」
「そっ…それはっ!」


あ~~!!!
かわいい。
かわいすぎるよ!


「私のことが好きなんでしょう?」
「っ……!!べっ、別に」
「私は好きよ、レイちゃん。出会ったときから、ずっとレイちゃんだけが好き」
この言葉、何度も言った。何度も何度も声にした。
同じ言葉をレイちゃんからはもらったことはない。

でも知ってる
レイちゃんの表情は、美奈子を見つめるときはとても柔らかくて優しいことを


「ととっ…とにかく、あんたは隣の布団で寝なさいよ」
何が何でも話題を変えたいっていう赤い顔は、そっぽ向いて瞳を泳がせている。美奈子は笑いをこらえながら、起きあがろうとするレイちゃんの腕を払いのけた。
「きゃっ」
身体を支えていた腕の力を失ったレイちゃんが美奈子の身体に落ちてくる。抱きとめて、頬に唇を寄せる。暖かいのは、お風呂上がりのせいだけじゃない。
「ちょっ!なっ…」
「お誕生日、おめでとうレイちゃん」
「…………え?」
「お誕生日でしょう?おめでとう」
「…………えっ?あっ…えっ??」
怒ったり驚いたり、慌ててみたり。
本当、こういう表情は美奈子にだけしか見せてくれないんだろうから、たまらない。
「誰よりも一番に言いたかったの。誕生日の夜にレイちゃんと一緒にいたくて、ずっと今日を楽しみにしていたのよ?」
離れてしまわないように、両腕をレイちゃんの背中にまわした。驚きすぎているのか、レイちゃんは固まったままでいる。
「おめでとう」
「…………ありがと」
「2人きりでレイちゃんの誕生日を迎えるの、初めて」
「そう言えば……そうね」
起き上がることをあきらめてくれたのか、それとも素直になってくれたのか、肩の力を抜いて身体を預けてくれる。こんな風に密着するなんて、本当にめったにない。誕生日っていう効果はかなり大きい。
「好きよ、レイちゃん」
「……何度も聞いたわよ」
「うん。でも何度でも言うの。ずっと、ずっとレイちゃんが好き」
「あんた、そればっかりよね」
レイちゃんの素直って、本当、どこにあるんだろう。
照れ隠しも可愛いのは確かだけど、こんなときは、“私もよ”って言うのが正解なのに。
「レイちゃんに、プレゼントがあるの」
美奈子はくるりとレイちゃんを抱いたまま場所を入れ替えた。今度は下になったレイちゃんが、目を見開いて見上げてくる。
これもまたこれで凄くかわいいし、このまま抱きついてキスしたい。
「なっ、何するのよっ!」
「だから、プレゼントよ」
言って美奈子は、目を開いたままのレイちゃんに口づけをした。さっきレイちゃんがしてくれたよりも深く濃い口づけ。
「っ……!」
がしっと腕を掴まれたけれど、美奈子は構わずに唇をもっと深く押しあてた。柔らかくて冷たい唇。小さく震えている唇。
拒絶ではない。だけど、ちょっと怖がっているその唇に、たくさんの愛を押し流すように。
レイちゃんの指の力が少しずつ抜けて、受け入れるまで、ずっと唇を何度も何度も角度を変えながらついばみ、愛を歌った。
「レイちゃん」
真っ赤。大丈夫って聞きたくなるくらい、レイちゃんの頬は赤くなっていて、うすく開いた瞼には、いっぱいの涙が溜まっている。

……我慢し続けるのも苦しくなるよ、その顔。
美奈子は理性で欲を殺しながら、なんとかごまかすようにその頬に唇を這わした。

「……美奈」
「うん」
漆黒の髪を指に絡めて香りで肺を満たすように深呼吸をした。シャンプーの香りはいつものレイちゃんの甘い匂い。
「美奈……あ、…」
レイちゃんが美奈子の頬へと腕を伸ばした時に、その左腕に巻かれているモノにやっと気がついてくれた。口づけを交わしながら、そっと器用にはめてあげた、レイちゃんへのプレゼント。
「お誕生日プレゼント」
「……綺麗ね」
「うん。時々でいいから、付けてよね」
レイちゃんの趣味っていうのを全てわかっているつもりはないけれど、少なくともレイちゃんの趣味じゃないものはわかっている。これでも一生懸命探しまわったんだから
「は……はずさないわよ」
視線をぷいっとそらしながら、そんなかわいいことを呟いてくれて。

ツンデレという現代用語辞書を引くと“火野レイ”と書いてあるに違いない。

いや、でも、レイちゃんのデレって希少価値過ぎて“ツンツンツンデレ”くらいなのかもしれない。

「じゃぁ、絶対にはずさないでよ」
「……わかったわ。あと、重たいからそろそろどいて」
「一緒の布団で寝てもいいなら、降りてあげる」
眉毛ハの字になって考えるなんて。それはちょっとでもOKっていう選択肢があるっていうことかなと期待してしまう。本当に嫌だったなら、今頃みぞおちにグーパンチをお見舞いされているところなのだから。
「何もしない?」
「しない。……欲しがりません、勝つまでは」
レイちゃんがちょっとでも嫌だと言う仕草を見せる以上、美奈子だって怖い。途中で嫌だと言われるくらいなら、欲しいと思ってくれるまでは、レイちゃんに印籠を渡しておくしかない。これ、使い方あってるかな…。
「何と戦ってるわけ?」
「いじっぱりと」
「べっ………別に私はっ」
自覚ないんだもんね。自覚があったら逆にものすごく悪女だから、これでいいんだけど。
「いじっぱり。私の大好きなレイちゃんは、いじっぱりなんだから。でも仕方ないんだ。それも含めて、火野レイだし、そのレイちゃんを愛しているんだからさ」
だから、欲しがりません!レイちゃんが、欲しいって思ってくれるまで。
抱いてって口にしてくれるまで。………永遠に来ない可能性もあるけれど

「さらっと言わないでよ」
ぷいっと顔をそむけて、レイちゃんは美奈子を押しのけた。でも、布団からどかそうとはしないから、そのままおずおずと同じ布団の中に収まってやる。
「好きだもの」
「わかってるわよ」
「ずっと、今日はこうやって寝てもいい?」
そっぽ向いているレイちゃんの頬は、まだまだ火照ったままかな。その身体にぴたりとくっついて腕をまわしても、拒否されない。


欲しがりません、は撤回

欲しがっても、我慢します。

我慢

我慢


「美奈」


どきっ


「何?」
やましいこと、ちょっと考えたのがバレたかな。

「来年も一番にお祝いしなさいよ」
「…………うん。約束するわ」

いやもう、なんて言うかこれは

“とっても嬉しかった、大好きよ美奈”っていう意味と捉えても問題なさそう。

「お休み、レイちゃん」
「お休み」

意地っ張りのツンツンレイちゃん。
もっともっと、デレデレしてくれてもいいのに。
でも、そんな姿を見せられた日には、美奈子は骨抜きになってキュンキュンしすぎて死ぬかもしれない。
でも、伝わってくる。
細い腰にまわした美奈子の腕に重なるレイちゃんの手が、ちゃんと美奈子を好きでいてくれることくらい。


なんでこんな、ツンツンを好きになっちゃったんだろう
なんて思うだけ無駄

好きなんだから

火野レイの何もかも

愛を素直に受け入れられないでいるところも
美奈子のことを好きなくせに、言葉や態度に出せない不器用さも

たまらなく

好きなんだから





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Date:2014/04/24
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