【緋彩の瞳】 きづいてよ ①

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世では恋人]

きづいてよ ①



結局、前世の記憶なんてものは蘇ったりしなかった。
前世を背負っていると言うことは確かだと思っていたし、だからこそ変身をして戦っていた。
でも、今となってはヴィーナスこと、アイドル愛野美奈子以外は月の王国とやらの記憶なんて思い出していないければ、うさぎも前世のエンディミオンとの恋も“なんとなく、そうだったはず”くらいで。
うさぎと衛さんは結局、現世でお互いに惹かれたんだろう、って思う。

まぁ、それはそれとして。
もう、それも過去の話。
ただいま、絶賛女子中学生やってます。



「レイってさ、本当変わったよな」
「あぁ……確かに。出会ったころよりずっと笑顔が増えたよね」
亜美ちゃんはまるで保護者のように見守っている。
「うん」
笑顔だけじゃないんだけどね。まことは心の中で呟きながら、ファッション雑誌を捲るお嬢様を見ていた。まことの記憶では、レイはそういう雑誌なんて読まない性格だったのに。その雑誌を買いに行ったのはまことで、それなのに一番にレイが読んでいるんだから。

表紙が愛野美奈子なら、まぁ、……当然か。

レイは無言ではあるけれど、ページを開くたびに顔がほころんでいる。あまりにわかりやす過ぎて、もはや突っ込むことさえしたくもない。

火野レイは愛野美奈子に相当ゾッコン。
恐ろしいことに、その行動は好きが故であるということに、当の本人は全く気が付いていない。

恋していることに、まったくもって気が付いていない。

ゆっくり読もうと思って袋から取り出した、その表紙を見た瞬間のレイの顔と言ったら。
奪い取り、貸しての一言もなく当然のようにソファーに座ってしまうんだもの。
見せてやりたいよ、思われ人の本人に。

「愛野美奈子、どう?やっぱオリジナルブランドの服はカッコいい?」
まことは椅子に腰を下ろして、少し離れたソファーで夢中のレイに声をかけてみた。
「さ~。短いスカートよね」
「レイんとこの学校の制服と同じくらいじゃない?」
「そうかしら?こんな生足見せびらかすようなものじゃないわよ、うちの学校」
「……へぇ」
愛野美奈子の特集ページを堪能しまくってる。しばらくしてやっと立ち上がったレイは、ぱたんと雑誌を閉じてまことに返してくれた。
「今日、うさぎは?」
「衛さんと遊びに行くんだってさ」
「ふーん」
レイは聞いてみただけっていう感じで、うさぎがどこで何をしているかにさほど興味はないんだろう。ピンクのハートのクッションを抱いて手持無沙汰にしている。
「レイは?」
「何が?」
「いや、今日はどうしたの?特にみんなで集まる約束もなかったしさ」
「べ、別に、何でも」
ぷいっと横を向いて知らんぷり。
たぶん、まことが今日発売の雑誌を買って、ここで亜美ちゃんと読むつもりでいたことを予想して来たんだろうな。
っていうか、自分で買えばいいのに。っていうか、発売日知ってたんだ。
機械音痴でパソコン触れないし、テレビも見ないって言ってたけど、どこからの情報なんだろ。
「あーぁ。愛野美奈子は私たちの仲間なのに、戦いが終わってもあんまり一緒にいられないよな。なんかさ、携帯の番号とかメアド知っていても、用もないのに連絡取りづらいよな」
そのあたり、自分でもファンの心理ってやつがまだまだある。デビュー当時から追いかけてきたものとしては、会うたびにやっぱり心躍ってしまうのだ。
「カッコいい~。やっぱ愛野美奈子は何を着ても似合うよね」
「メイクが濃いわ」
雑誌を捲りながら亜美ちゃんに同意を求めたのに、レイから鋭いコメントが割り込んでくる。
「そうかなぁ。いつも明るい色が多いし、こういうモードっぽい大人な感じで、ちょっとキツい感じも、それはそれでいいんじゃない?」
「……ふん」
なんでそう、ちょっと馬鹿にした感じで笑うんだろ。あれだけニヤけた顔をしていたのに。
うさぎくらいの素直な表現、とまではいかないけれど、隠せてないってわかってないんだろうな。
「これ読んだ後、感想をメール送ろうかな」
ちゃんと返事もくれるし。いい口実にもなるし。なんてったって、愛野美奈子と同じ前世を背負っている仲間なんだし。
「あ、じゃぁ私も送ろうかな。美奈子ちゃん、最近忙しくて会えなかったし、メールを送ったらきっと喜んでくれると思う」
亜美ちゃんも、うさぎやまことほどじゃないけれど、愛野美奈子っていうトップアイドル兼仲間のことをとても大切に想ってくれているみたい。流石にミーハーではないけれど。
「レイは?一番に読んだんだから、感想くらい本人に言ってやったら?」
「なんでよ」
うわ、なんでそんな怒った顔でにらんでくるんだよ。……わかってた態度だけどさ。
「きっと、うちらがメールを送るよりもレイからの方がずっと喜んでくれると思うよ」

「はぁ?意味分かんない」

とか言いながら、レイは携帯電話を取り出している。

あー、レイはめんどくさい

いい加減、自覚したらいいのに。
っていうかこの場合は言ってやらないとわからないんじゃないかな。
いや、言ったらものすごく全否定しそうな気がして、むしろ喧嘩吹っ掛けてきそうだしさ。

「…………どうしたの、レイちゃん?」
「べっ、別になんでもっ!」
携帯電話をパカっと開いた後、何やらびっくりしたような顔でフリーズしている。亜美ちゃんが心配そうに声をかけても、お決まりのセリフがかえってくる。
「どうしたんだ?誰かからメールでも来ているのか?」
「あ、うん。……そんな感じ」
正直、レイは仲間の中では機械音痴のトップを爆走している。基本的には携帯電話は通話しかできない。メールを送ってもほとんど電話で連絡が来るし、メールでも「了解」くらいなもんだ。
「……え?は?……何よ…」
1人でぶつぶつ言いながら両手で携帯電話の画面を睨みつけている。
「どうしたの?携帯の調子でも悪いの?」
「あ、いや、その、別に……」
もう変身できなくなってから、みんな普通の携帯電話に変えた。レイは高スペックの結構いいヤツを持っている。でもそれは、実は美奈子ちゃんとお揃いらしい。曰く、携帯電話のことがよくわからないから買う時に付いて来てもらって、お勧めだというからこれにした、ということだけれど。アイドル連れて携帯ショップ?亜美ちゃん連れて行けばいいのに?って突っ込みどころ満載。
「どうしたの、レイちゃん?」
亜美ちゃんは眉をハの字にして、明らかに困っていますという表情を見ていて、居たたまれなくなったみたい。
「あ…あのさ、これ。あの、どうやって見たらいいの?」
こっちに来たレイは、亜美ちゃんの隣に腰を下ろした。
「あぁ、うん。教えてあげる」
初歩的すぎる。まことは雑誌とレイとの視線の往復をしながら、心の中で笑った。

「えっと、まずメールに添付されているんだよね?」

亜美ちゃんの優しい携帯電話の使い方講座

その1、メールを開く。

「うん」
「じゃぁ、それを開いたら、クリップのマークがあるでしょ?」
「うん」
「それを選んで」
「え?どうやって?」
え?それがわからないの?聞き耳を立てていたまことは無言のままレイの顔を覗きこんだ。

その2、ファイルを選択する。

「下のボタンを押して、色が変わるから」
「えっと……これでいいの?」
レイは亜美ちゃんに確認するように、画面を見せているみたいだ。
「うん。そう」
「で?」
「決定のボタン、一番大きな真ん中のボタンを押して」
「うん」

その3、選択したファイルを開く。

「そうしたら、開く………なっ…」
「な、何よこれっ!!」




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Date:2014/04/29
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