【緋彩の瞳】 揺れる炎

緋彩の瞳

火野レイのお題

揺れる炎

「ねぇ、みちる」
風呂上りの水気を帯びたウェーブの髪の間を泳ぐレイの指。
ゆるいカーブのたびにそって踊る指。
「何?」
二人は互いの足を挟み合い向かいあっているというのに、視線を絡めることはなかった。
「たとえば私が敵の手に落ちたとしたら」
声は単調で、ただ書いてある台詞を読むように。だからその唐突な例え話をとがめたりしない。
「したら?」



「殺してね。その手で。思い切り。」



「あら、無茶なお願いね。あなたの方が強いのに」
玩ぶ髪に唇を寄せる彼女の本気の声。みちるは喉の奥で小さく笑った。
「私は敵に踊らされた振りをして、みちるだけを攻撃して、そしてみちるに殺されるの。殺して欲しいと思えるのはみちるだけだもの」
「そんな気力があるのなら、おちおち捕まる前に敵を倒してくださらない?」
全身の力を抜いて寄りかかるレイの細いからだ。この細い腕から放たれる炎に逆らえるほどの力を授かっていない。

「倒したら、私はみちるに殺されないじゃない」
「殺して欲しいの?」
「うん、すごく」

耳のあたりに摺り寄せる鼻先。やっと視線を交わした半神をもう瞳を逸らすことが出来ないように、両の手でみちるはその頬を撫でた。
「どうして?」
「そうしたら、みちるの人生の全てが私のものになる」
偽りはないと語る瞳。紅の炎の宿る瞳。吸い寄せられたら先にからだがその炎に焼き尽くされてしまうだろう。
「あなたを殺しても、私は死んではならないのね?」
「そうよ。みちるは生きるの。私を殺して。そして、殺した私を想いながら」
愛を歌う言葉なんて信じない。
からだの全てでそれを証明するために、殴り殺されたい。
強く願う彼女のためならば、この瞳が潰れるくらい、殴って殴って息の根を止めることが出来る。今はそんな気がした。
「わかったわ。約束する」
「ちゃんと私を見て、殺してね」
「確実にね」

冷えた唇を重ねる。少し乾いた彼女の唇を噛み千切ってしまいたい衝動に駆られながら、みちるは性急に愛撫するレイの想いを胸に刻んだ。





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Date:2014/04/20
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