【緋彩の瞳】 ツンデレ While you were sleeping ①

緋彩の瞳

火野レイのお題

ツンデレ While you were sleeping ①

「レイちゃん、いる~?」
襖の向こうから聞こえてきたのはルナの声。うさぎの気配がないということは、つまりは1人で遊びにきたらしい。
「ルナ。どうしたの?」
猫が通れるだけ開けると、予想通りの黒い小さな塊の四足。
「あ、いたいた。うさぎちゃんは衛さんと遊びに行っちゃったから。たまにはゆっくりのんびりできるでしょ?」
保護者もたまには息抜きが必要よ、なんて。うさぎという問題児は今日衛さんが面倒を見ているから、束の間の休息らしい。
「そう。それでうちに?」
春休みに入って少し時間に余裕はできても、学校がある日常と基本的には同じ時間に起きて生活をしているレイは、こんな午後のひと時はゆっくりと本を読む時間にあてている。
「お邪魔だった?」
「ううん。でも、アルテミスも来ているわよ」
「アル?」
寒さのせいでしまうタイミングを逃した炬燵の中から、ほかほかに温かくなった白猫が眠たそうに顔を出してきた。
「やぁ、…ルナ」
「あんた、1人で来てるの?」
「悪いか?」
「悪くはないけれど、レイちゃんと一緒に炬燵に?中でパンツ覗いてないでしょうね?」
「……すっ、するかよ!」
熱さだけが理由ではない赤い顔で、肉球を一生懸命振るアルテミス。残念ながら、レイは今日デニムだから覗くのは無理。
「美奈、はるかさんと遊びに行ったのよ。何かゲームのイベントだかよくわからないけれど」
冷えた毛並みを撫でて膝の上に乗せると、ルナは猫らしくレイの顎に小さな耳をすりよせてくる。
「ふーん。みちるさんもはるかさんたちと?」
「そんなまさか。仕事じゃないの?」
天気も穏やかだし、気持のいい晴れ晴れとした空。だけど、気温が春に追いついていない。桜の開花も今年は例年よりも少し遅いだろうし。
「じゃぁ、レイちゃんは1人でのんびりしていたのね?」
「そう言うわけよ。アルテミスが来るまではね」
「……悪かったな~」
伸びをしたアルテミスは、まだまだ眠り足りないのかあくびを一つして、レイの座る腰の近くで丸くなって目を閉じてしまった。
さすがに炬燵の中は熱過ぎたみたい。



こういう何もない日は、レイちゃんの部屋でぼんやりするのが一番いい。
本気で飼い主を変えてもらいたいくらい。
だけど、レイちゃんだとルナはいなくても十分やっていけるから、たんなる消費だけするペットになってしまう。それに、あのうさぎちゃんを野放しにするということは、地球を滅亡させるということ。
さすがにそれはできない。
「ふふふ、レ~ィちゃ~ん」
レイちゃん以外に誰もいないなら(アルテミスは無視)、やることは一つしかない。

思いきりレイちゃんに甘える。

ゴロゴロとのどを鳴らして、撫でて欲しいとアピール。レイちゃんは頭を撫でていた手で喉元をよしよしと撫でて、ゆっくりと優しく可愛がってくれる。こういうことは、レイちゃんが1人の時だけしかしてくれないって、ルナは知っている。みんながいるときにレイちゃんに甘えて見ても、頭をポンポンしてくれるけれど、べったりと可愛がってくれない。たぶん、うさぎちゃんとか他の人の目を気にしているんだと思う。
いわゆる、“ツンデレ”って言うもの……かしら?
「ルナ、気持よさそう」
「……にゃ~」
うっかり鳴いてしまった。ゴロゴロと鳴りっぱなしだからどっちも同じ。
「うさぎの相手ばかり大変よね。可愛そうに」
「僕だって大変だよ」
両手で全身撫でてもらって、ついでに日頃の苦労もねぎらってもらっていると、目を閉じて寝ていたのに聞き耳を立てていたアルがすかさず突っ込んでくる。
「ま、……どっちも苦労するわよね」
レイちゃんの両手はルナのものだったのに、片方をアルに取られてしまった。アルは喉を鳴らさないものの、長い尻尾をこれでもかと揺らしまくって、嬉しさを表現している。素直じゃない。
「1週間、主を変えてもいいのならレイちゃんがいいわ」
「僕も」
両手で白と黒を撫でながら、レイちゃんはクスクス笑う。ルナはもっと撫でて欲しいとぐっと首を上にあげた。
「ルナたちがいたら、布団の中も暖かそうね」
そんな事を言うレイちゃんは、ルナを抱きしめてごろんと寝転がった。少し距離が離れたアルテミスは、慌てて起きると修正を図るように、またぴたりとレイちゃんに寄り添ってくる。変態め、
何をしれっと……。まぁ、レイちゃんの前だから喧嘩は売らないけれど。
「レイちゃんはたまにじゃないと、こうやってくれないものね」
「そう?」
うさぎちゃんが持っていない落ち着いた穏やかな微笑み。ルナは上下するレイちゃんの胸の上であくびを控え目にして、自然と瞼を落とした。
「気持いい時間よね。なんだか、本を読むのも面倒になっちゃった」
言って、レイちゃんの撫でる手もゆっくりとスピードを落とす。

のんびりと穏やかな春の午後
2匹の猫に囲まれて、夢に落ちた



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Date:2014/04/20
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