【緋彩の瞳】 ツンデレ While you were sleeping END

緋彩の瞳

火野レイのお題

ツンデレ While you were sleeping END

あっというまにチョコレートパフェを完食した美奈子は、レイちゃんと3時に会う約束をオーバーしていることに気が付いて、優雅にコーヒーを飲んでいるみちるさんに向けて手をあげて質問をした。
「みちるさん、何か隠してない?いきなりパフェおごってくれるなんてさ」
「隠す?さぁ、どうかしら?もし何か隠しているのなら、それはあなたにとってもプラスになることよ。現にいま、その対価としてパフェを食べているでしょ?」
「……うわ、何?私、まんまとパフェにつられているわけ?」
食べてから言う美奈子も悪いけれど、にっこり微笑んで急に“パフェおごってあげる”なんて言われたら、レイちゃんと会う時間が遅くなっちゃってもいいかな、ってなるものなんだから。
単純な脳みそを簡単に見抜かれているっていうわけね。
「美奈子、おまえも学習能力ないな」
はるかさんは知っているのかいないのか、ただみちるさんがいるから付き合っているだけみたいだけど。
「ふんだっ!じゃ、レイちゃんはどこかに行っていて神社にいないの?」
「ノーコメント」
「ふーん。ディモスがずっと私を監視しているのに関係しているでしょ?」
「あら。名ばかりの管理職ではなさそうね」
みちるさん、余裕の笑みのわりにさりげなくひどいことをサラッと言った。はるかさんはそれを“うまいな~”なんて言ってるし。
「……ふん。どーせどーせ、また私に隠して何かしているんでしょう?」
「しないわよ。ディモスは全員が幸せに一日を終えるために美奈子を見守っているの」
「何それ?なんだかちょっと馬鹿にされてる気がしてならない」
腕を組んで唸ってみても、思いつくものが全くない。レイちゃんは今日、はるかさんと遊びに行くのに反対などしなかった。もちろん誘ったけれど1秒も悩む隙もなく断られたし、お互いに別の人間と遊ぶことはよくあること。どちらかというとレイちゃんの方が自分勝手に行動しているんだから、今日に限ってはるかさんと遊びに行くことを嫌がっているなんてことはあり得ない。
「レイ、今、お昼寝中なんですって。ぐっすり眠っているから帰ってくるなって言われたのよ」
みちるさんはコーヒーを飲みほして、ようやく理由を教えてくれた。なんだか面倒くさそうに。
「はぁ?何、それだけのために足止め食らってるの?」
「そうよ。ちなみに、私は神社でフォボスに足止めされたの。美奈子のことも止めてくれって言われてね」
「……珍しいこともあるな。あいつらから声かけてくるなんてさ」
美奈子が言おうとしたセリフを先にはるかさんに取られた。確かに珍しい。でも、別に寝ていたからってそんな必死になって止めることないのに。
「昼寝のためだけ?…事情聴取しようかな」
窓の向こうの木の陰にいるディモスは、美奈子の視線を気まずそうにさっと外した。
何、あんな態度取るなんて珍しい。
「いいじゃない、もう。パフェ食べたんだから」
「みちるさん、レイちゃんの寝顔を見ずに引き返したの?」
「えぇ。別にレイの寝顔なんて珍しくとも何ともないわ」
「まーまー、そうでしょうけれど。……ま、いいか。パフェ食べたし」
寝ていたのかどうかなんて、本人に確認すればいいこと。今、不意を衝いて飛び出してダッシュして神社に行こうものなら、たぶんディモスが全力で取り押さえてきそうだし。

なんとなく、そんなオーラを感じた。



「……ん?」
ぼんやりとする頭。寝ていたんだとわかるまでにたぶん数秒はかかった。薄暗い部屋、いつもと違うような感じがするのは、どうやらベッドではなかったからだ。
「あぁ……そっか、ルナたちがいたんだ」
ゆっくり起きて伸びをして、薄闇を見回しても猫の気配はない。たぶん帰ったのだろう。きっとこの闇だと夕食が近いはずだから。
「はぁ~~。久しぶりに昼寝したかも」
かみ殺したあくびを一つ、ゆっくりと立ち上がる。ルナを抱いていたせいか、少し腰が痛かった。
立ち上がり電気をつけて時計を確認する。6時を回っていた。美奈たちが来ると言っていた時間を過ぎている。
「………あ、いる」
それでも、人の気配を感じた。台所の方。やっぱり来ていて、どうやら寝かせたままにしてくれていたようだ。アルテミスがここに来ていたと、ばれていなければいいのだけれど。
適当に髪をまとめて台所に向かうと、いい匂いと見慣れた顔触れがいた。
「あ、レイちゃん。おはよう」
「………おはよ」
「寝てたでしょ?」
「えぇ」
「フォボスとディモスがさ~、絶対部屋を覗くなって言うから」
「ふーん」
「よだれたらして無様な姿だっていうから、一応気を使ったのよ?」
「何よ、それ」
今夜はシチューらしい。みちるは何も言わずに淡々と野菜を切っているし、はるかさんも楽しそうにシチューを混ぜている。
「顔、洗ってくる」
「もうすぐ出来るわよ」
「はいはい」
みちるに軽く返事をして、匂いにお腹を空かせながらも一度台所を出た。
お腹を空かせているのは、あっちも同じだと今気がついた。

「おいで」
サンダルを履いて庭に出ると、高い空から2人は一直線に降りてくる。
「アルテミス、美奈と鉢合わせなかったみたいね。あんたたち、どうやって美奈を止めたの?」
掌の中の餌をつつきながら、フォボスもディモスも何かわざとらしく返事をしない。
「……まぁ、いいけれど。あのみちるの態度、あれは全部知ってるっていう感じだし」
みちるを呼びとめて美奈を足止めさせたんだろう。
するな、なんて言えたものじゃないからそれでいいのだけれど。
「みちるに貸しを作るなんて、あんたたち勇気あるわよね」
そっちの方が心配だ。フォボスとディモスが何か言いたげに見つめてくる。
「知らないからね、私は」
腕に乗ってくる2人は、珍しくレイの肩に何度も頭をすりよせてきた。まさか、すでにとんでもないことをお願いされていて、助けを求められているのかとでも思ったけれど、何か甘えてきているようにも思うし。
「何?もぅ、何よ……ルナとアルテミスみたい」
嫌な気持ちにはならなかった。
ただ、珍しいことでどうすればいいのかわからなかった。
ルナにしてあげたように、2人を抱きしめて嘴にキスを送ると、それで満足したのかそっと離れていく。
「……何なの?」
眠っている間に何かあったのだろうか。




「美奈」
「……ん~?」
身体中に舞ったしつこいくらいのキス。汗ばんだ背中を向けているのに構わず抱きしめてくる美奈は、さっきからずっとレイの胸で遊んでいる。
「みちるに足止めさせられていたの?」
「あぁ…うん、そんな感じかな。みちるさんもフォボスに止められたみたいだけど」
「ふーん」
昼寝のせいなのか、セックスの後でもそれほど眠気は襲ってこない。そのせいかはわからないけれど、今日の美奈もちょっとしつこい。
「そんなに昼寝したかったの?」
「いや、そうじゃないけれど」
「珍しいもんね、レイちゃんが熟睡するなんてさ」
猫がいたから気持よくて、なんて言えない。美奈と寝る時もわりとよく眠れている方だけれど、なんていうか、まぁこっちの場合は疲れているからっていうのもあるし。
「さっき、餌あげたら妙にフォボスとディモスが甘えて来たのよ」
「へ~」
「何かしら、あれ」
「みちるさんが出した交換条件じゃないの?」
「みちるの?」
首筋に柔らかい感触。レイは身をよじりながら次の言葉を求めた。息が乱れてくる。
「よくわからないけれど、大人しく寝かせておく代わりに、レイちゃんを驚かせるようなことをしなさい、とかなんとか」
耳元で言いながら、またキスを降らせてくる。胸をなぞる手を止めたかったけれど、力が入らなかった。色々聞きたいのに、美奈の愛撫が思考を冷静にさせない。
「…み……なに、…それ」
「いいじゃない。レイちゃんだって、嫌じゃなかったでしょ?」
「……あの……馬鹿…」
「こんな時に他の人のこと考えるんじゃないわよ」
もう無理って言ったのに。ふさがれた唇は文句を言おうとしても、流れ込む愛にそれを阻まれてしまう。だんだん、何を考えていたのかわからなくなってくる。
美奈の背中にしがみついて、襲ってきた愛の渦にしばらく浅い呼吸を繰り返していると、頬に唇を寄せた美奈が耳元でくすくす笑った。
「……何?」
「レイちゃんって、ツンデレだよね」
「……何それ?」
「2人でいるときは素直なのに、みんなといるときは絶対甘えてこない。むしろ冷たいし」
「当たり前でしょ?」
「あはは…、うん、レイちゃんらしい」
「らしいって何よ……」
美奈の身体を抱いていた腕の力もだんだん無くなってきて、だらりと下がった。美奈はそれでも身体から下りようとしない。それにまだ体温を感じていたい。
「フォボスとディモスだって、たまにはレイちゃんに甘えたい時もあるのよ。みちるさんがけしかけるくらいしないと、でしょ?」
「………あぁ、さっきの続き」
フォボスとディモスのあの妙な甘え。そういう経緯があるのなら、なんとなくわかる気がした。みちるの大きなお世話はあの2人を困らせることがあるから。それでもまぁ、直接迷惑だと言われたことがないから、みちるにも止めろとは言わないし、怖くて言えないし。
「嫌じゃなかったんでしょ?」
「嫌ではなかったけれど、あの子たちが意味もなくそう言うことはしないから」
「愛しているという表現なんて、それ以上に意味なんてないじゃん」
肘で自分の体を支えていた美奈は、すべてをレイに預けてきた。さらりとカーテンのように下りた亜麻色の髪がレイの胸を覆う。
「……つまりみちるに理由を聞くなって言いたいの?」
「うん。野暮なことじゃない。可哀想よ2人が」
正直なところ、聞いても聞かなくてもいいけれど、そもそも2人が美奈を足止めさせたのは、美奈自身の迷惑な嫉妬心にレイが困るだろうと思ったからに違いないわけで。
「………可哀想って何よ?」
「愛されてるくせに」
「知ってるわよ」
あの2人とは常に命を共有している。目に見えるものでも、言葉で表現することでもないけれど、この世界にフォボスとディモスとレイの関係をあえて表現するのなら“愛”くらいしかないらしい。でもそれは、レイがそう思っているのではなく、みんながそう言っているだけ。
「私に」

……………

「照れちゃって、可愛い。ちゃんと最後まで話を聞かないから」
楽しそうにクスクス笑う美奈の声。叩いてやりたいけれど、すっかり身体の力を削がれてしまって何もできない。
「………知ってるわよ」
今さら取り繕って何になるのかと思いながらも、訂正することも面倒だと思えてくる。
「第3ラウンド……誘ってる?」
「ない」
「今のでハートに火がつきました」
「水、飲みなさい」
「嫌よ。レイちゃんが誘ったんだから」
「誘ってない」
「無理、我慢できません」
「……無理はこっちのセリフでしょ」
逃げたいって思っているのに、別にいいかなっていう気持ちもある。それに美奈が重たくて身体が動かせない。
「いいじゃん。愛してるって知ってるんでしょ?」
「……美…」
ふさがれた唇が、何を言いたかったのか。
熱いのは身体なのか心なのか、それは美奈のものなのか、自分のものなのか。
よくわからないけれど、夜も熟睡できるのは間違いなさそうだ。
昼寝の方がよかったって、ぼんやり思った。




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Date:2014/04/20
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