【緋彩の瞳】 好き嫌い

緋彩の瞳

火野レイのお題

好き嫌い

この指先が求めているなんて嫌。
触れたがっているのは私の感情ではなく、この手であって。
ぬくもりを感じたいと願っているのは、冷えたこの手なのよってとにかく言い聞かせる。
誰に?
誰のために?
どうして?


「さ、行きますか」
とても自然に差し出すその手を、
「何よ、それ」
「ん?」
当たり前のようにただ、握りしめるだけでいいのに。

「だから・いったい・何なのよ・その手」
「やだぁ、説明しなきゃならないわけ?」
照れることすらしないで、冷えた私の手をつかむように引っ張る。
「ちょっと、美奈?!」
「もぅ、照れて屋さんなんだから」
「ち、違うわよ!」

本当は
美奈に触れたいと思う気持ちと、よくわからない意地に挟まれているだけ。
自分からこの手を自然に差し出せない苛立ちと、闘っているだけ。

美奈のようになれたらいいのに。
美奈のようになりたいと憧れる。

差し出される手を握ればいい。
その安心感と
差し出されなければ触れることができない不安感が、喧嘩をする。

「レイちゃん、冷たいよ。ちゃんと体にいいもの食べてる?」
「あんたの体がおこちゃまなんでしょ?冷たいなら放せばいいのに」

美奈の指に絡まる自分の指は、もっともっと彼女を求める。
手のひらにできるわずかな空白すら埋めたがる。

「放すものですか!好きな人と手をつないでるんだよ?」
「な、何言ってるのっ…」

美奈の温かさが、胸のあたりに心地よく伝わる。
そして言葉に敏感に反応する。

当たり前のように好きという感情を言葉にできることが、信じられない。
いや、信じているからこそ、自分がその勇気を持てないことに苛立ちを覚える。
素直にうなずけばいいのに。
うれしいと言えないなら、せめて態度で示せばいいのに。

それすらできない、こんな自分のどこに好きにさせるものがあるのかしらと、
疑いすら覚えてくる。
そしてまた、それが自分で自分に攻撃しているんだと思い知らされる。

「レイちゃんって、本当意地っ張りだよね。それがまた可愛いんだけど」
「悪かったわね」

繋いでもらった手を離すまいとしてしまう。
今はまだ、与えてもらうものに甘えている。

「本当、意地っ張りだよ」

『知ってるわよ』
ただ、それだけでも言えたらいいのに。




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Date:2014/04/20
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