【緋彩の瞳】 デートはいつもの場所で

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

デートはいつもの場所で


「え?あそこ?」
「そうそう。秘密の場所」
「花以外何にもないじゃない。そんなところでデートするの?」
「そりゃ、あんなことやこーんなこともできるからね!」
「…あのね、外でデートするのよ?」
「んもー!レイちゃんたら何想像しているのよ!エッチー」
思い切りレイの背中を叩いた美奈子は、一人のんきに笑っている。
「いったー!美奈、あんまり変なことがんがえないで、普通にデートしたほうがいいわ」
「だって、ネオンとかカップルだらけの場所とか、つまらないでしょ?少しくらい思考を変えてみてもいいじゃない」
「本当に何もないところで、デートするよりマシ」
「いいからいいから!取っておきの物をあ・げ・る!」
チュッと音つきのキスをレイの頬に送った美奈子は、瞬間に固まるレイを置いて学校への十字路を曲がった。
「そんじゃーね!遅れちゃダメよ!」
「いっ・・いつも遅れるのは、美奈でしょ?!」
キスを送られた頬に手を当てながら、熱くなってゆく体温を隠して叫んだ。
「やだー!赤くなっちゃって!」
「さっさと行きなさい!」
くるりと向きを変えた美奈子は、鞄を投げつけそうな勢いのレイに、投げキッスを送りながら走って行く。
「まったく」
本当に周りがバラで囲まれて入るけれど、それ以外何もないような場所で、いったい美奈子は何をするつもりだろう。考えただけで、身体の熱が炎のように上がってゆく。
「急がなきゃ」
鞄に入れられたプレゼントの箱が、小さく音を鳴らした。いつもいつも、誕生日でもないのに、気に入ったものがあればほいほい買って押し付けて。だからお小遣いがないと喚かなきゃいけない、気の毒な人だわ。うれしいなんて素直に言えない代わりに、だからいつもデートに誘われたら、絶対に断れない。


「美奈!」
「ごめんなちゃい・・・」
「13分の遅刻よ」
「ふぇーん。宿題忘れて、廊下にいましたぁ」
何度も頭を下げる美奈子の頭を軽くこつんと叩いたレイは、暗闇に目が慣れてきてベンチに腰を下ろした。
「それで、こんな何もないところなんだから、凄い演出でもしてくれるんでしょ?暗いし寒いし、バラだって咲いてないし」
「レイちゃん、素直じゃないなぁ」
「遅刻してきた人が言うセリフ?」
「許してぇ」
「ん…ちょっ」
不意打ちのキス。優しいほどにとろけるキスのせいで文句を塞がれた唇は、それでもいいかもしれないと、仕方なく許してしまう。少しずるいと思いながらも。
「…これが演出?」
「違うわ」
「じゃぁ、何よ?」
艶めく唇を拭いながら、押し倒されそうなほどに寄り添ってくる美奈子を押し返す。
「欲しい?」
「もったいつけないで」
「空よ。空」
「ん?」
見上げてみてと指を辿った夜空には、ネオンのない高台にある秘密の花園を照らす月と、冬の星たちが踊っていた。
「綺麗ね」
「もうちょっとさ、感動的に言ってくれない?」
「なんで?」
「ほら、星空で二人きりっていったら、ロマンチックだと思わない?」
「そのロマンチックに泥を塗った人がいるでしょ?寒い中待ったもの」
「謝ってるじゃない」
冷たい頬に降るキス。
「あのねぇ」
言えなかった文句の続きも、また唇で塞がれた。思い切り押し倒される。
「馬鹿」
「誰も見ていないし、ね?」
「冗談じゃないわよ」
「キスだけだから」
「それ以上何をするつもりなの?」
「ひ・み・つ」
「んっ」
身体の力が奪われて、美奈子の熱が唇を通して伝わってくる。思考回路さえ奪われて、無意識に絡み合う愛情。これだけはどうしても敵わない。レイは目を閉じて、しばらく美奈子の戯れに付き合うことにした。
「ね、レイちゃん」
「ん?」
暗闇の中に輝く星に負けない美奈子の瞳。見つめて、そっと金色の髪に指を通した。
「大好き」
「知っているわ」
コートのごわごわした温もりは、邪魔なだけだ。再び重なろうとする唇を、レイは瞳を閉じて待った。

「「…ん?」」
とろけた甘さの中で、まぶたに赤いものが飛び込んできた。なんだろうと、瞳を開ける。美奈子の顔がはっきりと見えた。
「え?」
暗闇であるのにとても鮮明に見える美奈子の顔。ユニークな演出だなんて考えるより、美奈子のとんでもなく驚いた顔に、半分笑いそうになる。
「何?何かあったの?」
意識を半分美奈子に奪われたままのレイは、わけもなくにやりとしたままだ。
「げっ」
「…何?!」
美奈子の呟きと、本気にやばいような表情。束縛が解かれてレイは身体を起こした。
「げっ!!」
明るさの正体は、バイクだった。
「「……」」
ヘルメットを外さなくても、とてもよく見覚えのあるそのバイク。
「…見なかったことにしておくわ」
後ろから、優しい聞き覚えのある声。小さく笑っている背の高い人の腰に腕を回していたその人は、軽やかにバイクから降りた。
「「……」」
どんどん熱が上がってゆくレイの身体。美奈子は慌てて離れると、何事もなかったように服の乱れを整えた。
「な、なにしているんですか?こんなところで」
「それは、こっちのセリフだよ。襲う場所は考えないとな」
バイクを止めて降りたはるかは、見てしまったことを苦笑している。
「美奈…簡単に人が入れる場所じゃないわよね、ここ」
「う、うん。門は開かないし、バイクは通れないはず」
いつも、忍び込みデートを敢行している二人は、絶対に人が来ない安心感で時々逢瀬を繰り返している。
「不法侵入はダメよ、二人とも。ここは海王家の所有地なんだから、一応」
「「げっ」」
「あーぁ。せっかくイブは二人きりで楽しめるはずだったのに」
はるかの言葉に、こっちもだと思うレイ。美奈子を睨み付けた。
「あ、あははは。それじゃ」
恥ずかしさで俯いたままのレイのコートを引っ張って、そそくさとその場から逃げようとする美奈子。
「ところで、知らなかったなー。君たちがそういう関係だったなんて」
「「ぎくっ」」
「はるか、からかうのはやめたら?可哀想よ」
「はいはい」
背中に冷たいものがささっと走る。
「美奈の馬鹿!」
「ごめんちゃい…」
「ラブラブだな」
肘で小さくこつきあっているレイと美奈子に、はるかはくすっと笑う。
「はるかさぁん。誰にも言わないでくださいね」
「おだんごたちは、知らないのか?」
「レイちゃんが絶対にばらすなって言うんだもん」
「美奈!」
頭をコツかれて、その場からそそくさと逃げるように過ぎ去って行く。
「どうしよう、これじゃぁ、もう会わせる顔がないわ」
「本当。みちるさんの家って、なんでもお金出してるのね」
「美奈!」
論点の違いに、レイは頬を引っ張る。
「じょーだんです・・・」
しばらく、戦いでもこそこそとしていた二人。やがて全てがうさぎたちにばれたのは、真夜中に家出して来たうさぎが、レイの部屋に忍び込んで、素っ裸の美奈子と鉢合わせしたときだった。

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Date:2004/11/08
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