【緋彩の瞳】 きづいてよ ②

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世では恋人]

きづいてよ ②

亜美ちゃんの絶句の後、レイが絶叫した。まことは雑誌を閉じてその携帯電話を強引に覗きこんだ。


愛野美奈子が超セクシーな水着姿でピースしてる。さすがアイドル。
だがしかし、画像には“レイへ”って入れられているのを、まことは見逃さなかった。


「な、な、なっ、何よ!何なのよこれ?!」

レイの動揺は凄かった。
真っ赤な顔で怒りの頂点。
ワナワナと拳を震わせている。

「いや、なんか、凄すぎ……。レイ、メールになんて書いてあるの?」
「何もないわよ!このファイルを開けないと携帯電話が故障しちゃうから、とりあえず開いてって……何なのこれ?美奈子ったら、もう少しまともな仕事を選びなさいよね!」
中学生がこんな仕事を受けるとも思えないんだけど。投げキッスなんてして、満面の笑みで?
いやいや、それより、その意味のわからない文面を読んで、画像を開こうとするって。そんなに携帯電話のことわからないなら、お年寄り向けの3つボタンがあるやつにすりゃいいじゃん。
「これってさ、レイのためだけに撮ったんじゃないの?」
「はっ?意味わかんないこと言わないでよ。とにかく、こんなの世の中に出回るなんて間違ってるわ」
少なくとも、愛野美奈子ファンのまことは彼女の水着グラビアなんて見たこともないし、定期的にアップされているHPにもそんなことをするという情報もない。
「別に仕事って決まってないんじゃないの?本人に聞いてみたらいいじゃん」
「そうだよ、レイちゃん」
レイはなんだかんだと言って、その画像をがっつり見ている。喜ぶに喜べないのか、それとも潔癖だから、これは許せる範囲じゃないのか。
「電話してみる」
「はやっ」
レイはリダイアルボタンを押して、電話をかけ始めた。
「リダイアルですぐ愛野美奈子か……」
きっと、着信もリダイアルも愛野美奈子ばっかりなんだろうな。
着信音は当たり前のように愛野美奈子の曲だし。美奈子ちゃんが勝手にレイの携帯電話をいじって設定していることは知ってる。待ち受け画面も愛野美奈子。ぜーんぶ、機械音痴のレイの代わりにアイドル愛野美奈子が“自分仕様”にしてしまったのだ。
「あ、もしもし?ちょっと美奈子、何よあれ?携帯電話にウイルス送りつけるんじゃないわよ」
ウイルスって……
亜美ちゃんと目を合わせて苦笑いしてみる。流石に亜美ちゃんだってこのレイと美奈子ちゃんの意味のわからない両想いのとばっちりも、そろそろ何とかしたいって思っているに違いない。

『ウイルスですって?!失礼な。誰のためにわざわざ水着姿になったと思っているのよ?』
「知らないわよ。少なくとも、喜んでいるのはまことだけよ」
『なんですって?レイのために撮ったと言うのに。人に見せるなんてレイって最低』
スピーカーがオンになってるから、ダダ漏れなんだけど。って、きっと注意しても、まずスピーカーのボタンはどれって言われそうだし、聞いておきたい気もするから、黙っておく。
「誰が美奈子の水着姿を見たいなんて言ったのよ!水着や下着のグラビアはしない主義って言ったのはどこの誰よ?」
『しないわよ。だから、ホテルに籠ってデジカメで自撮りしたのよ。レイに送るものはすべて、仕事じゃないものよ』
「何がしたいのよ、何が!」
携帯電話握りしめて、地団太踏んで。相変わらずレイって大変だよな、色々。
素直になればいいのに。

美奈子ちゃんも似たり寄ったりだけど、愛情表現をレイちゃんに向けている辺りは、まだ可愛げがある方。小学生の男子が好きな女子に意地悪しているようなものと、あんまり差はないんだけどさ。

『毎日毎日画像送ってあげているのに、感想をくれないからでしょ?』
「いらないってば。それに見てないわよ」
『あれだけ画像の見かたを教えたのに、まだわからないの?』
「見たくないから見ないのよ」
愛野美奈子のHPやブログは時々しか更新しないのに、レイには毎日送られてくるって?CC付けてもらいたい。でも、残念ながら画像の見かたは、他人がいないと操作できないレベルらしい。
感想を送るも何も、レイは見たくても見られないでいたんだと思う。かといって、美奈子ちゃんに画像の開き方を改めて聞いたりなんてしたら、見たいと言ってるようなもんだし。
レイがそんな素直な態度に出るわけないよな。
「レイはさっき、食い入るように雑誌見てたじゃん」
まことの突っ込みは亜美ちゃんの心の中のつぶやきと同じだろうと思う。
電話の向こうの相手に聞こえるように、まことは声をはりあげてやった。
「まこと!」
『まこと、何?レイが雑誌を見てたですって?』
「みっ、見てないわよ!」
怒っていた声なのに、急に嬉々とした声に変わったアイドル愛野美奈子の声が、レイの携帯電話から聞こえてくる。
「うん、そうだよ。レイは愛野美奈子が表紙の今日発売の“明けの星”を食い入るように見てた!」
「見てない!」
レイは真っ赤な顔をして、電話をぶちっと切ってしまった。
「あ~、どうして切るんだよ。本当のこと話してたのに!」
「もう十分よ。それに私の用件は済んだもの」
余計なことを言うんじゃない、とか切れられると思ったけれど、レイは何でもありませんという素振りを見せて、携帯電話をデニムのポケットにしまった。

『I love you baby,baby ライト消して~ baby,baby kissをして~』

10秒待たずに着信。
わかりやすい、愛野美奈子からです!って主張する歌。

「レイ、鳴ってるよ」
「出ない」
「ほら、I love youって言われてるよ?」
「はぁ?何言ってるの」
「キスしてとか言われちゃってるよ?」
「はん、ばっかばかしい。ねぇ、亜美ちゃん。この着信音を変えたりするのってどうするの?」
意地の張り合いを、一体いつまで続けるんだろうか。
鳴り続ける携帯電話の、切るボタンをしつこく押すレイの頬に溜まった空気。
そのふくれっ面をしたいのはこっちの方だ。
「レイちゃん、でも、変えたら、美奈子ちゃんが悲しむんじゃないかな?」
「私の携帯電話よ。私の好きにして何が悪いのよ」
「それはそうだけど……ねぇ?」
亜美ちゃんは困った顔をしてまことを見つめてくる。そんな顔されても、変えても変えなくても、レイか美奈子ちゃんのどっちかには怒られるんだよね。
「よし。レイ、交換条件。着信を変えてあげるかわりに、今まで送られてきた画像、私に転送させて」
「……転送?」
「うん、つまり、頂戴ってこと。どうせ、レイは見てないんだろ?愛野美奈子のプライベート写真、見たいんだよね」

素直に見たいのは本当。どうせレイだけに向けられた写真ばっかりに違いない。“好きよ“なんて書いていたりするんだろうか。想像しただけで、ちょっと腹が立つ。
「でも……」
ほら、予想通り。レイは渋り出した。自分は機械音痴で見られないけれど、人に見せるのは癪だし、せっかく愛野美奈子からもらったレイだけのための写真を、まことになんて見せたくはない。

って、顔に書いてある。

「なんだよ、その着信音を変えたいんだろ?いいじゃん、別に。第一美奈子ちゃんは私たちの仲間なんだから、仲間が仲間に送った写真を見て何が悪いんだ?」
「そ、それもそうよ…、ね」
もっともらしいまことの言葉に、レイも言い訳が思い浮かばないらしい。

美奈子からもらったメールは私だけのものよ!って顔に書いてます。
着信音だって、今日まで変えてこなかったってことは、気に入ってるってわけだしさ。


「あの、じゃ、じゃぁ、その、やり方わからないから、まず先に着信を普通のやつにして」
「はいはい、普通のプルルルってやつにしてやるよ」
貸して、と言ってレイの携帯電話を取りあげた。

また、美奈子の歌声が小さなスピーカーから響いてくる。まことはそれに出てやった。
『レイ!』
「美奈子ちゃん、悪い。レイがこの着信音が嫌いっていうから変えるよ。あとでかけ直して」
『…………は?!!!!』

ぷち


プープープー

「ちょっと、何余計なことをっ!」
「だって、うるさいじゃん」

ほーら、レイの顔が怒りながらも悲しそうで不安そうで…
美奈子…って、声に出してないけれど唇が綴ってる。

まことは本当に着信音を変えた。別に画像を見たいからじゃない。これは素直にならないレイへの罰だ。
「はい」
「あ……ありがと」
「ついでに、画像ももらっちゃったから」
「え?あ……でも、その」
「交換条件、だろ?」
「そ…そうね。別に、私は見ないし」
いや、だから、見られないの間違いなんだけど。
レイは自分が言ったことを取り消せない性格だから、視線を外しながら後悔と美奈子への言い訳を考えこんでしまっている。
「楽しませてもらうよ!」
まことは自分の携帯電話を指差して、空メール着信でランプが光っているところを見せて笑った。
ひきつった顔。
写真に撮ってやりたい。


お願いしておきながら落ち込んでいるレイを、亜美ちゃんは少し心配そうにしてみているけれど、まことは何もなかったようにソファーにどかっと腰を下ろした。
亜美ちゃん、放っておいても大丈夫だよ。

ほら、
聞こえるだろ?

ものすごい足音が響いて、こっちに近づいてきているじゃん。





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Date:2014/04/30
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