【緋彩の瞳】 きづいてよ END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世では恋人]

きづいてよ END

「レイ!!!」

一応、美奈子ちゃんはアイドルだけど中学生でもある。
めったに見ない制服姿の愛野美奈子が登場した。
クラウンの秘密基地に乗り込んだかと思えば、絶句して声も出せないレイに一直線で向かって階段を下りてくる。
「ちょっと、どういうことよ?!」
「え?……な、なんでここにいるって、わかったのよ?」
「レイがどこにいるかなんて、わからないわけないでしょ。私を誰だと思っているの?!」
勝ち誇ったように笑っているけれど、レイの携帯電話についているGPSを勝手にオンにして美奈子ちゃんは把握しているんだろう。レイはそういう機能が携帯に付いていることを知らないだけ。愛の力っていうわけじゃないと思う。でも、美奈子ちゃんならどんな手を使ってでも調べそう。
「意味分かんないわよ」
「そんなことより、勝手に着信を変えるだなんて、どういう神経をしているのかしら?」
学生鞄をテーブルに押し付けた美奈子ちゃんは、タジタジのレイをこれでもかと言わんばかりに睨んだ。戦いのときと同じ目つき。
「うるさいからよ」
「何よ、バラードの方がよかったわけ?」
「そうじゃなくて、いたって普通の電子音で十分だから変えてもらっただけよ」
「着信音にでもしないと、レイは私の曲を聴いてくれないでしょ?」
そうかなぁ。
1人のときになったら愛野美奈子の曲もちゃんと聞いているんだろうと思う。言わないだけで。
「別に興味ないって、何度も言ってるでしょ?」
「私のことを好きじゃないとでもいうわけ?」
そんなセリフを愛野美奈子に言われた日には、お赤飯炊いちゃうよな。
レイももったいない。
負けず嫌い同士の意地っ張り同士の、めんどくさくてはた迷惑な両想い。
「アイドルには興味ないのよ。初対面の頃からそう言ってたじゃない」
「レイがそうやってしつこく言うから、わざわざ仕事じゃない写真を撮ってあげてるわ」
「はぁ?いらないわ。あなたの写真を送られる意味がわからないわ」

そりゃ、美奈子ちゃんはレイが好きだからだよ。
亜美ちゃんも同じことを想っているのか、まことと目が合って困った顔しながら笑ってる。

「レイはでも、さっき食い入るように雑誌見てたじゃん」
「み、見てない!」
「いやいや、見ていたよ。生足出してスカート短いって言ってたじゃん」
「は?何の話?まこと、適当なことを言わないでよ」
うわー。
すっとぼけやがって。
「今日発売の雑誌、読むように言っておいたのをちゃんと実行したわけね?」
ニヤニヤして嬉しそうに。くそー、こんな顔して見つめられてみたいものだ。
「まことが“たまたま”持っていたのを“適当にパラパラ”とめくっただけよ」
ぷいっ。
レイはほっぺたを膨らませて高飛車に澄ましている。無駄なあがきっていうんだけどね。
「まぁいいわ。とにかく、その携帯電話を渡しなさい」
「嫌よ」
「使い方を教えてあげたのは、誰だと思っているの?」
「何よ、あなたがこれにしろって言うからでしょ?」
後ろ手に携帯電話を隠して、迫る美奈子ちゃんから逃げるようにジリジリ後退していく。残念ながら、そんなに広くないクラウンの部屋。あっというまに舞台上の端っこまで追い詰められてしまった。



「ほら、渡しなさいよ」
「嫌よ」
「命令が聞けないっていうの?」
「なんで聞かなきゃいけないのよ」
「決まってるじゃない、あなたは私の言うことを聞くように昔から決まってるのよ」
「同意した覚えはないわ」
「前世から決まってるのよ。あの頃のように素直に言うことを聞きなさい」
「知らないわよ。それは今の私と関係ないことでしょ?」
まぁ、確かに美奈子ちゃん以外はまともに前世のことを知らないわけだしね。
「キスするわよ?」
「は?わけわからない。されたからって渡さないし」


レイ、完全に負けだ。


「ふーん」
「……っ…!!!」

まことが見たのは、追い詰められたレイが美奈子ちゃんに完璧にロックオンされて、ものすごく目を見開いて固まっているところだけだ。マジで唇押しあてているんだろうけれど、その肝心なところは見えない。
「ま、まこちゃん、凝視しちゃだめだよ………」
「いや、なんかほら……」
うらやましいと思いながらも、振り回されているレイにちょっとだけの同情と、あとは怖いもの見たさというか、面白さというか。
なんて言うかもう、この手の展開は何度か見ているし、仲間がいてもおかまいなしの美奈子ちゃんのレイへの愛情表現も、そろそろお腹いっぱいだよ。

「さて」
フリーズしているレイの手から携帯電話を奪い取った美奈子は、ヘナヘナとしゃがみ込んだレイに構うことなく、鼻歌なんて歌いながら着信を元に戻してしまった。
「待ち受けの画像も最新のやつに変えておくから」
「……水着のは嫌よ」
「しないわよ。レイ以外の人に見られたくないもの」
悔しそうに唇を拭い、レイは拳を握りしめている。
何と戦っているんだか、何と。
頬を真っ赤にさせながら、その拳を美奈子に向ける勢いのレイ。
「レイ、大丈夫?」
「……別に、平気」
まことはたまらずに様子をうかがった。
喧嘩されたらどっちの味方に付けばいいのかわからない。


「……なんでキスされなきゃいけないわけ?」
「言うことを聞かない罰よ」
美奈子ちゃんも、素直にレイに好きだって言えばいいのに。って心の中で突っ込んだ。
「罰?確かにとんでもないわ。美奈子にこんなことされている自分が情けない」
「こんなこと?全国の愛野美奈子ファンが聞いたら、レイは殺されるわよ?」
「バカバカしい。いい加減にしてよね、なんでこんな目に……」
美奈子ちゃんから携帯電話を取り戻したレイは、心底悔しいと言わんばかりに唇を噛んでいる。2人きりだった場合、美奈子ちゃんはどういう攻め方をするんだろうか。いや、案外レイは2人きりだと素直だったりするんだろうか。…なさそうだけど。
それにしても、本当に悔しい顔だな。
好きだってちゃーんと自分で気がついて素直に受け入れていたら、もっと楽になれるのに。
そういうところもレイらしいんだけど。
「美奈子ちゃん、レイちゃんが嫌がっているんだから、あんまり、その、…許可もなくキスをしたりするのは…どうかな」
悔しそうな顔を見かねたのか、亜美ちゃんは心優しく美奈子ちゃんを諭している。
「亜美ちゃん、いいわよ。この自称アイドルは人の気持ちをわかろうとしない、ただのバカだから」
ここぞとばかりに仕返しのような嫌みをチクリ。美奈子ちゃんが頬に空気入れ始めている。
「私は自称じゃないわよ。ちゃんとテレビに出てるわ」
「そう?ごめんなさい、まったく見ないのよ、テレビ」
「CDだって出してるわよ」
「誰もが買うと思ったら大間違いよ」
「写真集だって出してるわよ」
「男が喜ぶだけでしょ」
レイは鞄に携帯電話を放り投げて、どう考えても帰ろうとしている。
いや、美奈子ちゃんを置いて帰られても困るんだけど。
「2人とも、私はもう帰るわ」
レイはまことと亜美ちゃんに向かって手を振った。美奈子ちゃんを無視だ。
「いや、ちょっと…。レイ、せっかく4人なんだしさ、ケーキ食べにとか…」
「いい。帰る」
亜美ちゃんも止めようと立ち上がるものの、なんら効果もなさそうだ。
「ちょっと、レイ!」
美奈子ちゃんの怒った声もその背中には届いているくせに、振りはらわれて捨てられた。

バタンと閉められた扉。コツコツと靴音が遠ざかっていく。




「……なんか、ムカついてきた」
原因は美奈子ちゃんにある気がしてならない。
「でもさ、ほら、レイって美奈子ちゃんのことを結構好きだと思うよ?真剣に雑誌読んでいたもん。ね?亜美ちゃん」
まことは取り繕うように、元気な声を出して美奈子ちゃんに歩み寄った。シャンプーのいい匂い。って、これはレイと同じシャンプーを使ってるんじゃないかな……聞けないけど。
「うん。レイちゃんは、美奈子ちゃんと知り合ったころから、ずっといつも美奈子ちゃんのことを想っているもの。でも、ほら、レイちゃんは前世とかアイドルの愛野美奈子じゃなくて、1人の友達としてっていうか、人としての美奈子ちゃんを大切にしてるんじゃないかな。だから、そのすれ違いを解消したら、レイちゃんはもっと素直になれると思うんだけど」
まことは亜美ちゃんの言葉に大きくうなずいた。拍手さえしたいところだ。そう、好きって言うのを自覚せず受け入れないレイも悪いけれど、レイが無意識にそういう風にしているのは、美奈子ちゃんがアイドルであり、前世を持っていて、さらに前世でヴィーナスとマーズは何やらいい関係だった、なんてことを言っているせいなんだろうと思う。
「確かに前世は前世よ。でも、前世のマーズは生まれ変わってもずっと傍にいるって。言いだしたのはマーズの方なのよ」
「……それは、今の火野レイと関係ないよ」
きっと、前世は今みたいに意地なんて張らずに凄く仲が良かったんだろうな。今の2人が並んで歩いているのを見ていると、時々フラッシュバックのようにそんな風景を見たことがあるのではないか、と思えることがある。


寄り添って、マーズがいつもヴィーナスの腕に絡みついていて……


「まぁ、確かにレイは前世をちっとも思い出す様子もないものね。きっとずっとこれからも思い出すことはなさそうだわ」
いつもレイが使っている赤い椅子に腰を下ろした美奈子ちゃんは、溜まった空気を一気に吐き出すように深いため息を吐いた。
「美奈子ちゃんはさ、レイが好きなの?それともレイがマーズだから好きなの?」
「どっちも同じ人物じゃない」
「違うんじゃないかな。少なくとも、レイは違うって思いながら現世を生きていると思うよ」
大きくて綺麗な瞳はまことを睨みつけるように見つめて、それから無言で亜美ちゃんを見る。
亜美ちゃんは黙ってうなずくだけだ。
「……別に、どっちでもいいのよ。レイは私の言うことを素直に聞いていればいいの」
自分が素直じゃないくせに、レイのことを責めてもどうしょうもない。
「美奈子ちゃんがレイちゃんの中の“マーズ”に語りかける限り、“レイちゃん”は受け入れられないと思う」
「亜美ちゃんに賛成。あと、こういうことに他人が口を出すのもどうかと思うんだけど、美奈子ちゃんがもっと素直にレイに好きだと言えばいいと思う。レイをいじって怒らせて楽しむのは勝手だけど、こっちにとばっちりが来るのもいい加減にして欲しいんだよね。小学生の男子じゃないんだからさ」
美奈子ちゃんはそこまで言われるなんて思っていなかったのか、大きな瞳を泳がせて亜美ちゃんとまことを何度も見なおしてくる。


「な、何よ!2人とも、私がレイを好きだってなんで知ってるのよ?!」


絶句


「え……いや、ものすごくわかりやすい行動を取っているのに、……気づかれてないって思ってたわけ?」

今までの会話は何?

「ま、まさかレイは?レイに言ってないでしょうね?!」
あたふたしながらも赤くなりつつある頬。
うわ、なんだよアイドル愛野美奈子、やっぱり可愛いじゃん。
「気が付いてないよ。全然、伝わってない。からかわれているってずっと思ってる」
レイが美奈子ちゃんのことを好きだとは言えないけれど。言いたいけれど、本人が自覚していないから、否定されたらそこで終わりだし。変な期待だけさせるわけにもいかないし。
「……そう。な、ならいいんだけど」
「よくないって。美奈子ちゃんはレイを好きだからキスしたりできるんだろうけれど、レイは振り回されているだけなんだしさ。美奈子ちゃんの気持ちがレイに伝わっているのといないのとでは、レイの態度も違ってくるんだから」
はっきりと好きだと言っていれば、きっとレイも自分の気持ちに気づくだろう。そうしたら、もうきっと、うさぎと衛さん以上にいちゃいちゃしまくるような関係になるんじゃないか、とさえ思う。

なんか癪だけどさ。
今のこの状況を続けられる方が、よっぽど迷惑だし。

「何よ、まこと。レイのことをわかっているみたいな言い方ね」
うわー。そこに突っかかるんだ。
特大のため息を吐いて、まことは目で亜美ちゃんに助けを求めた。
勘弁してよ。
「レイちゃん、本当に美奈子ちゃんのことを気にかけてるよ。まこちゃんも愛野美奈子が好きだし、同じような気持ちを持っている人のことは、やっぱりわかるんじゃないかな」
「あ、でも、私は愛野美奈子っていうアイドルの方が好きで、レイとは違うから」
まことは亜美ちゃんの言葉を補うように、強く念を押した。
レイとは全然違うっていうことをアピールしておかないといけない。
「……2人とも、アイドルの恋愛はプライベートなことだから、誰にも言っちゃだめよ。いいわね?」
リーダー口調で命令した美奈子ちゃんは、さっと立ち上がると思い人を追いかけるように階段を上がっていった。


「レイを追いかけるんだろうな」
「きっとね」
「あ~~!素直じゃない。2人とも素直じゃなさすぎる」
「でも、まこちゃんのおかげで、ちょっと進展するんじゃない?」
「明日、手を繋ぎながらクラウンに来たらどうする?」
「どうしようか……?」

ため息交じりに、2人で笑った。
そうなっていたら、思いっきり冷やかしてやろうと思う。

まぁ、あの二人の性格じゃぁ、絶対そんなことにはならないだろうな。


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Date:2014/05/03
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