【緋彩の瞳】 瞳が好きと歌うから ③

緋彩の瞳

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美奈子×レイ小説[実写・単発もの]

瞳が好きと歌うから ③

まことの家には、愛野美奈子のポスターが貼ってある。サインまで入っていた。最近出たらしいCDの初回特典ポスターというもので、美奈子におねだりをして、サインを書き込んでもらったんだとか。そう言えば、そんなことをまことが嬉しそうにクラウンで話をしていたような気もする。
「レイ、美奈子ちゃんの新しいアルバム聞いた?」
「え?あ、いえ…っていうか、この前クラウンでうさぎがCDかけてたじゃない」
「いや、そりゃそうだけどさ、レイはあんまり聞いてなかったじゃん。って、じゃぁ、ちゃんと聞いていないんだ」
「……興味ないんだもの」
「それ、美奈子ちゃんは本当に怒ってないの?がんばってるんだからさ」
「それはまぁ、そうなんだろうけれど……」
美奈子から一応CDはもらったけれど、気が向いたら聞くって言ったくせに、何となく聞きそびれている。1人のときに美奈子の歌声を聞くのが、寂しい気がしてしまう。
「じゃぁ、かけてあげるからさ」
嫌というわけでもないし、言う権利もないし。
「それにほら、このCDってさ、レイの誕生日に発売されたじゃん。美奈子ちゃんって憎い演出するよね」
ニヤニヤ笑いながら、まことはティポットにお湯を注いでいる。レイはドキっとして視線を外した。
「美奈子の都合だけで発売日が決まると思わないんだけど」
本当は、誕生日プレゼントって言われてCDを渡された。流石にポスターなんてなかったし、あっても断っていたと思う。貼るつもりもない。
「ま、そう言うことにしておこう」
軽快なポップスが空気を明るくする。聞きなれた話し声ではなく、丁寧な歌声が観葉植物に囲まれたまことの部屋に響いた。

まことがいてよかった。まことの部屋でよかった。美奈子の歌声は美奈子を思い出させ、会いたいと言う気持ちにさせて、それができないと言うことを認めなければならない。
もっとミーハーな気持ちになれたら、単純に曲を楽しめるのかもしれないし、もっと頻繁に美奈子に会っていたのなら。
でも、そういう仮定のことばかりを考えたって仕方ないのだ。
「なんでそんな落ち込んだ顔してるの?楽しい曲なのに」
「別に、何でも。落ち込んでもないわよ」
「そう?」
CDに入っている曲のすべてを聞いても、レイはやっぱりどんな歌だったのかはちゃんとわかってあげられなかった。歌ではなく言葉に耳を傾け、声を聞こうとしている自分がいる。
大好きだとか、愛しているだとか、そんな言葉が音に乗せられて響くたびに、アイドル愛野美奈子とレイの好きな彼女は別物だと意識しなければならない。
「あ、亜美ちゃんからかな~」
クッキーも紅茶も美味しかったけれど、美奈子の歌声のせいでリラックスした気分にはなれなかった。まことの携帯電話が鳴り、亜美らしいからと部屋の外に出ていく。レイはリピート再生の音をそれに伴って消した。亜美ちゃんに心の中で感謝した。



まことから夕食も一緒にって誘われて、特に夜の予定もなかったので手作り料理を御馳走になった。亜美ちゃんが合流するのかと思ったけれど、電話相手は亜美ちゃんではなかったようだ。めったに見ないテレビを見ながら、くだらないバラエティでもまことが楽しそうに笑うから、レイも何となく流し見ている。時々CMで美奈子がシャンプーの宣伝なんかをするものだから、こんなことまでしているんだと、改めて知らされたりもした。そう言えば、美奈子がくれたシャンプーはこれと同じだ。
食後のデザートにと苺を食べていると、チャイムが鳴った。1人暮らしの女の子の部屋にこんな時間に人が来るって。もしかしたら元基君かもしれない。まことは小さな画面を確認して、正面玄関の鍵を外した。
「誰?」
「あぁ、私の友達だよ」
「あの、クラウンの彼?」
「いや、違う違う」
中学の友達でも来たのだろうか。時計は9時を指している。そろそろレイも帰る時間だし、レイの知らない人ならば場所を譲った方がいい。
「私、そろそろ帰るわ」
「あ、そう?そっか」
「うん。今日はありがとう、誘ってくれて」
「いやいや、こっちこそ。相変わらずミーハーでごめん」
「別にいいんじゃない?」
レイは鞄を手にして、それから携帯電話を何となく覗きこんだ。着信もなにもない。美奈子はまだ仕事なのだろう。
玄関のチャイムが鳴り、来客はまことの部屋の前に到着したようだ。レイは靴を履いて入れ換わるつもりでまことの代わりに鍵を開けてドアを開いた。


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Date:2014/06/03
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