【緋彩の瞳】 君にあげるもの

緋彩の瞳

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君にあげるもの


「ごめんね」
「何が?」
会話のない食事に慣れきっているから、はるかはいきなり謝られて、口に放り込もうとした里芋の煮物を小鉢に戻した。
「27日。パパの後援会のパーティがあるの」
「へぇ。ご苦労さん・・・で?」
穴が2つ開いた里芋をレイは起用にお箸で挟んで、ぱくっと口に入れた。味わってから飲み込む。
「ハルの誕生日でしょう?だから、ごめんね。パーティのあと、たぶん実家に泊まらなきゃいけないの」
「へ、へぇ・・・」
ポーカーフェイスは得意だけれど、はるかの表情はどんなにがんばっても落胆の色は隠すことが出来ないのだ。
「で、でもレイ。君が僕の誕生日を覚えていてくれただけで、十分だよ」
キザに笑って見せようとしても、引き攣った頬の筋肉がぴくぴくしていた。
「うん、実はハルの誕生日って知らなかったけれど。新年にたくさんもらったからって部屋に飾ってあるカレンダーに、なぜか1月27日だけ丸をしていたり・・・」
ドキ。
はるかの身体がほんの少しだけ震えた。
「生徒手帳に、書いた覚えがないのに27日のところに赤いハートマークが書かれていたり」
「へ、へぇ・・レイ、忘れっぽいからな。自分で書いたのを忘れてしまったのか?」
「私の手帳の27日のところに、誕生日のシールとデートのシールなんかが貼ってあったり。私、そういうシールとかを使ったりしないのに・・・なぜかしら?」
困った顔をしながら、レイははるかのお皿の上に乗ってあるエビフライを一匹口の中に放り込んだ。
「な、なぜだろうね。ひっどいいたずらをする奴もいるもんだ」
「そうよねぇ」
「………」
「なぜかしらね」
「………」
「ごめんね、ハル。一緒にいてあげられなくて。手帳に27日の予定書いてあったの、ちゃんと見てくれなかったの?」
予定が書いてあったから、その上からシールを貼ってやった。言いたくても言えないし。
「その代わり、28日は一日空いているのよ」
それも知っている。レイの手帳を見て確認済みだ。だから1泊2日でどこかに行くのもアリだと思っていたのに。
のに・・・のに・・・。
「プレゼントは28日に渡すわ」
「・・・うん、ありがと」
「ハル、きっと気に入るわよ」
そう言って、レイはえびの尻尾だけをはるかのお皿に戻した。
「うん、ありがと・・・」


「それで、はるかは今頃いじけているわけね」
「最近、野放しにしすぎたと思ってる」
パーティには、後援者の一人である父親の代理でみちるも来ていた。
「ストーカーにしては情けないわね。自分の誕生日をアピールするなんて。なんて子供なのかしら」
バカにしているみちるの相方だって、相当な子供じゃないか。レイは相槌を打ちながら今頃いじけているであろう美奈子の姿を想像してみた。
「美奈は?今日何してんの?」
「これよ」
みちるはハンドバッグから携帯電話を取り出すと、画面をレイに見せた。新着メールがいくつもたまっている。
「5分おきにメールする。金持ちの男に靡いたら許さないからって。しつこいわよ」
「・・・ここにくるのはおっさんばっかりって、ちゃんと説明したの?」
メールを返しながらみちるはぼやいている。でもその表情は嬉しそうで。
「しても、美奈子には通じないわ」
「そうね。いいじゃない、愛されて」
「お宅の坊やほどじゃないわ」
お互いなんだかんだといいながらも、結構な幸せものだ。
レイはニヤニヤしながらメールを打つみちるを見て、しばらく相手にならないだろうと席を立つ。
携帯の着信履歴には何もなかったけれど、レイは短縮ボタンを押した。みちるの顔を見ていたら、急にはるかの声が聞きたくなった。
「ハル?」
『何?』
「夕食、食べた?」
『あぁ、ピザ頼んだ。残っちゃったから、明日の朝もピザ』
「ごめんね」
『いいよ、別に』
「拗ねてる?」
『別に』
明らかに拗ねた声だというのに。
「明日の朝、迎えに来てくれるでしょう?」
『あぁ、いいよ』
「それまで、いい子にして待ってて」
『ハニー、僕は子供じゃないよ』
その甘ったるい声。レイは笑って、“そうね”と答えた。


よろこんでくれるかしら。
普段はきっと使わないあなただけど。
とってもシンプルで、年も明けて大分経つからちょっと安めになってしまったけれど。
4月17日にハートのマークの入った、クリーム色のカバーの手帳。
私との未来の予定を、あなたは書き込んでくれるかしら。

HAPPY BIRTHDAY HARU


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Date:2013/11/08
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