【緋彩の瞳】 正しい答えの導き方

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

正しい答えの導き方

「誰を待っているの?」
「レイちゃん」
「そう。お邪魔だったわね」
みちるは別の空いている席を探そうと、あたりを見回してみた。
「いーえ。暇だから、どうぞ」
メロンソーダのアイスも溶けて炭酸も薄くなってきた。
美奈子は待ちくたびれてちょうど話し相手が欲しかったから、みちるに正面に座ってもらう。
「ありがと。レイが遅刻なんて珍しいのね」
優雅に座った彼女は、レイのベストフレンド(美奈子視点)。
「うん。まぁ、約束の時間までまだ5分くらいあるんだけど。私がね、待ち合わせの時間を間違えたの」
「でしょうね」
「・・・なにが、“でしょうね”なの?」
「いいえ、こっちの話」
何を考えているのかわからないみちる(もちろん、美奈子視点)は注文したコーヒーにたっぷりのミルクを入れて、スプーンでかき混ぜる。やっぱブラックっていうイメージじゃない。
「アンニュイねぇ」
「それどういう意味?」
「退屈そうって言う意味かしら?」
「何語?」
「フランス語」
1つ、勉強になった。美奈子は背伸びをしてみせる。午後の授業はたっぷり睡眠をとったけれど、とればとるほど眠たくなるもの。

「ねぇ、みちるさん」
「何かしら?」
「例えばの話なんだけどね」
「仮説は嫌いね」
「暇だから、付き合ってくれてもいいじゃない」
最近、年齢のわりには年寄り臭い(しつこく美奈子視点)みちるは、やれやれと困った表情で話の続きを求めるように顎をくいっとした。GOサインが出たらしい。
「例えば、私が足をくじいちゃったとして」
「ありえない話でもないわねぇ」
「話を終わらせないでよね、まだ早い」
「はいはい」
やる気のないみちるに、美奈子は身を乗り出して話を続ける。
「私の隣にレイちゃんがいたとするわけ」
「妄想ばかりじゃなくて、ちゃっちゃと告白しなさいよ」
「だから、まだ終わってないってばっ!」
「はいはい」
美奈子はズズーっと炭酸の抜けたメロンソーダを飲んだ。念のために言うと、告白って言う言葉にドキッとしたわけじゃない。
「でね、私は平然とした顔で我慢しているけれどね」
「レイは勘がいいからすぐに気がつくわけね」
「先に言うな!」
「はいはい」
本気でお嬢様か疑いたくなる(しつこく言うけれど、美奈子視点)。
「レイちゃんは、私を気遣ってくれるかしら?」
「まぁ、人並みにはね。その前に“馬鹿じゃないの?”って言うセリフがつくでしょうけれど」
「さすが悪友」
「親友と言ってくださる?話、聞かないわよ?」
美奈子はおねぇ様~と猫なで声で媚を売った。こうしておけば、お嬢様は機嫌がいいんだ。(もちろん、美奈子視点)
「で、何?」
「そうそう。それで、私が大したことないわって、痛いけれど無理して笑うのよ」
「芝居臭いわね」
「いいのよ。レイちゃんは私を気遣ってどんなことをしてくれるかしら?そこんとこ、悪友としてレイちゃんの行動パターンを教えてくれない?」
みちるは腕を組んで背もたれに背中を預けた。
「きっとね、あの子のことだから、凄く面倒な顔をしながら黙って背中を貸してくれるわよ」
「おんぶ?」
「さぁ?その辺は実践してみなさい」

ドアが開いてレイが入ってきた。みちるはその気配に気がついたようで、ここで話をやめてくれたらしい。
「なかなかそんな機会がないわよ」
美奈子は仮説の話だからと笑ってみせる。
「何の話?」
レイが珍しい組み合わせを見て眉を顰めた。
「何も。レイ、足元に気をつけなさい」
「ん?」
指摘されて、立ったままのレイは自分の足元を見てみる。
「何?」
「さぁ?」
「……本当、何を考えているかわからないわね」
「ありがと」
どうやら、みちるにとっては褒め言葉だったらしい。美奈子はまた1つ学んだ。
「みちるさんは、どうしてここにいるの?」
「暇つぶしに、美奈子に付き合っていたのよ。まだ、はるかは来ないみたいだもの」
それはどちらかと言うと美奈子のセリフ。でも
あえて突っ込まないことにした。
「そう」
美奈子を押しのけて、その隣に座った。
みちるの前に来るように座ったレイは、コーヒーを頼む。
「ねぇ、レイ」
「何?」
そっけなく尋ねるレイ。美奈子には、みちるの頭から黒い角が見え隠れし始める。生唾を飲み込んだ。
「例えばね」
「仮説的な話は好きじゃないわ」
「つれないわね。聞きなさい」
「はいはい」
「あなたに好きな人がいるとする」
「現実的じゃない話はしないで」
「仮説的な話よ。最後まで聞きなさい。その人もあなたのことが好き。本当はあなたは両想いだってわかっているとする」
レイの横の美奈子は、ブクブクとメロンソーダに泡を作り始めた。いったい何の話をするつもりだろう、この人。
「あなたは馬鹿がつくほど天邪鬼だから、わかっていながら認めるのが照れくさい。だけど相手の子は違う意味で馬鹿だから、レイの気持ちに気付いてくれる気配はないの。困ったでしょう?このモヤモヤ感をあなたはどうする?
A、このまま黙ってチャンスを逃す。
B、仕方がないから好きって告白させる場所を設ける。
C、信頼できる人間に自分の気持ちを間接的に伝えてもらう。
D、自分から告白する」
とりあえず黙って話を聞いていたレイは、その途中に運ばれてきたコーヒーにたっぷりのミルクを注いで、スプーンでかき混ぜた後に3秒ほど考えた。
「オーディエンス」
「ですって、美奈子。美奈子ならどうする?」
「わ、私ですか?!!」
答えをわくわくして待っていた美奈子は、いきなり委ねられて思わずソーダを零すところだった。
「私は……D」
「美奈らしいわね。玉砕って言うのよ、それ。これじゃ当てにならない」
がんばって答えたのに、あっさりと切り捨てられる。前に座っているみちるは、怖い笑みを浮かべている。
「50:50って言うのもあるわよ、レイ」
「海王みちるというコンピューターが選ぶんでしょ?結構よ。仮説的な話ならば、私はAを選ぶわ」
仮説的じゃなくてもAしか選べないくせに。みちるはそれを言葉にしないで目で訴えた。
「Final Answer?」
「Final Answer」
美奈子の頭の中で、あの音が聞こえてくる。ドラムロール?違う、あれはティンパニーという楽器だ。
「………残念―!!」
「みちるさん、テレビの見すぎよ。まったく、誰?この馬鹿お嬢様にそんなテレビ番組見せたの?」
レイは答えが何であろうと、知ったこっちゃないといわんばかりに、みちるのパフォーマンスを見てみぬ振りする。
「レイ、レイ。答えを聞きなさい」
子供のように楽しそうに、一人浮かれているみちる。
「聞かない。だいたい、仮説なんでしょ?答えも何もないじゃない」
馬鹿馬鹿しいといいながら、コーヒーを飲むレイ。みちるは最近、クイズ番組に夢中らしい。
時々いきなり“ヘキサゴン!”とか言ってくるし。
「そう?じゃぁ教えないわ」
「今度、変な仮説話に私を利用したら、みちるさんの子供のときのあだ名、みんなに言いふらすから」
「やめてっ。言わないで」
おや、顔色を変えたみちるがレイに懇願している。
「レイちゃん、教えてよ」
「帰ってからね」
「美奈子、聞いたらあなたの秘密ばらすわよ?」
蛇と蛙とナメクジだ。3人はそれぞれのひみつを抱えている。動くに動けない状況を作る馬鹿3人。


「行くわよ、美奈」
「あ、うん」
これ以上やってられないと、レイは立ち上がり伝票をみちるのコーヒーソーサーの下においた。
「バイバイ」
「レイ、言わないでよ」
「そっちもよ」
それぞれが牽制しあう。さっさと店を後にして、階段を下りていくレイ。
「美奈子、行きなさいよ。姫が帰っちゃうわよ」
みちるは美奈子の手の中にある、メロンソーダの代金の書かれた伝票を奪った。
「おごり?」
「暇つぶしになったから」
「ふーん。じゃぁね」
「がんばって」
早歩きでさっさといってしまったレイを追いかけて、美奈子は勢いよく階段を下りた。ただし、リズムよくではなく、派手に転げ落ちたのだけれど。
「何やってるのよ」
鈍い音が背後から聞こえてきたレイは、振り返って頭を抱える。
「Help!」
「一生やってなさい。馬鹿じゃないの?」
予想通りの反応をしたレイは、先先進んでゆく。美奈子は大げさに重症のフリもむなしいので、さっさと立ち上がってスカートの埃を払った。
「待ってよ」
グキッ。
「あれ・・・」
「早くしなさいよ」
呆れた声が返ってくる。今、左足首があってはならない音を発した。美奈子はとっさに、その旨を伝えようとして、思いとどまった。そうだ、痛くない振りをして歩かなきゃいけない。かなりそれは、美奈子の性格からして難しいけれど。
「ななななんでもない」
「何よ。もう帰るわよ?」
「んー。うん」
現実は仮説の話とは違って、痛い。美奈子はがんばって歩いてみた。演技では平然を装わなきゃいけないというのに。マジで痛い。踏ん張れないから、だんだん斜めに歩いていってる。
それに、本人はもうかなり離れたところにいる。どういうことだ??話が違うじゃないか。もしや勘が鋭いからわかっているって言う仮説も、間違いなのだろうか。頼りにならない悪友である。美奈子は仕方なく、しばらくの道のりをがんばることにした。なんてむなしいのだ。故意ではないが、そろそろ彼女が中腰になって待っていてくれるはずなのに。

はずなのに

「レイちゃーん、待ってよ!」
あまりにむなしくなってきたので、美奈子はたまらずレイを呼び止めてしまった。
「何よ」
振り返っても、戻ってくる気配がない。美奈子はズッキンズッキン痛む足を庇いつつ、レイに近付いた。
「美奈、足引き摺って何してんの?」
「普通、どうしたの?大丈夫?って言うセリフがくるでしょ?」
「あんた、自分の不注意からじゃないの?」
ぐざり。なんでもっとさわやかになれないんだ、この人は。
「肩、貸してくれない?」
結局美奈子は、耐えられずに自分からお願いする羽目になった。
「そうねぇ。…じゃぁ、問題に答えられたら」
「何?」
レイはニヤッと笑うと、腕を組んだ。
「みちるさんの子供時代のあだ名」
「わかるわけないじゃない!」
「考えなさいよ」
「せめて4択にして」
「あつかましいわね。人に物を頼むときの態度?」
痛いところをつく、こちらもなかなか悪い人だ。美奈子の心を奪った罪は、犯罪ものだというのに。
「おねがいすますぅ」
両手を合わせると、レイはまたうーんと考えた。
「A、みちるぴょんB、みっちゃんCみっちょん、Dみっちー」
どれも彼女に合わないものばかりだ。
「50:50」
「あつかましいわね」
「いいじゃない」
「じゃぁ、Aか、C」
いや、どっちも笑ってしまうから。美奈子はうねる。
「早くしなさい」
「うーん。A!」
「Final Answer?」
「Final Answer」
ドキドキドキドキ。
「正解。なんでわかったの?」
あっけなく当たってしまったレイは、面白くなさそうだ。
「本当?!なんとなく、みちるさんが隠していそうだと思ったから、みちるぴょん」
「本人に言わないでよ。ほら」
レイは鞄を美奈子に渡すと、中腰になった。
「何?」
「早く乗りなさいよ。馬鹿じゃないの?」
これがあの、夢にまで見たおんぶだ。美奈子は飛び乗った。
「重たいわね。痩せなさいよ」
「平均体重よりは軽いはず」
「それは、脳みそが足りていないだけよ」
美奈子は、レイの両手が塞がっているのをいいことに、しっかりだきついて、頬を指でツンツンしてみた。
「殺すわよ?」
「いいもん。ねぇ、お礼のチューしていい?」
「して御覧なさい。橋の上からこのまま落としてやるから」
そんなつまらないことを繰り返しながら、それでも満更でもないレイと。浮かれて後で一発殴られた美奈子の距離は、近くて遠い。


「みちるぴょん♪」
街で彼女に会った美奈子は、思わず大声で呼んでみた。
「なっ??!レイ、教えるなって言ったじゃない!!!!」
その後しばらく、みちるとレイは仲が悪かったらしい。ちなみに、みちるぴょんも、みっちゃんも、みっちょんも、みっちーも、どれも全部呼ばれていたらしいから、何を答えても正解だったとか。天邪鬼で素直になれないレイらしい。でも、照れくさかっただけだというのは、本人にしかわからない。


関連記事

*    *    *

Information

Date:2014/06/12
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/173-4a45e08b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)