さよならの理由
もう、戻れないと悟った瞬間、
別れなければいけないと思った。
別れることが彼女を守ることであり、愛しているという想いを正しく形に表しているはずだから。
この世界を守るのではなく、彼女の世界を守らなければならないと言い訳をして。
遠く、あまりに遠すぎる前世の記憶のすべてが蘇った今、もう、海王みちるとして生きてはいけないという絶望感と、巡り会えたウラヌスとはかつて確かに愛し合っていたという奇妙な情と。
身体の中に眠るネプチューンという自分は間違いなくウラヌスを求めていて、けれどそれはその情を宿している海王みちるの身体には馴染んではくれないことを知っている。
もう、戻れない。
言葉にして伝えることは許されるのかしら。
あなたのことを愛しているけれど、傍にいて愛することが出来ないの、と。
わかってもらえるかしら。
あなたの夢を見させてと願うの。
たとえウラヌスと身体を重ねていたとしても。
二人の時間が途切れてゆくのよ。
あなたと私という、この世界に生きている二人はもう、身体を重ねることが出来ないのよ。
何がそうさせたのかだなんて。
考えることすら許されないの。
選んだのはすべて自分なのだから。
ネプチューンも海王みちるも、確かに恋をしていたのよ。
でも、今この想いを宿す海王みちるが愛しているのはあなた、ただ一人。
愛しているの。
だから、あなたのすべてが欲しくなってしまうことが許されないの。
愛しているの。
だから、あなたと別れるの。
ウラヌスと戦うことがあなたを愛し続けていることの証になるの。
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