【緋彩の瞳】 愛のサイクル(R18)

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

愛のサイクル(R18)

“………以上、天気予報でした”

感情のないキャスターが頭を下げると、数秒したら12時を迎える時報が鳴る。
「みちる」
時報から数秒のちに、かちゃりとリビングのドアが開いて、髪を拭きながらシャツ一枚のレイが湯気と一緒に出てくる。
「ちゃんと乾かして、温かいうちにお布団に入るのよ」
「わかってる」
みちるはテレビを消して、パラパラと眺めるように読んでいた音楽雑誌をラックに戻した。
お風呂上がりにいつも飲ませているレモネード入りのホット・ブランデー。レイはそれを儀式のようにキッチンでみちるが渡すのを待っている。
「……はちみつ、変えたでしょ」
立ったまま一口飲んだレイがぽつりとつぶやいた。
「えぇ。知り合いから頂いたの。おいしいからって」
「やっぱり」
「嫌だった?」
「ううん」
レイが寝酒をちびちびしたあと髪を乾かしている間に、みちるが入浴を済ませる。レイが使ったあとのお風呂はすでに温かくなっていて、冷えたタイルに囲まれて凍えるような心配はない。


夜1時。
ゆっくりと湯船に浸かって髪を乾かして出て来ると、レイは空のグラスをテーブルに置きっぱなしのまま、リビングから姿を消していた。ほろ酔いになりながら、髪を乾かしたらウトウトしてきたのだろう。みちるはグラスをささっと洗い、リビングの電気を消して寝室へと向かった。

電気は付けられている。
広い寝室にあるベッドの真ん中に寝転がっているレイは、まぶしい光を遮るように頭まで羽毛布団をかぶっていた。みちるはベッドサイドまでゆっくりと進むと、置かれてあるリモコンで電気を消して、サイドライトを控え目に付けた。
「レイ、そこで寝たら私が入れないでしょ」
お約束のセリフを言うと、もそもそとレイが顔を出してくる。
「……今、何時?」
「1時20分」
ブランデーのせいで少しだけ顔を赤らめているレイは、いつものようにみちるの髪を引っ張る。
合図に応えるように、ベッドを占領しているその身体の上にまたがってくすぐるように頬を撫でてあげる。
「みちるの耳、冷たくて気持ちがいい」
右の耳たぶを指で挟んできた。爪がピアスにカチャリとあたり、くすぐりを覚えて肩をすくめる。
レイは耳たぶを触るのが好き。髪をかきあげてしばらくそれに付き合うようにレイのシャツのボタンを外して、胸に頭を落とした。心臓のリズムを左耳で聞いて、右の耳を愛撫する戯れにため息を吐く。
「明日、雪が降るみたいよ」
せっかくこれから怠惰な土曜日の朝を迎えるというのに、残念ながら東京はひさしぶりの雪の予報。
「みちる、どこかに行きたかったの?」
「特には。レイは?寒いから嫌でしょ?」
目の前にある胸のふくらみを、レイが耳をいじるそれと同じように愛撫する。上下する胸が少しだけ愛撫に合わせて震えた。
「そうね。まぁ、どっちでもいいけれど」
「外に出て風邪を引かれても困るから。一緒にケーキでも作る?」
「……考えておく」
綺麗な形の胸をなぞる手のひら。柔らかいふくらみと、固くなる頂き。レイの呼吸は深い吐息に変わり、みちるの耳を愛撫する指の動きが少しあわただしくなる。空いた右手がみちるの髪をかきあげて“こっちを見て”と訴えてくる。
「レイ」
手を止めると、耳への愛撫も止んだ。サイドライトは眠たさと愛欲に濡れる瞳を映し、みちるの欲を駆り立てる。
「欲しい?」
レイは小さく頷いて、キスをせがむように髪を引っ張ってきた。
ゆっくりとついばむ唇は冷えている。
優しく愛を確かめる唇とは裏腹に、みちるの背や髪を抱きしめるレイの腕は愛に飢えるように強く力が込められている。

唇がしびれるくらい、ゆっくりと時間をかけてするキス。
レイは時々思い出したように耳を触ってくる。
髪をかきあげるように抱きしめたり、背中を抱いてきたり。
シャツの中に腕を侵入させてきた。
「………みちる…」
唇と唇が離れたわずかな隙間に、不満を含む呟きが漏れてくる。
「脱いでほしい?」
キスで濡れた唇から吐く息が首筋に掛かる。みちるは一度起き上がって、レイにまたがったまま着ていたシャツを脱いだ。レイの服も脱がせてあげて、肌と肌が溶けあうように抱きしめて、もう一度溶かすように唇を重ねる。
背中を抱くレイの腕はひんやりと冷たい。みちるの腰を指先で撫でて、愛欲を誘うように緩慢な動きで弱いところをなぞってくる。
唇を放して、ゆっくりと首筋を舌先で愛しながら、優しく胸へと降りてゆく。レイはみちるの足を両足で挟んで、肌と肌の必ずどこかが離れないようにと力を込めてくる。
柔らかな胸にキスを降らし、手のひらで愛撫しながら少しずつ下へ。みちるの頭を撫でる両腕が行き場を失くさぬように、レイの右の腕を取りすべての指と指を強く絡めた。セックスの間、レイが快感に達するまでこの指と指は解かれることはない。

これはルール。

みちるは左腕を動かせないために、愛撫する手段が限られてしまう。でもこうしない限りレイがセックスをさせてくれないのだから、仕方がない。
誰も寄せ付けないような普段の言動は、分厚い鎧。
初めて身体を重ねたとき、セックスに没頭するみちるがレイの脚の間に隠れてしまい、心が置いて行かれるようで辛いと絞り出すような声で訴えてきた。
もちろん、そんなつもりはない。
指とレイの中は溶け合っていて、ずっと愛し続けているのに。
それでも手を握っていてとお願いしてくる。
抱きしめ合いながらのセックスでは中での繋がりが浅く、痛みを与えてしまい、
身体の快感を与えようとすれば、心が温もりを求めて不安になる。

大丈夫
愛しているわ

両手で抱きしめながらでは、レイと溶け合えないことは嫌になるくらいわかっているから。
でもそれも含めて、それでも愛し合う2人なのだから。

「はぁ…あ…っ……ぁっ」
緩急をつけて愛撫するレイの中は、それについてこようときつくみちるの指を溶かすように締め付けてくる。
溶けてしまってもいい。
もう二度とヴァイオリンを持てなくなってもいい。
もっと、溶かすように欲しがって。
レイの指も身体も強くみちるを捕まえて、求めてくる。
「……ぁっ…みち…るっ…ぃや…ぃ…ゃめ…て…」
しなるように弓なりになる身体は、達しようとすると理性がそれを怖いと押しとどめようとしている。

大丈夫
愛しているわ

舌先で蕾を愛でながら、逃げないようにレイの足を腕と自分の足で抑えつけて、高みへ誘う。
「……やっ…ぁっ…あ……っ!!!」
痙攣して指を飲み込んでゆく。5秒ほどの絶頂と、シーツの波間にがくっと落ちる真白な裸体。絡めた指は2人の汗で熱を帯びている。
それでも、離れることはない。
ゆっくりと絶頂を確かめるように、感覚がなくなるほど愛し続けた指2本、愛液の中を泳がせると、時々反応して腰が震える。
「……み…ち…」
「レイ………愛してる」
何度口にしても、同じ言葉が返ってくることなんてないとわかっている。
それでもレイの身体から溢れる愛は、言葉以上の熱を持ち、みちるの身体に溶けるようにまとわりつく。
愛が語られないものだと知っているレイが愛しい。
表現する言葉を選べない、言葉は存在しないものだと。
みちるはそれを承知でも、愛していると口に出し、レイは受け止めて体温をみちるに与える。
彼女の身体の中から引き離された指は愛を絡めて、皮膚はそれを染み込ませてゆく。
「みちる………放さないで」
体制を整えようと繋いだ指の力を抜くと、それを嫌がるようにレイが呟いた。
「放さないわよ、抱き締めたいだけ」
ぐったりした身体でも、指先だけは必死でみちるを繋ぎとめようとする。
熱を持った頬に口づけを落として、汗ばむ髪を鼻の頭でなぞった。観念したように力の抜ける指。彼女の汗ばむ身体に身を委ねて、荒く呼吸して上下する胸に今日の情事の跡を残す。
「みちるって、いつも同じところにつける」
左胸の乳房に寄せた唇。レイがみちるの耳をいじりながらつぶやいた。
「あぁ、そうかもしれないわ。ダメかしら?」
「別に。ただ、ふと思ったから」
「回数を増やしたら、もう少し花を咲かせられるけれど?」
セックスのたびに1つだけ刻む、みちるという人間がレイを愛する証明。週末に訪れる愛の儀式。
レイはそれに答えることはしないで、髪を引っ張ってキスを求めてきた。

いつもと同じように。

呼吸を奪い合うようなキスも、やがてレイの体力が尽きて、眠りへといざなう口づけに代わる。
「風邪を引くわ」
みちるの背を抱いていた手もやがてだらりと落ちて、キスの隙間から寝息さえ漏れてくる。

いつもと同じように。

サイドライトを頼りにレイの服を着せて、ふと時計を見ると3時になっていた。

いつもどおりの時間。

また、いつもどおりの怠惰な土曜日が始まるだろう。


ライトを消してレイを少し追いやるように押してベッドに寝転がると、仔猫のようにしがみついてくる。
いつものようにレイを抱いて目を閉じた。

繰り返される週末の愛のサイクル。
いつも想う。
なんて幸せなのだろう、と。

「おやすみ、レイ」

「………………おやすみ」

レイから遅れて来た返事を聞いて、安らぎのため息を胸に眠りについた。

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Date:2014/06/14
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