【緋彩の瞳】 手の甲にルージュ(R18) ②

緋彩の瞳

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みちる×レイ小説

手の甲にルージュ(R18) ②

「………だぁ~~~~~~~!もう無理っ!」
美奈子が大声をあげてペンを投げ出したのは、夜の10時を回った頃。流石に昼から始まって軽い夕食をはさんだとしても、こんなに長い時間勉強をしたのだから、叫びたくもなるかもしれない。教えている方は、わりと気が楽な分それほど疲れたと言う感情はないけれど、土壇場で追い込みをしている「必死」な3人は、うっすらと目の下にクマを作って少し可哀想。受験は明日に迫っているのだから、あとは寝坊しないことが最重要課題だ。この5日間、みちるもチーム一丸の気持ちでサポートしてきた。午前中は自分のレッスンに時間をあてたが、午後はなるべく早い時間に美奈子たちを呼び、みっちり受験対策を教え込んだ。偵察のためとはいえ、無限学園の受験経験があるからコツはわかっている。なんとしてでも十番高校に行かなければならない、3人の足りない脳みそを補ってあげなければならない。
「よく頑張ったわ。あとはもう、家に帰って早く寝るだけよ」
「終わったら、この参考書は全部燃やしてやる!」
「そう思えるくらいやったのなら、いいことだわ」
日頃から勉強をしてこなかったツケと言うことには違いはないけれど、普通の子たちよりも勉強をする環境ではなかったのだから、大目に見てあげてもいい。とはいっても、何もしなくても成績優秀な亜美とレイがいるわけだから、持って生まれたものも大きいだろうけれど。
「合格していたら、おいしいもの奢ってね」
「あら、教えた私に、あなたたちが何かしてくれてもいいのよ?」
そんな冗談を言いながら、帰る支度をする美奈子たちを送る準備をする。レイまでいそいそ帰る準備をしているから、心の中で「え?」と呟いた。毎日、当たり前のように美奈子たちと一緒に帰っていたのは、変に美奈子たちにからかわれたりするのを避けているのかしら、と思っていた。周りに気を使わせないために、みちるもあえてレイを特別視せずにいたし、受験とは無関係で同じくサポートの立場だったから、個人の自由に任せていた。本を読んだり、思い出したようにまことやうさぎに問題の解き方をアドバイスしていたけれど、それも今日で終わりなのだから、今夜は二人でやっとゆっくりできるかしら、と少し楽しみにしていたのに。
「さて、帰りましょうか。美奈もうさぎも、明日の朝ちゃんと起きなければこのすべてが無駄になるということ、忘れちゃだめよ」
そんな事を言いながら、レイはさっさとテキパキ本を片づけて鞄に詰め込み、準備完了と言ったところ。廊下を一足先に出て行くから、まだ広げた参考書を片づけている4人を置いてレイを追いかけてみる。バスルームに入っていく後姿。何か置き忘れたのか、手を洗いたいのかしら。
「レイ?」
ノックをせずに扉を開けると、レイはわかっていたように振り返る。驚かないその顔を見て、わざとここに入ったのだと知った。
「レイも帰るの?」
「………あの馬鹿を相手にしていたから、疲れているんじゃないかなって」
洗面所に背を預けて、レイは涼しく笑う。5日間毎日会っていたのに、会話らしい会話をあんまりしていなかった。毎日強く想っていたけれど、レイはそれを感じていてくれたのかはわからない。
「帰らないでって、お願いしてもいい?」
「……いいわ」
「じゃぁ、泊まってくれないかしら?」
レイは小さく頷いてうつむいた。
「レイ?」
一歩近づいて顔を覗きこもうとすると腕を強く掴まれて、気がついたらドアに身体を押しつけられている。
あまりに一瞬だったから、何が起こったのかわからなくて。
声も出ない。
だけど、身体に降ってくるものはレイの体温。
締め付けて呼吸さえさせてくれないほど強く抱きしめられている。
「………レ…っ」
名前を呼ぼうとした唇は、すぐに冷たいレイの唇で塞がれる。久しぶりのレイの唇はひんやりとしていて、奪われるようにむさぼるようにみちるの唇を愛撫する。こういう荒々しいことから最も遠いところにいるはずだと思っていたから、とにかくみちるは身体に起こっていることを頭が理解するのにタイムラグが生まれて、どうすればいいのかわからなかった。
嫌だという気持ちはないけれど、何が起こったの?と聞かなければならない。
冷静な自分と唇から流れ込む熱い愛でめまいを起こす。
そのめまいから現実に引き込んだのは、レイの脚がみちるの両脚の間に割って入ってきたからだ。
ちょっと待ってと言うには、唇も身体もレイに拘束されていてうまく動けない。
「……ん……んっ」
繊細な舌を絡みあわせている心地よさと、足の付け根を誘うように動くレイのふとももはセックスを誘うようだと思った。
溺れてしまいそうになる夢から現実に引き戻したのは、ドアの向こうから聞こえてくるうさぎの
能天気な笑い声。
「……ィ…」
わずかな呼吸のタイミングで、なんとかレイの唇から逃げた。本当は逃げたいわけじゃない。呼吸困難になってでもずっとこうしていたけれど、今はタイミングではない。うさぎたちが数センチの厚さのドアの向こうにいるのだ。
「レイ……うさぎたちがいるわ」
「わかってる」
抱きしめられていた腕がみちるの腰を伝い、スカートを手繰り寄せる。背筋がわずかに震えた。くすぐるような指先を、普段レイから誘われないせいかこんな時なのに、どこかで期待している。
「みんなを送り届けてから、ね?」
艶のある髪を撫でて、そっと諭すと耳元で深いため息がこぼれ落ちた。愛が冷めたのではないかと思うと、もっと他の言葉を選べばよかったのかしらと気になってしまう。
「………レイ」
「ごめんなさい」
乱れたみちるの呼吸を整えるように、そっと撫でられた頬は火照って熱い。レイは自分の唇を手の甲で拭っている。みちるが薄くつけていたルージュが移っていた。
「……あの…レイ…」
腕を引っ張られて、また抱きしめられるのかとわずかに期待したけれど、それはみちるをドアから引き剥がすためだけで、レイは何事もないように向こうへと消えて行く。
『さ、帰りましょうか。あんたたち、覚えた公式が頭から出て行かないように、走って帰ってさっさと寝るのよ』
身体はレイが欲しいと正直な反応をしていた。レイの情熱は一気に上昇して一気に下降してしまったのかもしれない。それとも、ただみちるを困らせたかっただけなのだろうか。十分困り果てたのだから、それならばレイの勝ちなのだけれど。
『走って汗かいて、ぐーぐ寝て遅刻したら嫌だな』
『馬鹿美奈』
『何よ何よ!受験ないくせに!』
『はいはい』
『あれ?みちるさんは?』
『すぐ、来るんじゃない?』
レイは本当に、何事もありませんでしたと言うような感じでしゃべっている。
『みちるさん、先に出てる~!』
うさぎが大声を出すから、みちるはそっとバスルームを出て急いで部屋に戻ってコートを掴んだ。
レイと同じように唇をぬぐいながら、玄関から消えていく背中を追いかける。
火照った身体には、玄関の向こう側の冷たい空気が心地よく感じた。

「おーし!みんな競争して帰るわよ!」
マンションを出た美奈子は思い立ったように声を出すと、いきなり走りだした。
「わ!ずるいよ!」
「っていうか、方向違うんじゃない?」
「いえ、まこちゃん。私たちはそもそもバスに乗るのよ」
言いながらもレイ以外の3人は美奈子を追いかけるように走って行った。あっという間に角を曲がって見えなくなってしまう。
「………気を使ったのかしらね」
レイは仲間を追いかけないで足を止めた。もうすぐ4月とはいえまだまだ夜は寒くて、レイの冷たい手を取って、そっと指を絡めてみる。
みんな、レイを呼ぶことはしなかった。
「レイ、風邪を引くわ。早く戻りましょう」
軽く引っ張って抱き寄せようとしても、さらりとかわされた。それでも繋いだ手を放そうとはしない。ちょっと意地悪をされているのかもしれない。

「………あの、レイ?」
いつの間にか繋いだ指も解けていて、レイの中の熱が冷めたのか、淡々と出しっぱなしだったコップを片づけたりお風呂を沸かしたりして、落ち着きを取り戻してしまっている。
「何?」
お風呂に先に入る?なんて聞いてこられて、たまらずみちるは声をかけた。何も部屋に入った瞬間にさっきの続きをしたかったわけではない。ちゃんとお風呂に入ってベッドの中で愛し合いたいと思っていたけれど、レイはその空気を捨て去ったかのようだ。
「一緒に入りましょう」
「いいの?」
「あたりまえでしょう?」
いつも一緒に入っているのだから。そう言いながらレイとバスルームに行くと、ふとさっきのことを思い出した。レイの“いいの?”は同じ条件を作ることになると言いたかったのかもしれない。



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Date:2014/06/14
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