【緋彩の瞳】 淡い色の恋をした ⑤

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

淡い色の恋をした ⑤

好きになってしまったのだから、仕方がない。
自分に何度も言い聞かせた。
人を好きになることに慣れない自分のせいでもあると思う。
だから、最初から何も期待や見返りなんて求めていなければよかったのだ。
美奈が緋彩ちゃんのために何かしたい、という想いを知ったとき、その役に立つのであれば、少しでも美奈の喜ぶ顔を見ていられると思った。ただ、その顔が見たい。それが我儘だった。
たとえ、死神が傍にいても。
それでも、美奈の喜ぶ感情にレイが関わるのであれば、と。
みちるの言った通りだ。そんなことで満足しようとすることは、必ず自分で自分を傷つける結果しかないって。愛も恋もひそやかに耐えるものではないのだから、と。
今の美奈は、ひ弱な友達というものを背負っているのだから、悪気なくレイの気持ちを簡単に踏みにじる可能性があるから、って。

それでも、そういう美奈だとわかっていても嫌いになれなかったのが、罪。
いっそ、嫌いになれるのであれば、どれだけ楽になるのかと思う。


ひどい頭痛と胸の痛みは、薬の影響だろうか。
待ち合わせ場所にいた顔色の悪い緋彩ちゃんを見て、確かに胸が詰まるような思いがする。たぶん、これが人を強制的に好きになるということなのだろう。恋が芽生えて、花開き、どうしようもなく愛しいと言うことをきちんと体験した記憶はないけれど、何とも言えないほど、緋彩ちゃんに触れたいと思えた。
だけど、彼女は1人ではない。死神がべったりと背中にくっついている。
触れたいという感情は確かにあるのに、五感ともうひとつの霊感のすべてが、それを危険だと訴えていた。

身体中が痛い。
それでも、触れなければならない恋の麻薬が、目に見えない感情を支配しようとする。

「緋彩ちゃん」
「レイさん、こんばんは」
「行きましょう。美奈たち、きっとあとから来るわ」
「そうなの?」
「えぇ」
触りたい欲望で、身体に降りかかる危険の信号を押し殺した。
そっと頭を撫でると、びくっと振るわせて驚き、見上げてくる。
頬を赤くして。
その姿は可愛らしいと思えた。
「あの、レイさん?」
「ん?嫌だった?」
「いえ……」
「緋彩ちゃん、可愛いから。美奈がいないときくらい、こうさせて」
「え?あの、はい……。あの、嬉しいです」

“好きな人”が死んでしまう。
“好きな人”を迎えに来ている死神がそこにいる。

好きだと思っている人間が死ぬことを知っていて、何もできない。
それが身体を余計痛めつける。
どれだけレイだけが苦しい思いをしても、彼女は救われることはない。
嘆きをまとう彼女を救えるすべはないのだ。



「レイさん、顔色悪い気がするけれど…?」
「ん?そうかしら?元気よ。緋彩ちゃんとのデートで緊張しているせいかしら?」
「ひぇ?!え?本当?」
「……もちろん」
指と指を絡ませるように、手をつないだ。
初めてのことで、心臓がうるさいくらいに鳴っているのは、間違いなく彼女を好きだから。
「屋台、見てみましょう」
レイは引っ張るように歩く。

死に焦っている。

死ぬとわかっている人間を好きなんて、こっちが死んでしまいたかった。
いっそ殺してしまおうか、なんて考えすらちらついてくる。
感情には温かいものが確かに存在していて、訪れる死の恐怖と愛で身体が押しつぶされそうだ。
吐き気さえ覚えるほどに。
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Date:2014/07/10
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