【緋彩の瞳】 炎   SASYONARA

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

炎   SASYONARA

つまらないことだと、あなたは笑った。人を好きになることに理由はないと。
「悲しい顔、するなよ・・・」
別れとは、思ったほどに痛みがないことを知る。最後のキスもそれは感情のないもので、みちるにとっては気持ちいいものでも悪いものでも、どちらでもなかった。
「はるか。私が好きになった人のこと、知りたいとは思わないの?」
「知っているよ」
そう言って、彼女は涼しく笑う。
「レイだろ?」
「……気づいていたみたいね」
「あぁ。君がレイを見つめる瞳は、昔……僕を見つめていた瞳と同じだから」
「そう」
二人、寄り添って生きてきたこの部屋からあなたは消える。みちるは悲しくなかった。
「僕がここから出て行って僕の匂いがなくなったら、レイを呼ぶんだろ?」
「えぇ」
「告白したんだ、もう」
「まだよ。でもね、だからってあなたとこのまま中途半端な気持ちを背負って生きていくことは、ダメだと思ったから」
二人寄り添って眠ったベッドに光が注がれる。過ごした日々は、もう過去となってしまうけれど。
「君らしいよ。横取りだろ?」
「そうよ。まぁ、もし彼女が答えてくれるのだとしたら、ある意味レイもあなたから私を奪ったことになるのだろうけれど……」
そういうと、なぜだかおかしくて笑ってしまった。
略奪愛。
なんて感じの悪い言葉だろう。
想いはとても純粋だというのに。
「そうだな。じゃぁ、振られたもの同士がくっつくって言うのも悪くない」
「あなたが?美奈子と?」
「そうだよ。似合わないかな?」
「想像したことがないからわからないわ」
部屋の時計が一時間の区切りを知らせる。はるかはベッドから立ち上がると、みちるを抱き寄せた。
「怨むよ」
「……えぇ。ありがと、はるか」
二人永遠に一緒だと繋いだはずの指と指が、いつの間にか外れてしまった。
だから、別の人と繋いだだけ。
言葉にするのはこんなにも簡単だというのに。
静かな部屋には風の音さえ聞こえてこない。
心の隙間に何もない。
あの人は風を送ってくれた。
愛しい匂いと優しい愛情をくれた。


「もしもし、レイ?」
会いたいと思う人は、何をもたらしてくれるだろう。みちるは携帯電話の短縮ボタンを押すと、心を奪った罪人の声を頼りにするしか、今の自分を正当化させるすべを知らなかった。
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Date:2014/07/12
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