【緋彩の瞳】 CHANGE ①

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

CHANGE ①

これはいったいどういうことなんだろう。美奈子はとなりのベッドで眠っているとても馴染みのある顔をマジマジと見つめて、それでもやっぱり理解不能でパニックになっている。
「レイ、まだ身体中アザだらけなんだし、今は横になっておいたほうがいいわよ。美奈子もすぐ目が覚めるわ」
「・・・美奈子・・・」
あぁ、やっぱり。まさか自分に生き別れの姉妹がいるとは。いや、でもさっきみちるは“レイ”と言った。
「みちるさん」
「何?」
「私、誰?」
美奈子は自分の顔を指差して、みちるに問う。
「頭、ぶつけたの?」
綺麗な手が額に置かれた。それでも、早く答えて欲しいものだ。
「レイ。あまり心配掛けないで。ほら、横になりなさい」
レイ・・・?
「うそぉ・・・」
さっきから自分の目の端に入ってくる髪の色が黒っぽく見えていたけれど。美奈子は呆然としたままベッドに押し込まれてしまった。
『じゃぁ・・・あの中身がレイちゃん』
そんな。
昔の映画じゃあるまいし。
美奈子はオロオロしたまま、それでも心配そうに頬を撫でてくれるみちるに、無理やり笑って見せた。


だいたいの状況はわかった。目が覚めて、まずいきなり飛び込んできたのが、自分の顔だ。レイは目を大きく見開いて、まだ夢の中にいるのではないかと何度疑っただろう。
「・・・レイちゃん、入れ替わっちゃったね。中身だけ・・・・・」
「わ、私が・・・美奈・・・」
自分の髪を取って、目の前で見てもそれはとても綺麗な蜂蜜色をしている。おそらく美奈子はとっくに入れ替わっていることに気がついているから、ある程度冷静な顔でいられるのだろう。
「ここは?」
「病院。私たち、戦っている途中に二人揃って神社の階段に投げ飛ばされたでしょ?転げ落ちて、意識なくしたらしくて、病院に運ばれたみたい。参った・・・・」
自分の姿をしている美奈子が体中包帯を巻いて、嘆いている。レイはゆっくりと身体を起こした。傷がちょっと痛い。
「どうする・・・・つもりなの?」
「言えないわよ」
「でも、言って亜美ちゃんに、何かいい方法を探してもらわなきゃ」
「面白がる人間がいるじゃない」
レイの格好をした美奈子が溜息を吐く。それに、言って信じてもらえるのは仲間だけで、クラスメイト達なんかは絶対に無理があるだろう。
「レイちゃん、しばらく様子を見ましょう。何とかなるかもしれないし。案外、目が覚めたら元に戻っているかもしれないし」
「・・・そうかしら?」
無口になった美奈子というのは、まだ大丈夫だろうけれど。
「美奈、私になったのよ?恥を掻かせないでね」
「大丈夫よ。お嬢様ぶっていればいいんでしょ?」
「・・・あんた、普段私の何を見ていたわけ?」
自分に睨まれた美奈子は、ふふふと笑って見せた。


2人はその後すぐに退院した。いきなり間違えたのが、2人はそれぞれ普通に自分の家に帰ろうとしていた。
「美奈子、気をつけてね」
「「はい」」
「・・・レイ、脳の検査受けたの?」
元気よく返事をしたレイを見て、みちるが思わず額に手を当て顔をマジマジと覗いてくる。
「だ、大丈夫よ」
「なら、いいけれど」
みちるに背中を押されて、“レイ”ははるかの運転する車の後部座席に乗り込んだ。
「バイバイ、レイちゃん」
思わず、その車に乗りそうになった“美奈子”は手を振って、それからアルテミスと一緒に歩き始めた。
「アル、あのね・・・」
「何?」
「別に・・・」
足元を引っ付いて歩くアルテミスと、美奈子の家に帰る。数える程度にお邪魔したことはあるけれど、実は親に会ったことがない。大丈夫だろうか。深呼吸をして、玄関を開けた。
「た、ただいま」
「美奈子!ずっとずっと連絡もしないで!どこに行っていたの?!」
「ご、ごめんなさい」
その気迫にびびって、思わず頭を深く下げる。すると、母親は目を丸くさせた。
「す、素直に謝ればいいのよ。着替えてらっしゃい。もうすぐ夕飯だから」
「はい、わかりました」
考えられない美奈子の丁寧な言葉使いに、アルテミスも開いた口が塞がらない。

「美奈、な、何かあった?やっぱり、頭ぶつけておかしくなったんじゃないのか?」
「失礼な」
レイは美奈子のタンスを開けて、いろいろ物色した。
「アルテミス」
「何だよ」
「着替えを覗くつもりなの?」
「・・・やっぱりおかしくなったよ」
普段の美奈子は、アルテミスを男として扱っていないから、着替えくらいで追い出したりしない。
「あなたにだけは、本当のことを言っちゃおうかしら?」
「何だよ、それ?」
「・・・まぁ、考えるわ。とにかく後ろ向いておいて」
制服を脱いでハンガーにかけると、オレンジ色のブラウスと白のズボンを履く。とにかく、この部屋はチップスの匂いが充満している。
「嫌な匂い」
窓を開けて喚起をしながら、部屋に散らかり放題のお菓子の袋を全部ゴミ箱に入れた。
「美奈、頭を打って人間がよくなったみたいだな」
「ありがと」
到底勉強をしているようには見えない机には、マンガや雑誌が山積みされている。それをきちんと並べて、綺麗に整頓し終わるとようやくリビングに下りた。


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Date:2014/07/12
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