【緋彩の瞳】 CHANGE END

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

CHANGE END

「みちる、TAから電話」
朝、学校へ行こうとしてせつなに呼び止められたみちるは受話器を受け取った。
「・・・すいません、体調が悪いみたいで」
どうやらここ数日、レイが学校にきていないらしい。またサボり癖が出てきたのだろうか。保護者ではないけれど、親しいということを学校側が知っていて、わざわざ電話してくるとは。
「みちるたちが悪いのよ」
「いい加減、教えてくれてもいいじゃない。元気になったかと思えば、急に落ち込んだりして。レイに何があったの?」
みちるは学校へ行くのをやめることにして、制服を脱いだ。自転車を出して待っていたはるかを呼び止めて、車で神社へ向かうことにする。
「気がつかなかったの?レイも怒るはずだわ」
「だから、謝りたいのよ。でも、理由がわからないのにどうすればいいの?」
私服に着替えたみちるは仕事に向かおうとするせつなの腕を掴んで、懇願した。これで何度目だろう。せつなは特大の溜息を漏らした。
「レイはアクション映画が嫌い。しいたけは好き。ソファーに座るときは、はるかの膝の上」
「・・・何のこと?」
「そうじゃないレイがいたでしょう。2週間くらい前に」
「・・・・どういうこと?」
「馬鹿じゃないの?レイじゃなかったのよ。レイが敵にやられて、誰かと一緒に吹き飛ばされたことがあったでしょう?そのときにね、どうやらオーブが・・・」
「・・・美奈子?!!!!!」
やっと、やっと合点がいったみちるは慌てて神社に向かった。
「おい、みちる?何だよ?!」
車を出そうとしていたはるかは、走り出そうとするみちるの腕を引っ張る。
「馬鹿じゃないの?!」
みちるはたった今せつなにいわれた言葉を、そのままそっくりはるかに伝えた。



「美奈子だったのか?!」
車の中で説明を聞いたはるかもやっと納得できた。それは確かにレイが怒る理由もわかる。
「謝らなきゃ」
「っていうより、許してもらえるかな?僕達、全然気がつかなかったし」
「それに、むしろ元気になったって喜んじゃったものね・・・」
許してもらえるだろうか。神社はとても静かだ。2人は急いでレイの部屋に向かった。
「レイ?」
大きな芋虫がベッドの上にいる。
「どうした?どこか痛いのか?」
そっと布団を捲って、うつぶせているレイの背中を擦る。少し身体を震わせてレイが顔をあげた。少しやつれている。また、食べないでボケッとしていたらしい。
「レイ、おいで」
身体を起こしてはるかはレイを抱きしめた。
「・・・何?」
不機嫌そうに寝ていたのだろう。目を擦りながらレイがはるかを見上げる。
「悪かった、気がついてあげられなくて」
「・・・遅い。どうせ、せつなさんにヒントをもらったんでしょう?」
「えぇ。ごめんなさいね」
抱きしめられたレイは、はるかの胸に顔を埋める。
「許してあげない」
「そうだよな。本当、悪かった」
背中を擦る。少し熱い身体。どうやら熱があるらしい。
「レイ、家に行こうか。熱がある」
「・・・まだ、土曜日じゃない」
「そんなの関係ないよ。このまま放っておいたらもっと熱が上がっちゃうよ」
抵抗しないから抱き上げて車に寝かせた。目を閉じてぐったりしているレイの頭を膝に乗せて、みちるは心配そうに頬を撫でる。
「いつごろから、体調が悪くなったの?」
「・・・・・・覚えてない」
「そんなに前から?」
「わからない。うるさいから話しかけないで」
命令されてみちるは口を閉じる。額が熱い。意識が朦朧としているのだろう。目を閉じたり、薄っすら開いたりを繰り返していたけれど、家に着くころにはなかなか目を開けてくれそうになかった。はるかに抱かれたレイは不快そうに眉を顰めても目を開けない。
「何かおなかの中に入れて、薬を飲んだほうがいいわ」
みちるの部屋のベッドに寝かされたレイは勝手に着ていたものを脱がされて、タオルで身体を拭かれて、また新しい服を着せられて、それから暖かな布団に包まれて、冷たいタオルを額に置かれて、冷たい氷枕を頭の下に置かれて、体温計をわきの下に入れられる。
「・・・・・使用人みたい」
一連の作業の手際よさに抗議の声すらあげる気も失せたレイは、聞こえない程度に呟いた。
「はい、おかゆ」
程なくして、みちるが作ったおかゆが運ばれてくる。起こされたレイは、“あーん”とされたものを口の中に入れた。
「ねぇ」
「おいしくない?」
「そうじゃないけれど。ここまでする必要、ある?」
「あら、当然じゃない」
また“あーん”とされる。レイは言い訳を食べてしまった。飲み込んだ言葉は言わなくて良かった言葉だろう。迷惑だなんて言えば傷つくに決まっているし、それも本心じゃないだろうし。
「あまり、そこまでおせっかいしないでよ」
「好きでやっているのだから、いいでしょ?」
「気がつかなかったくせに」
「それは、本当に悪いと思っているわ」
どうだか。でも、この人たちはあまり口先だけでものを言う人間じゃないから、まぁ真実に近い言葉だろう。薬を飲み目を閉じた。右手をはるか、左手をみちるに握られたままだ。はっきりいって身動きが取れないことが迷惑だとわかっていないから、こういうことが出来るんだと思う。「寝たいのよ・・・手を放して」
レイは目を閉じたまま言い放った。おずおずと放して、両手が布団の中に入れられる。目を開けていないけれど、とても残念そうな表情をしているのはよく伝わってきた。
「美奈にキスして悪かったって、ちゃんと謝っておきなさいよ」
「「はーい」」
こっちは疲れに疲れきったうえに熱を出したというのに。しかも自分の身体に戻ったとたん、具合が悪くなるなんて。まったくもって不幸続きだ。だけど両頬に温かい感触が降ってきて、もう何も考える気もなくなった。結局、自分が今必要としているのは期間限定の他人の両親の温もりでもなく、前世からの腐れ縁だということだ。あれだけ嫌がっていたというのに。
レイは両サイドの人の温もりに安心して、眠りに落ちた。




関連記事

*    *    *

Information

Date:2014/07/12
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/218-2309e295
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)