【緋彩の瞳】 愛が散る夢

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

愛が散る夢

「あら?」
誰かがテレポートしてきたことを五感でキャッチしたネプチューンは、想像していた人数が多いのを見て、思わず笑みをこぼした。
「付いてきちゃって。ごめんなさいね」
「いいえ」
その人の左腕にしがみついて、ネプチューンから隠れようと顔を背けているマーズは、引っぺがされて前へと押しやられる。
「マーズ、ご挨拶は?」
「ご…ごきげんよう。プリンセス・ネプチューン」
まだ成人していない可愛らしいほっぺと、気まずそうに玩ばれる髪。
「ごきげんよう。プリンセス・マーズ」
片膝をついて深く頭を下げて見せると、彼女はまた隠れてしまった。
「ネプチューン、相変わらずね」
「可愛らしい子には、いつだって私は優しいわよ」
「ウラヌスみたいなこと言うんだから」
隠れたマーズを再び引っぺがした彼女は、重たそうによっこらしょと呟いてマーズを抱き上げる。ぎゅーっとしがみついてくる小さな手に苦笑しながら、彼女は通されたネプチューンの部屋のベッドにそっと腰を下ろした。
「マーズもコロニスに似てきたかしら?」
「あなたに似てしまったら、たまった物じゃないわ」
ねー?と同意を求めるようにコロニスはマーズの頬に軽く唇を寄せる。
「そういうの、姉バカっていうのかしら?まったく、あなたも変わったわね」
もっとも、コロニスは昔から優しさで体が作られているっていうくらいの性格だったけれど。ネプチューンはちょっと意地悪くウインクして、からかうことを楽しんでいるだけだ。
「姉バカで結構よ」
緊張が少しほぐれたのか、膝の上でおとなしくしていたマーズがゆっくりとコロニスから降りた。人見知りしやすい子だと聞いていたが、ネプチューンは大丈夫な様子。
「もう、可愛くて仕方がないって言う顔よ?」
淹れたローズティをなるべく音を立てずにサイドテーブルに置いたネプチューンは、マーズの隣を避けてコロニスの隣を選んで腰を下ろした。少しだけ嫉妬したのかもしれない。
「あら、わかる?」
「……まさか、自慢しに来たおつもりじゃないでしょう?プリンセス・コロニス」
否定を望む口調。コロニスは内心ホッとしたような、でも、少し呆れたような気分。
「そうねぇ」
翡翠色した瞳がわずかに不安の色を含んだ。本当にわずか。
「もちろん自慢しに来たのよ」
いつもは1人で来るくせに。
付いてきたがったというマーズは、2人そっちのけでおいしそうにローズティを飲んでいる様子。
「コロニス、今日の逢瀬の目的はそれだけかしら?」
欲しい言葉をわざと言わないコロニス。時々じれったくなるけれど、そういう表現も嫌いになれない自分が情けないと、しみじみ思う。
「妹自慢?そうね、それもあるけれど。言わせたいかしら?」
「…はぁ。私の負け」
妖艶な笑み。口角が少しだけ上げられただけなのに。
「マーズ。深海水はここにしかないのだから、パレスのお外で遊びましょう」
「はい」
コロニスの言葉に元気よく返事をしたマーズが、残さずローズティを飲み干そうと顔をカップで隠した。
「……ん」
そのわずかな隙にコロニスの唇を塞ぐ。不意に襲ったキスは口紅の味。
「さ、行きましょう。案内するわ、プリンセス・マーズ」
「はい」
ちょっと嫉妬していたはずのネプチューンは、なにやらご機嫌な声にはや変わり。マーズの手を引いて、さっさと行こうとする背中がちょっと踊っているようにも見える。
「本当、変わった人ね」
唇にわずかに残る彼女の香り。コロニスはゆっくりと立ち上がり、愛しい人の後を追った。




あなたの温もりを愛しすぎたの

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Date:2014/07/12
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