【緋彩の瞳】 希い(ねがい) ①
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緋彩の瞳

セラムン[訳あり]小説

希い(ねがい) ①

「ここは?」
『ここは星の終焉と再生の場所』
「私は、……死んだのですか?」
『あなたは、立派に使命を果たしました』
目の前に見たことのない光景が広がっていた。
言いようもない、光を見下ろすその場所。痛いほど眩い光が、川のように流れるその様子。
この川を下れば、新しい世界が待っているのだと確信できる。
「マーズは……マーズは無事に戴冠式を終えられたのでしょうか?」
『あなたの愛する人は、あなたの希う通り、新しい使命を与えられました』
「……そうですか」
『あなたは新しい星の歴史を始めますか?』
どうすれば、もう一度マーズに会えるのだろう。マーズは必ず戻ってくると言っていたのだ。この姿のまま、あの星にとどまっておかなければならない。
妖魔と一緒に全てを焼き尽くした、あの星は脆く崩れてしまったのだろうか。
「私は生まれ変わることなど望みません。この姿でもう一度、私の星に…戻りたいのです」
『一度失ったものは、二度と手に入れることはできません。あなたが希うことは、銀河の理に反するのです』
「いいえ。魂が朽ち果てても構いません。せめてマーズが戻るまでは……あのお方は約束をどんなことがあっても守るお方。悲しませるようなことをしたくありません。たとえ神を殺してでも、私はあの場所へ戻ります。この姿で、この愛を携えたまま」
『輪廻転生のループから一度外れてしまうと、いずれ転生するあなたの愛する人と出会うことが、永遠に訪れないのですよ?』
マーズは転生など望む人なのだろうか。きっと望まないと思う。あの場所で、2人で命を終わらせたいと、希っておられたのだから。
「………私の生はただ一度だけ。私の命が繰り返されることは、マーズを苦しめることと同じ。私の使命を終わらせなければ、マーズは永遠に戦い続けなければならない」
光の川が流れるその場所に身を投げてしまえば、安らかな眠りにつけるだろう。
失ってしまった部下たちは、もうこの川を下り、再生の海を漂ってくれているだろうか。
「お願いします。マーズを…私の愛を待ち続けるだけでいいのです。その望みが叶いさえすれば、私という存在が塵と消えても構いません。悪として葬られても構いません。ただ……待たせてください」
『あなたは、それが罪だと十分に認識しておられるのですね』
「……えぇ」
『ならば、帰りなさい。いずれ遠い未来であなたは罰を与えられるでしょう』
「その時は、よろこんでお受けします」






『私の姿が鏡に映し出されるとき、私はあなたを想い出すのね』




あなたは私の半神でした





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Date:2014/07/22
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