【緋彩の瞳】 希い(ねがい) ⑱

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

希い(ねがい) ⑱

自分から捨てたはずの仲間を求めた。
都合がいい、なんて思っている感情がどこかにあるのに、それでも仲間を求めた。

声を上げるより早く、身体が地面に打ち付けられる
生身の体に感じた痛みが、罰のようだ
何が起こっているのか、わかららない

フォボスとディモスが空高く飛んだ

レイが望む仲間を求めるように空高く舞い、鳴き続ける



「おまえたち!やめなさい!静まりなさい!!」
目の前の火野レイが…いや、緋彩が空を見上げて叫んだ。

その光景が不思議だった。
この身体は、この魂は火野レイだと思って今まで生きてきたけれど、実はそれは思い込みだったのだろうか、と。
フォボスとディモスとは、物心ついたころから一心同体で生きてきたつもりだった、それが夢だったのかとさえ思えた。

ポケットから通信機が鳴る。
仲間がフォボスとディモスの異変を捕らえたのだろう。
鉛のような腕を動かして、何とかポケットから通信機を取りだそうとしたが、腕を掴まれた。
「マーズ」
「………なぜ…知っているの?」
「私が…誰なのかわからないのですか?」
「………緋彩」
「それは真名ではないわ。本当に、私が誰なのかお分かりにならないのですね?」

見上げた緋彩は、まだ涙を流している
なぜ、泣いているの
なぜ、レイを見つめて泣いているの
レイを傷つけているのに泣いているの

「あなたは……敵なの?」
「………ひどいことを言うのですね、マーズ」
彼女の涙は、心の底から悲しいと伝えている。
でもそれは、みちるさんのことが好きだから泣いているとは、今は思えなかった。
レイがそうさせている。

いや、“マーズ”がそうさせている。

でも、それがなぜなのかがわからない。
フォボスとディモスは鳴き続ける。
仲間の、星の輝きがあちこちからレイの元へと集まるその鼓動を心に感じる。


縋ってもいい
これが運命というのなら、
この運命に縋って、助けを求めてもいいのなら


「マーズ……その魂を私に返してください」
起き上がれない身体に、二度目の痛みが降り注いだ。


「レイ!!!!!!!」

レイの名前を叫ぶ声が耳に届いた
だけど応えられずに、レイの意識が遠のいて行く
みちるさんの声
ずっと想い続けていた声
その姿も見られずに、目を閉じた




「緋彩、何をしているの?!」
空高く飛び続けていたフォボスとディモスの声がやむ。
目の前の事態は、みちるのせいなのだろうか。
緋彩がレイを血だらけにしている。
みちるが振ったせいで緋彩にそう言う行動をさせたのだろうか。
「………あなたがこの世界に存在しているから、マーズが私を見つめてはくれないのでしょう?」
「マーズ?……どういうことよ」
なぜ、緋彩がレイをマーズと呼ぶの。
「私の半神、あなたがマーズの心から消えてなくなれば、永遠に私だけが彼女を愛する存在でいられた。そして、いつか私の愛を思い出してくれると……幾千億の夜を超えてただ、その時を待っていたと言うのに」
何も言葉が思いつかない
緋彩は何を言っているのだろう
何を伝えたいのだろう
そもそも、この子は緋彩なのだろうか
緋彩とはどんな子だったのだろうか
「………緋彩、あなたはいったい何者なの?」

半年間一緒にいた子は、誰
みちるに好きだと告げて、頬笑みをくれた子は誰
目の前にいる緋彩は昨日までの緋彩ではないの

「何者?…そうね、あなたたちは私がどこの誰とも知らなかったわね。今はもう、私が誰なのかを知っている人間など、この世界にはいない。いえ、私と言う人間など、永久に存在などしえないのかもしれない」
緋彩の背後から、鮮烈な愛の光がチェーンになって飛んできた。だけどそれは、緋彩には掠りもせずにパラパラと落ちて行った。
「ヴィーナス、ずいぶんと弱い」
「緋彩ちゃん、一体どういうことなの?」
美奈子の存在も知っているらしい。みちるは変身ペンをかざした。ヴィーナスは完全に気配を消して緋彩を狙っていた。力を無効化させるというのは、相当な力なのだろう。横たわるレイが酷い怪我を負わされているのも、そのせいなのかもしれない。
「レイちゃん!」
「レイちゃん!!」
「レイ!」
仲間が攻撃を仕掛けても、緋彩に届くことなく消えて行く。
「マーズは仲間から追放されたのではなかったの?こんなズタボロにしておきながらも、平然とここに来るあなたたちの気持ちがわからないわ。みんな、見せかけの愛しかないくせに」
「緋彩ちゃん、一体どういうこと?!あなたはいったい誰なのよ!」
ヴィーナスの言葉に応えるように、緋彩が右手を大きく上げた。その空にはフォボスとディモスが弧を描いて飛んでいる。
「ここは、マーズの生きる場所ではないわ」

フォボス!ディモス!

緋彩が呼んだ。
その声はレイそのものだった。それに応えるようにフォボスとディモスが直角に降りてくる。
そして、紅い光に囲まれた彼女たちはガーディアン姿になった。
「お前たちの主は誰なの?」
「「……火野レイ様です」」
「お前たちも忘れたと言うの?」
「いいえ、セーラーコロニス。誇り高き我がコロニス星のプリンセス」
フォボスが膝をついて頭を下げている。
フォボスとディモスは彼女のことを知っている。

セーラーコロニス?
セーラー戦士?

ネプチューンは制服姿の緋彩を見つめた。何も感じないのに。
星のオーラなど一つも感じない。
何度も彼女と身体を重ねた。
それでも、冷たい体温からは何も感じたりしなかった。
「セーラー戦士?……ちょっと、どういう……?」
ヴィーナスの呟き。隣でマーキュリーがポケコンを操作し始めた。
「星へ戻りましょう。やっと、私の夢が叶う。2人とも、付いてきなさい」
「コロニス様……」
「命令よ。お前たち、主がマーズだというのなら、片時も離れないのでしょう?なおさら、お前たちは付いてこなければならない。星へ戻るのです」
「「……御意」」
頭を垂れるように頷いた2人が立ち上がった瞬間、レイと緋彩を炎が取り囲んだ。
「レイ!」
「レイちゃん!!」
腕を伸ばしたくても、炎の熱が風を生み空へと舞い上がる。
目を閉じて数秒耐えていると、ふと感じていた熱が消えた。
そこには、レイの流した血の跡しか残されていなかった。





いよいよレイちゃんcrystal
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Date:2014/07/31
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