【緋彩の瞳】 希い(ねがい) you were a half of me ②

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

希い(ねがい) you were a half of me ②

「火星へ続く回廊は非常に危険なのです。そう簡単にはたどり着けないような構造になっていて、何も知らない者が火星を目指して進むと、コロニス星へと迷い込んでしまう。そうやって彼女たちは母星のキャッスルを守っていました。そしてコロニス星に辿りついたとしても、悪意あるものに帰り道などない」
「つまり、この回廊を進むとコロニス星に行けるのね」
プルートの説明を聞きながら、ヴィーナスは先頭を切って歩き続けた。前世の頃、一度として火星を訪れたことなどない。
「おそらく。私の記憶を辿る限りは、ここは火星へのルートとは違います」
風が正面から吹いてくる。自然と身体がそれから身を守るために左に傾いた。
目の前に頑丈そうな門が見えてくる。
火星のマークと、赤い砂地が見える。
「……レイちゃん」
「赤い星のオーラが見えるわ」
マーキュリーはゴーグルで門の向こうの気配を調べて呟いた。
「みんな、コロニスが攻撃をしてきたら、迷わず反撃して。私たちが戦う理由は一つだけ。仲間を、“火野レイ”を助けるためよ。前世でどんなことがあったかはわからないけれど、レイちゃんが怪我をして、拉致されている以上、どんな事情があったとしても、仲間を助けるのが私たちの使命よ」
ヴィーナスはネプチューンを睨むように見つめた。
「……そんな顔しなくても、私はレイを助けに来たのよ」
「あなたは攻撃に参加しなくてもいいから、プルートと最優先でレイちゃんの保護を」
「了解」
勝算はあるかと言われれば、正直、ない。
プルートの話では、コロニスはマーズと同等の強さを持っているという。前世のマーズのあの強さは、戦士が束になってもそう簡単に倒せるものではない。
レイちゃんがマーズとしての力を持てずにいるのも、その強すぎる力故だと信じていたが、あるいは前世のマーズが永遠に放棄したのかもしれない。
そのあたり、コロニスと関係があるのかもしれないけれど、プルートは何も教えてくれなかった。




「レイ様!レイ様!」
酷い眩暈と、焦点の定まらないぼんやりとした何か。何が見えているのかもよくわからない。
「………フォボス」
「お目覚めください!レイ様」
何かが頬に触れる。そっとこのままもう一度目を閉じて、二度とゆすり起こされたくはないと思いながらも、それを許してはくれない叫び声。
「レイ様、神殿の外でコロニス様とヴィーナス様たちが交戦しています」
「レイ様、今のうちに!」
後ろ手に縛られていた鎖のようなものが解かれた。レイは地面に落とされそうになるのを、フォボスとディモスに支えられながら、けれど簡単に身体が動いてはくれそうにもなくて、ぐったりと倒れこんでしまう。
「………私は、マーズは…コロニスを知っている…のでしょう?」
「レイ様は、前世の記憶のほぼすべてを消去されてしまっているのです」
「……ディモス」
「思い出すことができぬように、永遠に封印されています」
彼女たちはガーディアンの姿でも、本当にカラスと同じくらいの大きさにしかならなかったはずなのに、ぼんやりと見える2人が大人の大きさに見える。
「それが前世のマーズ様の最期の希いであり、銀河の理はそれを受け入れました」
前世の記憶は、風景写真を数枚見るようなものしかない。
その中にコロニスはいただろうか。
いや、いなかった。
彼女は月の王国にいなかった。
「……あの子は…いったい何者なの…私とどういう関係なの?」
痛む腹部を抑えながら、何とか上半身を起こす。遠くの方で爆音が聞こえた。ここは神殿なのだろう。綺麗な大理石の柱が並んでいる。レイがくくりつけられていたのは、何かのクリスタルの塔のようなものだった。薄い紅色の塔。祈りを捧げるものなのだろうか。
「レイ様に前世の記憶がない以上……レイ様はお優しいお方ですから……」
「言えないことなの?」
フォボスは悲しい瞳でレイを見つめ、それからディモスに助けを求めるように目をそらした。
「レイ様、今この場所でそのお姿でいることは危険です。戦闘服に変身して、ヴィーナス様たちと合流なさってください。コロニス様はとても苦しんでおいでです。………あのお方を救えるのはマーズ様だけです」
ポケットには変身ペンがあった。仲間たちの元へ向かってもいいという許しがある。
助けに来てくれた気持ちに応えなければ、レイの生きる場所はもうどこにもないのだ。
「コロニスと戦えということ?」
とても強い力を持っている。仲間たちが束になっても、いまだ誰ひとりこっちに向かってきていないのだから、相当強いのは手に取るようにわかる。
「レイ様………コロニス様は……マーズ様の影武者として、立派に使命を果たしたお方です」
「私の影武者?」
聞いたことない。影武者を必要とするほど、前世の自分は特別な地位にいたのだろうか。美奈はよく、前世のマーズはすさまじく強かったと言っていた。その力が強すぎて、生身の人間ではとてもじゃないけれど、扱いきれないだろう、と。でも、影武者なんて誰からも聞いたことはない。断片的な前世の記憶にもない。
「………レイ様…」
ディモスは言いたいけれど言えない、と目で訴えている。フォボスはうつむいたままだ。
「あなたたちとコロニスはどういう関係なの?」
「……私たちはコロニス星の兵士でした。コロニス星は火星を守るためにある星。私たちはコロニス様の率いる軍に所属していましたが、コロニス様の命を受け、マーズ様が月へ向かうにあたり、ガーディアンとなり、お傍についてお守りする任務につきました」
だから、レイが縛られていてもコロニスがいる手前では助けられなかったのだろうか。
ふらつきながら立ち上がり、握った変身ペンを胸に押し当てる。
「………2人とも、私がコロニスを本気で倒すべきだと思う?」
まっすぐな4つの瞳
レイに“助けてあげて欲しい”と訴える様な瞳
だけど、それを口に出せないと、じっと耐えている
2人がこんな表情をしたことはあっただろうか
レイが痛めつけられてもなお、痛めつけた相手と戦わなかった2人
「救いの手を差し伸べられるのは、レイ様だけです」

それは、殺せと言う意味
殺すことが救いに繋がる

2人は回りくどいことは言わないはずだ。変身して救えということは、戦って殺せと同じ意味。
「私がやられそうになったら、2人は私を守りなさい。あなたたちの主は誰?」
「「火野レイ様です」」
2人は“マーズ”ではなく、レイの名前を呼んで膝をついて頭を下げた。
「前世で何があったのか私は知らないし、あなたたちも言えないのなら、何も聞かない。でも、あのコロニスと私はかなり深い関係だったのでしょう。影武者だったのなら、命をかけてマーズを守ってくれていたのでしょう。かつてのマーズは彼女を愛していたかもしれない。その記憶のない私を憎んでいるかもしれない。でも、………今の私にはどうすることもできない」

コロニスは何を求めてレイを傷つけようとしたのだろう
レイが傷つく姿をどんな想いで見ていたのだろう
みちるさんに近づいて、みちるさんを傷つけて
そうまでして、何を手にしたかったのだろう

何を望んで、地球に降りてきたのだろうか
レイに想い出して欲しかったのだろうか
コロニスを想い出して欲しいという希いが叶えられず、傷つける行動に出たのだろうか

いや、そもそも“傷つける“つもりだったのだろうか

「私たちの主は火野レイさまです。私たちはあなたの心を命懸けでお守りいたします」
「……聞くに堪えない真実があるのね」
それでも知りたいと望むのだろうか



今のレイにできることは、仲間の元に行くことだ

『マーズ・クリスタルパワー・メイクアップ!!!』

焔が身体を包み込む
懐かしいと思える温かさ
ぼやけていた視界が、全てを映し出す
懐かしいと思える風景

いつか、見たことのある神殿
さっきまでそんなことを想わなかったのに
そう思えてならなかった




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Date:2014/08/09
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