【緋彩の瞳】 パニック?! ②

緋彩の瞳

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

*    *    *

Information

みちる&レイ小説[幼馴染]

パニック?! ②


小さな客人の相手をしていると、外から悲鳴と何かが水の中を落下する音が響いてきた。
かなりの音。
とても近い場所。
「何ごと?!」
敵?それとも不審者かもしれない。いずれにせよ、見に行かなければ。
「みちる、どうしたの?」
キッチンにいたママも、物音を聞いてびっくりして飛び出してきた。
「何か、動物でも逃げ込んできたのかしらね。ママはここにいて。この子をお願い」
「危険よ、みちる。警察に電話をしましょう」
「平気だから。警察なんていらないわよ」
客人をママに預けて、みちるは変身ペンを片手に裏庭に出た。なにか、気配がある。ひとりではない。複数だ。
『うさぎちゃ~ん!大丈夫?』
『美奈~?!』
うさぎ?
美奈?
聞き覚えのある声が、聞き覚えのある名前を呼んでいる。まさか、あの2人がこの屋敷に入り込んだ犯人なのだろうか。
『レ、レイちゃん?!ちょっと、大丈夫?!キャ~!しっかりして~~~!』
どう考えても美奈子と思われる声が、レイを心配するような悲鳴を上げている。
まさかレイも一緒にいて、なにかトラブルに巻き込まれたとか?
とっさにさっきの凄い水音を思い出した。プールに飛び込んだ…とか。
「あなたたち、いったいここで何をしているの?!」
プールサイドには、ずぶ濡れの女の子が5人と猫2匹。まるで泥棒が見つかってしまったような顔をして、こちらを見て硬直している。
「みみみみみ、み、み、みちるさん?!なんで?!」
まことがまるで幽霊を見てしまったような顔をして、みちるを指差した。何をそんなに驚いているのか、みちるにはわからない。まさか、誰の家なのかわからないでここにいるとでもいうのだろうか。
「な、なんでって……私の実家だからよ。それよりあなたたち、いったい何をしているの?」
プールにそろって落ちたらしいのは見てわかった。
ではなぜ、5人がプールに落ちたというのだろう。
少なくとも、レイは自分の家のようにこの家の配置は知っているのに。
とにかく、レイに理由を聞かなければ。そう思って未だ横たわっている馴染みの人物に近づいてみた。
「……レイ、大丈夫?」
「はっ…そうだ!レイちゃんが伸びていたんだ」
声を掛けるみちるの横で、美奈子が思い出したようにレイの体をゆする。
「なんですって?あらいやだ……ちょっと、レイ?レイったら!」
レイは完全に気を失っている。
頭をぶつけたのだろうか。あんまり泳ぎが得意ではないから、まさか溺れていたとか。
ずぶぬれでノックアウトのレイと、それから美奈子たち。いったいどうママに説明したらいいのだろう。この子たちと知り合いだなんて言ったら、頭を抱えるかもしれない。
「……話はゆっくり聞くから。美奈子、レイのことをとりあえずお願い」
「お、怒ってます…か?」
「呆れているのよ、このおバカ」
美奈子にレイを抱かせると、みちるはずぶ濡れた全員を正面玄関まで連れて行き、それから家へと上げることにした。本当のところ、ずぶ濡れたまま追い返したいところだけど、レイが心配だし、レイだけ置いていったところで、レイが不法侵入しようとした元凶とも思えないのだから、もろもろの事情聴取も行う必要があるだろう。


「……いったいどういうことなの、みちる」
「どうやら、不審な人物が複数潜り込んだみたいなのよ」
玄関を開けると、音に気がついたママがパタパタとスリッパの音を鳴らしてやってきた。腕には小さな迷子を抱っこしている。
「ちびちび!あんた、ここにいたのね?!」
ずぶ濡れたうさぎが大声をあげて、喜ぶような、驚くような顔をみせた。どうやら迷子を追いかけて、うさぎたちはここに忍びこんだようだ。
「この子を探していたの?」
「はい。あの、その…ごめんなさい。みちるさんの家に勝手にちびちびが忍び込んでしまって」
ぽたり。ぽたり。
玄関にいるうさぎたちの髪や洋服から雫が落ちて、大理石の上に溜まっていく。
本当に、この子たちがいるところにはトラブルが付いて回る。
見ていて飽きないけれど、まさか自分の家で騒動を起こされるとは予想外の出来事だ。
「とにかく、あなたたちは服を絞ったらとりあえずお風呂に入って」
みちるの命令に、おのおの雫を絞り落とす。さらに雫がじわりじわりと玄関に広がってゆく。
「美奈子、レイは預かるわ」
「……あ、恐れ入ります。お願いいたします」
いまだぐったりしているレイ。美奈子が恐縮しながらレイをみちるの腕に引き渡した。
レイだけはこの子たちとは別行動をしてもらわないと。
「レイ?いやだわ、レイがいたの?いったいどういうことなの?…みちる、どうなっているの?怪我をしたの?」
「ママ、落ち着いて。レイは気を失っているだけだから」
ママはもう、何が何だかわからない様子で取り乱していた。
何が何だかわからないのは、みちるだって同じなのに。
腕の中のレイの雫が、じわじわとみちるの服に染み込んでいく。
レイも何が何だかわからないって思いたくて気を失ったのかしら、なんて少し考えた。





「わかっていたことだけど、まさかみちるさんの実家がこんなに大金持ちだなんてね」
美奈子は浴槽だけで自分の部屋ぐらいあるのではないかという広いお風呂に浸かりながら、身分の違いをしみじみ感じた。
世の中結局、お金があるとないとでは、風呂に入って足を伸ばせるかそうでないかの違いだけじゃ済まされないものなのだ。ここは泳げるくらいに大きい。
「いいのかしら、私たち。海王財閥のおうちに不法侵入したのよ?とんでもないことになるかも」
亜美ちゃんはそんな心配をしながらも、高級なシャンプーで髪を洗い、高級なボディソープをふんだんに使っていた。そして大理石のお風呂でしっかりと温まっている。
「大丈夫じゃないの?だって、うさぎたちはみちるさんの知り合いなんだし。みちるさんだって、警察に突き出したりしないでしょう?それより、さっきのいい匂いは、今から夕食なのかなぁ?お呼ばれとかないかなぁ?」
うさぎちゃんの頭の中のスイッチは、空腹になるとあらゆる心配事の一切を排除されるように押されてしまうようだ。ちびちびと大して変わらない。
「それにしても……みちるさんのママ、レイちゃんのことを知っている様子じゃなかったか?みちるさんも、レイちゃんは置いていけって言うし」
まこちゃんは豊かな胸を見せつけるように美奈子の前に腰を下ろす。
また育ったんじゃないだろうか。別にいいけれど。
「あれは知り合いって言う感じでしょう。しかもみちるさんのママは“レイ”って呼んでいたし。みちるさんはレイちゃんだけ違う場所に連れて行ったのよ?こんなに大きいおうちなんだから、別のお風呂に入れているんじゃない?実はも~っと大きいお風呂があるとか」
「え?美奈子ちゃん、知ってるんじゃないのかい?」
「うーん。レイちゃんからは聞いたことないんだけどね~。まこちゃんだって聞いていないんでしょ?」
レイちゃんが何かみちるさんと裏で仲がいいらしいことは、本当のことを言うと美奈子は気が付いていた。レイちゃんは隠そうとしている様子だし、みちるさんもあからさまにはしていないし。最初は浮気を疑ってみたけれど、どうやらLOVEでもなさそうなので、黙って様子を見ていた。今日の様子だとレイちゃんは海王家の人間と関わりがあるのは間違いない。
「いずれにせよ、私たちは頭を下げて迷惑をかけたことをしっかり謝らなくちゃね」
しっかりもののレイちゃんがあちら側の人間だとわかった以上、ここは亜美ちゃんに従うのが賢明のようだ。



「起きた?大丈夫?」
とりあえずタオルを敷いたベッドに寝かせていたけれど、まだレイは何が何だかまったく状況が読めていないようだった。
「………あれ?…みちる?…あれ?ここ……みちるの部屋?」
「そうよ、ここは私の部屋。ずぶ濡れで気絶していたレイをプールサイドで拾ったの。他の不審者は警察に引き渡すつもり」
部屋に備え付けられているお風呂も、ちょうど沸いた。みちるはひんやり冷たいレイの頬を撫でて、それから赤くなっている額を優しくつついた。
「いたっ……プール…?あぁっ……そうだ、あの子たちと一緒に…落ちたんだわ」
「そのようね。とりあえず風邪を引いてしまうからお風呂に入りましょう。起き上がれる?」
いくら夏とはいえども、気を失っている間に体温は逃げてゆく。レイは思い出したように身体を震わせて小さくうずくまった。
「みちるまでいるとは…さらに予想外……」
「むしろ感謝した方がいいわよ。ママだけなら、間違いなく通報されていたわよ」
抱き起してあげたレイは、罰が悪そうな顔をしてそっぽ向いている。レイの癖。
みちるはレイの手を取ってお風呂へと連れて行った。
「だからいつも、ほどほどになさいと言っているでしょう?いったい何があったのよ」
濡れて外しにくくなったシャツのボタンを外してやり、裸にさせてとりあえず外傷がないかを確かめる。どうやら額にできた赤い痣以外はこれといって問題もないようだ。
「……仕方ないでしょう?あれが私たちのプリンセスなんだから。まさかここにちびちびが入っていくなんて思わなかったわよ。とばっちりは全部私に来るんだから、まったく」
うさぎに似た小さな子供が現れたという情報は、せつなからもらっていた。みちる自身、今日初めてちびちびを見たけれど、みちるだって、まさか本当に自分の実家にちびちびが迷い込んでいるなんて冗談かと思った。どうやら、母親によると1週間くらい前から毎日、どこからともなく天使のように舞い降りて、ニコニコして庭で遊んでいるんだとか。毎日毎日、お菓子をあげて相手をして、おうちに送ってあげようと思うといなくなってしまうらしい。みちるは今日、ママに頼まれて、もし現れたらその子を保護して警察に渡す手伝いをする役目のために実家に戻っていたのだ。ママから聞いていた特徴とせつなから聞いていた特徴が似ているから、なんとなく嫌な予感はしていた。お菓子が相当好きらしく、甘いクッキーやケーキを用意して待っていたら、案の定やってきたということだ。
しかも、大きな高校生を5人も引き連れて。

2人そろってバスタブに腰を下ろすと、一連の騒動の事情とこちら側のちびちびの情報を照らし合わせ、結局、ちびちびの保護者であるうさぎが元凶であるという意見で一致した。
「ママはね、最初気味が悪いって言っていたんだけれど、なんだか可愛がっているみたいなのよ。広い家にパパもいないし私もいないし、毎日現れるちびちびを本当のところは可愛がっていたんじゃないかしら?」
「そう言うことするから、こっちがとばっちり食らうんでしょ?知らない子供に餌をあげないでよ」
「私に言う?直接言ってちょうだい」
レイの額の痣もちびちびを探すうさぎと正面衝突した時にできたというし、本当にレイは何かとあの子たちに振り回される。一線を引きなさいと言っても、頼られるとNOとは言えない子だから。
「ところで、美奈たちは?本当に追い返したの?」
「いいえ。1階のお風呂にまとめて放り込んだわよ。いつものお店に電話して、ここに新しい洋服を持ってきてもらうように頼んであるわ」
4人分の服は、みちるのなじみのあるお店の店長に、すごいスピードで車を走らせて届けてもらう手配をした。クリーニングが仕上がるのをお風呂の中で待たせるわけにもいかないし、貸すのも正直ためらいがあった。
「貸してあげればいいのに。腐るほどあるじゃない」
レイはやっぱり、わかっていない。
「レイ以外の人間に、そんなサービスはしません」
「お金掛けて、そこまでする?うちに請求書回さないでよ」
「誰がそんな事をするものですか」
外は陽が落ちて、そろそろ夕食が始まる時間になる。まさか、ママはあの全員に夕食を振る舞うなんて言い出すのではないかと思うと、早く手を打たなきゃとみちるはレイの手を取ってお風呂から上がった。




関連記事

*    *    *

Information

Date:2013/11/10
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/26-07377dd9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。