【緋彩の瞳】 魔法の手

緋彩の瞳

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みちる×レイ小説

魔法の手

「また、降ってきたわね」
昼間はおぼろげながら、太陽の形が見えるほど回復したように思われた空も、やはりこの時期だ、日にちが変わる少し前から、窓の外で雨が木々の草に当たり、雫の落ちる音が聞こえてくる。
「窓閉めてくれる?エアコンも除湿にしてよ」
雨音が聞こえてきてすぐ、レイの周りを包む空気の柔らかさは失われてしまった。

この時期の雨がひどく苦手なのだ。

読んでいた本も集中力を乱されて、テーブルに投げ出されてしまう。
みちるは言われたとおりに窓を閉めて、カーテンも引き、エアコンのスイッチを入れた。
熱いものを食べるにも、冷たいものを食べるにも、悩む季節。

レイの不機嫌がピークになる梅雨。

「すぐに部屋も涼しくなるわ。ハーブディを淹れるから」
雨音を嫌い、窓からなるべく逃げるようにレイはソファーに突っ伏した。
返事がなくとも、みちるは丁寧にハーブティを淹れて、香りが届くようにテーブルに置いてあげる。
「……明日の学校、行く気分になれない」
「車で送ってあげるから。来月になったらすぐテストが始まるんでしょう?さぼらない方がいいわ」
レイはそもそも出席日数があやしい。それでも成績優秀で1位2位を争う学力と親のネームバリューのせいか、留年や補習に呼ばれたこともなかった。この時期、特にレイは学校をさぼる悪い癖がある。雨の中、傘をさして学校指定のローファーの中の靴下を濡らしながら行く価値なんてないとかなんとか、さぼる理由をいっぱい並べてはみちるを困らせるのだ。
「ベッドルームもエアコンをかけてよね」
「タイマーをかけているわ。ちゃんと抜かりなく」
口調もツンツンしている。
寝そべったままでハーブティを飲む行儀の悪さも、今は注意をしない。
機嫌を直す方法はわずかだけれど、ある。早く手を打っておかないと。

みちるはソファーの傍に腰を落として、不機嫌姫の頬を、氷で冷やしてきた手のひらで包み込んだ。
「……冷たい」
「気持いい?」
「さすが、みちる。待ってたの、魔法の手」
「雨が止まない以上、あなたの苛立ちを止めるのは私しかいないものね」
それは、みちるが閃いた魔法の手。
「好きよ、みちるの手」
6月、梅雨入りと同時にみちるは1日に最低1度はこうやってレイの頬に両手を当てて、言葉の代わりに愛を染み込ませてあげる。
目を閉じて気持よさそうな顔をして。
その表情は幼稚園児のようで可愛らしい。
その顔を見たくて。

雨は天敵?
いいえ、雨は天使。

自然が生み出した不機嫌のおかげで、みちるの魔法の手がレイの頬には必需品になるのだから。
舞い降る天使は、レイがみちるを必要としていることを証明してくれる。
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Date:2014/08/13
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