【緋彩の瞳】 希い(ねがい) you were a half of me ⑧

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

希い(ねがい) you were a half of me ⑧

「ここは?」
『ここは星の終焉と再生の場所』
「私は、……死んだの?」
コロニスの攻撃を何度も受けた身体は、生身の人間の身体は、やはり限度を超えていたのだろう。命を引きかえにして守りたいと思っていた仲間たちを、悲しませてしまうことになったのではないかと思うと、情けない気持ちだった。それでも、誰ひとり死なせずに済んだのはよかった。
『あなたがここに来るのは2度目です。覚えていますか?』
「……前世の頃?」
星の終焉。
レイには初めての場所だったけれど、マーズとしては多分2度目だ。
月の崩壊で落とした命。
ここに来て、再生の道を進んだと言うのだろう。
『あなたと似た姿の人が、はるか遠い昔にこの場所に来た時に、その人は再生ではなく、その姿のまま、ずっとあなたを待ちわびなければならないと言っていました。あなたの守護神に、ついに会えたのですね?』

コロニス

”はるか遠い昔“と目の前の人は言った。

「……えぇ。ずっとずっと待ちわびていたと。ずいぶん苦しい想いをさせていたのでしょう」
コロニスはここに来ていないのだろうか。さっき、ついさっきまでこの手の中にいたのに。
『そう。星を背負うものには再生の道が開かれています。あのお方は自らその道を絶ち切り、罪を背負いました。ですが、長い時を経て、ようやく希いを昇華させたのでしょう』
「どういう……あの子は転生していたのでは?」
『いいえ。あなたの守護神は、生まれ変わるあなたを探すのではなく、みずからの星へと魂の姿のまま帰ってゆきました。後にも先にも、そのような罪を犯した者はおりません』
「そんな……まさか……だって、あの子は生きていたわ」
レイの目の前に現れ、みんなと同じ学校に通い、みちるさんと恋人になった人は、転生をしたコロニスではないのなら、彼女は誰なのだろう。
『転生せずに、滅びた身体を幻想で包み込み、滅びた星を幻想で再生させ、幾千億の夜をじっと待ちわびていたのです。私はその姿を…その罪を静かに見守り続けていました』
緋彩は生きていた。幻想だなんてそんなものを感じさせるものはひとつもなかった。
「前世の頃から……あの子はその姿を保ち続けていたの?」
『あなたを待つと。あなたが1度目にここに来た時に、それを知ったあなたは酷く嘆き、悲しみました。ですがあなたは再生を拒むことはできなかった。銀河の理は、銀水晶と共に再生しなければならないと、判断いたしました』

「だから私は………記憶を捨てたのね」

何か、思い出しそうな気がした。
ここに来たことがある。そんな気がする。
そしてレイは…マーズは膝をついて慟哭に胸をえぐられたのではないか。
泣き叫ぶ自分の声が、その姿が、目の前に見える気がした。

“コロニス、ごめんなさい”

何度もそう言いながら泣き叫んだのではないか
再生を拒んだのではないか
彼女の元へ行こうとしたのではないか
同じ罪を背負えないことを嘆いたのではないか

『あなたは全ての記憶を消さなければ、再生を拒み、銀河星系を歪めてでもコロニスという人の元へ行くと言いました』
レイは膝から崩れ落ち、記憶を消した本当の理由を思い出した。
コロニスに何があったのかは、やはり何も思い出せない。彼女と過ごした日々があるはずなのに、思い出せないし、思い出したくはない。想いだしてしまうと、生きて行けなくなる気がした。
自分が、かつてのマーズが、愛を失った新しい世界を生きなければならないと悟った時に、記憶を消して、何もかもをなかったことにするしか、残された道がなかったのだろう。
待ちわびていると言うことを知りながら、そこへ行けないことに苦しみながら。
『いつか、あなたに会えると信じて……本当に待ちわび続けたのですね』
「地球に……人として、私の前に現れました」
『どうしてそう言うことができたのか、私にもわかりません。送り出した時は、小さな星の塊だったはず。でも、そうね、きっと、”愛“というものが彼女にそれほどの力を与えたのでしょう。神が敵わぬものがあるとすれば、それだけです』



「もう……私の半神は……」



会いたい
何も知らずに嘘を吐いて見送ったコロニスに
長い間待たせたコロニスに
転生を拒んでまで
マーズを愛し続けたコロニスに



『星の使命を終え、長い眠りにつき、星の欠片も残ることはないでしょう』



「……会えないのね」



あなたは私の半神だったのに


『あなたはどうしますか?あなたは何度ここに来ても再生の道しかありません。それがあなたの星の宿命です。ですがあなたが望むのなら、記憶を消し去ることは認めましょう』


火野レイの記憶を消して欲しい
待ちわび続けていたコロニスを殺してしまった記憶を
愛してくれた人を犠牲にして、過ちを背負ってまで、生きてきた過去を
だけど、生きなければならないことが宿命だとしたら


もう何もかもを……

だけど………

「私がまた、記憶を消してしまったら……コロニスが私を愛していたと言う事実も全て消えてしまうのでしょう」
『事実は消えません。あなたの中から記憶が消されるだけです』
「…………私は……私は……」

事実は消えない
それでも


『私の姿が鏡に映し出されるとき、私はあなたを想い出すのね』


右の掌に温かさを感じた
コロニスの星砂を握りしめていた掌

最期に握りしめた愛の幻
もう、永遠に会えない半神





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Date:2014/08/15
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