【緋彩の瞳】 一緒に……①

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

一緒に……①

友情です。NOT LOVE 単発



「どこにいるのよ?」
久しぶりにクラウンに行くと、うさぎの悲鳴とまことの驚きの声だけだった。いるだろうと思っていた肝心のレイがいない。
『今?亜美ちゃんと遊んでる。何か用でも?』
「クラウンにいるんだけど」
遊んでるって何。電話口で問いただそうとするのを思いとどまったのは、“愛野美奈子~!”と悲鳴を上げて腕を放さないうさぎがいるからだ。
『めずらしいじゃない』
「ちょっと、こっちに来てよ」
『なんでよ。言ったでしょ、亜美ちゃんと遊んでるって』
「いいから来なさいよ」
『なんで命令されなきゃいけないのよ』
むっとした声のあと、ぶちっと切られた。
「ちょっと!…」
「美奈子ちゃん、ね~誰に電話掛けてるの?カラオケしようよ!カラオケ!ねぇ、歌って!セ・ラ・ヴィ歌って~!」
掛け直しても、出る気配がない。腕にまとわりつくうさぎの嬉しそうな顔と、うさぎの言葉にうなずいて期待ランランと言う感じのまこと。
「……2人とも、いい加減に私に慣れて欲しいんだけど」
「や~、そりゃ愛野美奈子は私たちの仲間だけど、でもほら、やっぱりアイドルだし……ねぇ、まこちゃん!」
「う、うん。いや、仲間!仲間だよ!その、仲間として、カラオケしよう」
わかってないじゃない。
理性と知性はどこへ行ってるの。2人きりで、どこで何しているのかしら。
「……どうしたの、美奈子ちゃん?」
イライラしていつの間にか作っていた握りこぶしを、うさぎがそっと両手で包んでくれた。ファンサービスをするような笑みを作り、何でもないって応えてみせる。
「ねぇ、レイと亜美は?いつもみんなでここにいるんじゃないの?」
押しつけられたマイク。背中を押されてステージに強制的に立たされてしまう。
「あ~、レイと亜美ちゃんは仲いいから、よく2人で出かけたりするんだ。今日もどこかに遊びに行くって言ってたよ」
まことは椅子を引っ張ってきて、間近に置いた。うさぎはカラオケで選曲に夢中で美奈子の質問なんて聞いちゃいない。
「……何よ、レイ…せっかく私がいるのに、亜美の方がいいってこと?」
曲のイントロが始まると、うさぎがジャンプしながら拍手する。こうなったらもぅ、歌いきるしかないらしい。
「美奈子ちゃん、マイクのスイッチ入ってるから」
呟いたセリフは、まことにだけ聞こえていて、興奮しているうさぎには届いていないようだった。



「欲しい本は見つかった?」
「うん」
大きなショッピングモールに亜美ちゃんと2人で遊びに来ていた。目的はそこにある大きな本屋さんで、亜美ちゃんの欲しい本を探すためだ。何やら難しい問題集らしい。
「よかったわね」
「ありがとう、レイちゃん」
「いいのいいの。次、どこ行こうか?」
「せっかくだし、雑貨とか見て回らない?クラウンで使うコップとか、新しいものとか、ちょっと見てみたいかな」
「いいわね。賛成」
レイは亜美ちゃんの腕を取って、スキップする勢いで一番近くの雑貨屋に入った。店内のBGMが愛野美奈子のセ・ラ・ヴィだ。さっきの電話は一体何だったんだろう。クラウンにいるからって何でレイが行かなきゃいけないのか、意味がわからない。
「レイちゃん、見て見て~」
うさぎが好きそうなピンクのグラスを手にとって亜美ちゃんが笑う。レイは同じ形の色違いを手にした。偶然、黄色だった。
「全員分、揃えましょうか」
「そうね」
緑、青、赤。重ねたグラスを持って、レジに向かう途中、面白い形のストローを見つけた。耳にかけてメガネみたいになる長いストロー。
「見て、亜美ちゃん。うさぎに買って帰る?」
「あ、きっと喜ぶ」
想像するだけで、笑いがこみあげそうになる。クラウンの中で使うものは、みんなでお金を出し合っているけれど、レイが一番たくさん出している。パパは嫌いだけど、お小遣いだけはたくさんくれるし、特にうさぎみたいにお菓子やらアイドルのグッズやらにお金を使わないので、これくらいしか買いたいと思うこともない。
「他に何見ようか?」
今度は亜美ちゃんが腕を取って来た。
「新しいクッションとかは?写真立ても増やしたいわよね」
「賛成。あ、帰りにプリクラ撮らない?この前、うさぎちゃんと2人でやったんだけど、やっと機械の使い方がわかったから」
機械音痴のレイには使いこなせないけれど、亜美ちゃんがいうのなら、信じても大丈夫だろう。
「いいわよ」
2人であちこちのお店に入って、両手いっぱいの雑貨を買う。それは全部、クラウンで使うもの。仲間のための買い物。敵を倒しても、仲間としてあの場所に集うことをずっと続けたいと思う。同じように独りぼっちだった亜美ちゃんも、きっとそう思っているはず。それに、塾や模擬試験がない日はこうやって一緒に遊んでくれる。レイにとってはまこともそうだけど、痛みを分かち合える大切な友達だ。
「あ、電話」
ひと通り買いたいものを買い込んで、近くのゲームセンターへと向かう途中、亜美ちゃんの携帯電話が鳴った。レイは美奈子が何度か掛けてきて、しつこいから電源を切っていた。
「……あ…」
「誰?」
「うん……私に掛けるなんて、珍しい人から、かな」
気まずそうに言いながら、亜美ちゃんが通話ボタンを押す。
「どうしたの、美奈子ちゃん?」

あの馬鹿……


電話の向こう側で、何やら怒っているらしい。レイが電話に出ないからだろうけれど、亜美ちゃんに怒ってどうするんだろう。邪魔するなっていう想いで、電話を切ったというのに。

「レイちゃん、美奈子ちゃんが代わってって」
「………まったく」
受け取った電話を耳に押し当てると、美奈子の曲を歌ううさぎの声がBGMにされていた。
『レイ』
「何よ。そっちに行くのはまだもう少し後になるんだけど?」
『何時になるのよ?』
「さぁね……17時過ぎくらいかな」
今は16時を回ったところだ。クラウン近くまで戻って、プリクラを取って、今日は亜美ちゃんと一緒にまことの家でごはんを食べる約束もしているから、ついでに食材でも買おうかと話を切り出そうとしていたところ。
『遅いわよ』
「いや、だから今日は最初からそのつもりだったんだもの。来るなら、昨日そう言えばよかったじゃない」
頼んでもいないのに、美奈子はやたら毎日電話をかけてきて、仕事のこととか、学校のこととか、報告してくる。別に嫌じゃないからいつも話を聞いているし、レイの日常のことを聞かれたら答えるし。でも、今日の予定なんて聞いてこなかったのに。
『クラウンに行けばいると思ったんだもの。レイはいつもクラウンにいた、って話しばっかりだったし。オフのときにアイドルさせられるのも、疲れてきたんだけど』
うさぎのお守りを嫌がるとは。あれだけプリンセス命だったくせに。レイは聞こえるようにため息を吐いて、亜美ちゃんと顔を見合わせた。
「わかったから。できるだけ早く行くわ」
『30分以内よ』
うさぎが“美奈子ちゃ~ん!”って黄色い声をあげているのが聞こえてくる。
「はいはい、なるべくね」
レイは電話を切って亜美ちゃんに返した。まったく、うさぎもまことも愛野美奈子の何が好きなんだか。
「美奈子ちゃん、クラウンにいるの?」
「そうみたい。うさぎのお守りが嫌だから、早く帰って来いって」
「それって…たぶん、レイちゃんに会いたいって意味だと思うよ?」
「はぁ、なんで?」
そんなこと、一言も言われてないし。腕時計を確認して、クラウンへ行く前にせめてプリクラを撮っておきたい。亜美ちゃんの腕を掴んで急ぎ足でゲーセンへと向きを変えた。
「とりあえず、あんまり遅くなると美奈子がうるさいし、後でネチネチしつこいから、プリクラ撮ったら、クラウンに行きましょう」
「うん、そうだね」
「まったく、うさぎも美奈子は仲間なんだから、いい加減に落ち着いたらいいのに」
まことも止めたりしないだろう。昔から、入院している病院に忍び込もうとしたり、サイン入りのグッズ欲しさに何やら仮装したり。無駄な時間を過ごしてばかりだと思う。
「うさぎちゃん、大ファンだもんね」
亜美ちゃんは愛野美奈子にさほど興味はなかったから、美奈子が傍にいても特に悲鳴を上げたりしない。

スタスタ歩いて、大急ぎでゲームセンターに入ると、女子高生や中学生たちが沢山いて、10台以上あるプリクラの機械から足だけが見えていた。
「私が知っている機械はひとつだけだから、それでもいい?」
「いいわよ、何でも」
亜美ちゃんに案内されて、中に入る。100円玉を入れて機械から可愛い女の子の声がして、なにやら選択ボタンを押して。
「うん、撮れるよ」
亜美ちゃんがOKサインを出すから、レイは亜美ちゃんと身体を密着させて画面に向かって笑って見せた。いろんな角度から撮ることができて、何パターンも撮影して、機械音痴のレイはフレーム選択だの文字入れだのを全部亜美ちゃんに任せて、シールが出てくるのを待ちわびる。
こういうことが楽しいって言うより、仲間と…友達と遊ぶっていうことが楽しいと思う。プリクラに興味があるわけじゃなくて、楽しいっていう想い出が残せることが嬉しい。だから、前は撮られることが苦手だった写真も、今は仲間となら撮ってもいいって思える。
「急ごうか。美奈子ちゃんもきっと、待ちわびてるよ」
「そうね」
会ったら会ったで、何か文句を言われそうなんだけど。行かない方が後でもっと大変なことになるのはわかる。
両手いっぱいの雑貨を抱えて、レイと亜美ちゃんはクラウンへと向かった。



関連記事

*    *    *

Information

Date:2014/08/21
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/293-d54e0886
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)