【緋彩の瞳】 一緒に……③

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

一緒に……③

「温かいうちに食べましょう」
カップルがやたら多いベイサイド公園の中は、ライトアップされた観覧車を眺めるにはきっと、凄くロマンチックなデートポイントなんだろう。よくわからないけれど。レイは空いているベンチに腰を下ろして、美奈子との間にハンバーガーの紙袋を置いて、フィッシュバーガーとチキンバーガー、ポテトを取り出した。
「どっちがいい?」
「レイは?」
「うーん、どっちもいいなって思ったから買ったのよね。美奈子が選んで」
と言われても、美奈子もどっちでもいいし、どっちも食べてみたい。
「……買った方が先に選んで」
「じゃ、半分ずつしよう」
「どうやって切るわけ?」
「半分くらい食べたなって思ったら、交換すればいいわよ」

……間接キスじゃない。

当然、と言わんばかりにレイは言いきって、それからフィッシュバーガーを手にして袋を開いて一口食べてしまった。
「レイは…いつも、亜美たちとそんな風に交換し合うわけ?」
「うーん、するかも。うさぎは油断するとたくさん食べられるのよね。もう慣れたけど」
「……へぇ」
チキンバーガーの紙袋を広げて、口に入れる。ほのかな照り焼きっぽいソースの味。
「おいしい」
「そうでしょ?まことが勧めるところって、外れがないのよね」
コンクリートに打ち付ける波なんて、耳をすませるほどの価値でもないし、潮風というような海の香りもしない都会だけど、気持ちいい風が吹いて、こうやって外で夜にのんびりするなんて、初めてかもしれない。
「レイ、いつも誰かと遊んでるの?」
「神社の手伝いがない時はね。だって、友達ってあの子たちしかいないもの」
美奈子はその中には入っていない。入れないんだろう、きっと。
「……私、前世とかいらないし、今のために戦ってきたって思ってるけれど、ひとつだけ感謝しているのは、みんなに出会えたことだって思うのよね。地球がどうとか、月の王国とか、そういうことより、目の前の仲間のために戦わなきゃって思った。亜美ちゃん達は、私を孤独から救ってくれたから」
美奈子は、ヴィーナスは、最初から最期までプリンセスのためと思っていたのか。月の王国のためだったのか、それとも今の地球のためだったのか。

……何を守ろうと思っていただろうか。

そういえば、レイと戦う目的が違うって喧嘩になったこともあった。
前世の記憶がないから、レイはのんきなことを言えるのだと腹を立てた記憶は新しい。
「………仲間のため、ね」
「うさぎと私は友達だから。友達を助けたいって言う単純な気持ちよ。プリンセスとか知らないもの」
「あんなでもさ、前世ではもうちょっと、ちゃんとしていたのよ?」
紅茶で喉を潤しながら、どうしてプリンセスはあんなミーハーで、ドジで、おバカになったのかと嘆いた。マーズは前世の頃からそれほど変わらないような気もするけれど。というか、いつも何をするにもマーズは一緒だった。彼女とは一心同体だった。
「……でも、あれはあれで、いいところあるんだからさ。友達思いだし、誰にでも優しいし」
「レイもうさぎに甘いものね」
うさぎのために、あれこれ買ってきていた。クッションを抱きしめたうさぎの嬉しそうな顔をみつめるその瞳は、とても優しい色だった。
あんな風にレイに見つめられるうさぎがうらやましいって思うくらい。
「そう言うつもりはないんだけど」
レイは半分くらいになったフィッシュバーガーを美奈子に渡してくれた。
美奈子も半分になったチキンバーガーをレイに渡す。
「…………仲間って、いいよね。私、1人で戦ってきたから。友達とか欲しいって思わなかったし、どうせ死ぬからそう言う存在はいない方がいいって思っていた。仕事してるから、今更友達を作るっていうのも、なんていうか、信頼していいのかわからないし」
レイが半分食べたフィッシュバーガーは、さっきと違う味で、これはこれでおいしいって思えた。半分貰って正解。
「美奈子は生きてるでしょ」
レイに帽子を奪われた。日も落ちて、辺りは観覧車の光と街灯でぼんやりとしている。美奈子は奪い返すことはせずに、その帽子を受け取って鞄の中に入れた。
「もう、死ぬのはごめんだわ」
「やめてよ。もう、仲間を失って泣くのはごめんだわ」
「………泣いたんだ」
「そりゃ、泣くわよ。美奈子だって、私が死んだら泣いてくれるでしょ?」
レイが死ぬとか想像できない。きっと、気が狂ってしまうかもしれない。
想像したくもない。
「何よ、泣かないとかいうわけ?」
黙り込んだつもりもないのに、レイがふてくされた声で確認をとってくる。
「泣いて欲しい?」
「はぁ?頼まなくたって、美奈子はきっと大泣きするわよ」
「………演技してあげる」
「はいはい」
間接キスはタルタルソースのフィッシュバーガーの味だった。別にキスしたわけじゃないから、味とかどうでもいいのに何考えているのって、自分で自分に突っ込みたくなる。
目の前の通りは腕を組んだカップルばかりが通り過ぎて、ピンク色のネオンがチカチカしているのかと思うくらいだった。
「ねぇ、レイ」
「ん?」
「観覧車乗りたい」
このままぼんやりと風に涼んでいるのも悪いわけじゃない。でも、やっぱり人がいる場所はちょっと落ち着けない。みんな恋人に夢中だろうから、愛野美奈子がここにいるとかはどうでもいいんだろうって思うんだけど。
「何?センチメンタル?」
「別に。なんとなく、乗りたくなっただけ」
「……ふーん。いいわよ」
レイは何か探る様に美奈子の顔を覗きこんで、それから最後の一口を放り込んだ。

「帽子被らないんだ」
「暗いから、まぁ、いいかなって」
「そう」
少しだけ観覧車に乗るために並んで、美奈子がチケットを買った。
「おごってくれるんでしょ?」
「……なんか言い方がムカつく」
「何よ。誘ったんだから出しなさいよ」
最初からそのつもりだったけれど、なんだか当然みたいな言い方のレイ。あんまり言い返したりしていると、周りからの視線も集まるだろうし、黙って係りの人に2人分のチケットを渡して、4人くらい余裕で入れるゴンドラに乗り込んだ。

レイが最初に乗り込んで、美奈子は向かいに座った。
「あ、こっちじゃダメだわ」
上がり始めてもないのに、レイがすぐに美奈子の横に来るから心臓が跳ねた。何事かって思った。別にこれくらいの距離は珍しいっていうわけじゃないけれど、なんていうか、なんというか…
「な、何?」
「だって、景色が見えないじゃない?」
「あぁ…そういえばそうね」
確かにビルばかりしか見えない方を向いているよりは、海の方が綺麗だろうけれど。


……
………

「美奈子」
いざ、密室に2人きりになって会話が思いつかない事態になった。美奈子は心の中でどうしようかと悩んでいると、いきなりレイが名前を呼ぶから、また心臓が跳ねた。

本当、身体に悪い。

「いつもみたいに、日記みたいな報告はしないの?」
「…いつも?日記?」
「電話で話してるような」
毎日、何となくレイに電話してしまう。なんていうか、忘れ去られたくないような想いがある。亜美やまこと、うさぎみたいに毎日でも会えるような関係じゃない分、レイだけはわかっていて欲しいっていう、甘えみたいなものがある。
「あぁ。今日は普通に学校に行って授業受けて、家に帰って服を着替えて、クラウンに行ったわ」
「今日の放課後が暇になるなら、昨日言えばよかったのに」
「本当は新しい曲の打ち合わせの予定だったんだけど、日程が変更になったの」
まっすぐ家に帰ったものの、何もやることがなくて、クラウンに行ってしまった。レイに電話すればよかったと今になれば思う。でも、電話をしたところで、レイは亜美と遊ぶ約束を反故にしたりしないだろう。よくて3人で遊ぼうってなるだろう。
それは美奈子がしたいことじゃないような気もする。

……なんで、レイを独占したいって思うんだろう。


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Date:2014/08/21
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