【緋彩の瞳】 一緒に……END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

一緒に……END

「そっか。まぁ、これからもたまにはクラウンに来たら?うさぎたちも喜ぶわ」
「……うん。いいよね、あぁ言う感じ。カラオケさせられるのはちょっと嫌だけど、でも、仲間でワイワイするのって……なんか、いいなって思う」
1人でいなければいけなかったあの頃。命を捨てても守らなきゃいけないと思っていたあの頃。
守る理由が違うレイと対立して、でもレイの言っていることが今ならわかる。

仲間を守る。前世からの因縁とかじゃない。
大切な人を守りたいから。
傷つけたくないから。

「亜美ちゃんもまこともうさぎも、私にとっては失ってはいけない人たちだしね」
「……そう」
もうそれ、何度も聞いたんだけど。ことあるごとに聞かされている。
まことの家に泊まったとか、亜美と図書館に行ったとか、うさぎの買い物に付き合わされた、とか。レイの日記報告はそんなのばっかり。
「”私は?“って顔してる。声に出したら?」
景色を見たいと言ったわりに、レイは美奈子の顔をニヤニヤして見つめてくる。
「…………ムカつく」
「素直じゃないわね」
「別に」
「……本当に素直じゃないわね」
レイの“してやったり”な顔。プリクラに写っていたあの笑顔と全然違う。
あんな風に笑うことが許される平和な世界なんだって、ホッとしている気持ちもあるのに。
美奈子にも見せてくれてもいいのに。
「美奈子だって、私の大切な仲間だと思ってる。だから、次、勝手に死ぬようなことしたら、地獄へ落とす呪いをかけてやるわ」
そう言って、美奈子の額を人差し指でグリグリ通してきた。
「………まだ、根に持ってるわけ?」
勝手に1人で先にこの世界から消えたことを。
「持ってないとでも思ってるわけ?」
頬を膨らませて、それでも瞳は怒っているようには見えない。
「………約束する。勝手に…死にません。っていうか、もう死ねないわ」
本当に地獄へ落とす呪いをかけそう。
「なら、いいけど」
「うん。死にそうになったら、レイを道連れにする」
「勝手に1人で地獄に行けば?」
「嫌よ、1人は………暇そうだし」

寂しいという言葉をかろうじて飲み込んだ。

1人は慣れている。でも、1人じゃない喜びを知った魂はもう、孤独には耐えられない。
「素直じゃないにも程があるわよ」
夕日の落ちた海。どこからが海でどこからが空なのかがわからない。
いつの間にか、ゴンドラは頂上に来ている。
「美奈子は殺したって死ぬような人じゃないし、第一、私がいるから美奈子は1人じゃないわよ」
「………うん」
レイはとても自然な流れて、美奈子の身体を抱きしめた。久しぶりにレイにこうやって、抱きしめられた気がする。
死なないでって言われた時、病院にいた時、レイは怒った顔をして美奈子を抱きしめてくれたことがある。その時は美奈子のことを“ヴィーナス”って呼んでいた。美奈子はレイのことを“マーズ”としか呼ばなかった。名前で呼んで、情が深くなることが怖かった。美奈子としてではなく、ヴィーナスとして生きて、死ねたらいいって思ってた。美奈子として欲しいものなんて、何もないって思っていた。
ギクシャクしながらも、レイはいつも美奈子のことを心配してくれて、傍にいようとしてくれていた。嬉しい気持と、悲しませたくない気持ちがいつもせめぎ合っていて、心苦しかったあの頃。
「………レイ。私はレイの傍にいてもいいの?」
「何を今さら。毎日電話掛けてくるくせに。うさぎにバレたら、ブーイングよ」
「………だって、レイがいいんだもの」
理由なんてない。火野レイと出会ったときから、ずっとレイと言う存在が心の支えだった。
アイドルでもなく、ヴィーナスでもなく、美奈子を大切に想ってくれたのはレイだけだった。
美奈子としての人生なんていらないって思いながらも、レイが…彼女だけが美奈子を大切に思っていてくれたから。
「美奈子、相当私のことが好きね」
「…そう言うことにしといてあげる」
「ほんっと、素直じゃない!」
「………レイだって、私のこと好きでしょ?」
「当たり前よ、仲間なんだから」
そう言うことじゃない。仲間っていうか……とは言えないけど。
好きでしょ?という問いかけに、当たり前って答えられて嬉しい気持がこういう時に限って素直に反応するから。
「何、照れてんの?」
「………イチイチ、ムカつくわね」
ムカつくけれど、美奈子もレイを抱きしめ返した。照れた顔が火照っているのを見られたくなくて、顔を隠すように。
「照れ隠ししてるでしょ?」
「……ムカつく」
「今度、一緒にプリクラ撮りに行く?」

どんな反応をするか、試されているんだってわかっているのに、レイの望むような反応をしてしまっている気がする。

「行く。レイとプリクラ撮りたい」
「あら……素直になった。おもしろくない」
「レイの思い通りになんてならないわよ」
この愛野美奈子が何でもレイの思い通りになるなんて、プライドが許せない。
「……へぇ~」
何かモノ言いたげな声。絶対ニヤニヤしてるに決まってる。
ゆっくり動く観覧車も、だんだん地上へと降りてくる。美奈子はレイを抱きしめていた腕の力を抜いて、解放した。
「………プリクラ、誰にも見せちゃダメだから」
「当然でしょ。美奈子とプリクラ撮ったなんてバレたら、私がうさぎとまことに嫉妬されて、面倒なことになるもの」
「秘密だからね」
「絶対よ。あの2人、しつこいんだから」
「うん。それは知ってる」
小指を差し出すと、レイの小指がそれに絡む。生きているから、また次の約束ができる。それが嬉しい。
「じゃぁ、今度また放課後、都合がつきそうなら、前の日に電話で言うから」
「了解」
ゴンドラが地上へと降りてきた。レイと美奈子は手を繋いで観覧車から降りて、その手を離すことなく夜の街を歩いた。


どこからともなく、美奈子の曲が聞こえてくる。
レイはそれを聞きながら、ほとんど無意識に口ずさんでいた。
「へぇ。レイはこの曲知ってるんだ」
「え?あぁ…うさぎがよく聞いてるし、カラオケでも聞かされてるから」
いつのまにか、身体が美奈子の曲に馴染んでいるのは、それは間違いなくうさぎの影響。
美奈子が曲に合わせて、小さな声で歌を口ずさんでくれた。
それなりに人は歩いているけれど、みんな自分たちの愛する人の顔を見るのに夢中らしくて、ここにアイドルがいることなんて気づいていない。

楽しそうな美奈子の横顔を見ていた。
使命のためにアイドルを辞めてもいいなんて言っていたあの頃の、あの悲壮な顔よりもずっといい。アイドルをしている愛野美奈子と言う存在に興味はなかったし、今もどれくらいアイドルとして有名なのかはわからないけれど、自分の選んだ好きなことに一生懸命なキラキラした顔は、見ていて楽しいと思う。だから、好きなことを辞めてでも、使命に全てを捧げるという考えが許せなかった。前世に縛られて、今を生きようとしないことが、悲しいと思った。
「何?」
「別に……美奈子、楽しそうだなって」
繋がれた手を引っ張りあいながら、別れ道ではその繋いだ手を解いて、ハイタッチをした。
「じゃぁね。また、明日電話する」
「うん。また、明日ね」
一度振り返って手を振った美奈子にレイも笑顔で手を振り返す。

いつものように。
亜美ちゃんたちとバイバイって手を振るのと変わらない。

いつものように。

だけど、レイはいつもと違って、美奈子の姿が完全に見えなくなるまで見送った。
今更ながら、美奈子がちゃんと生きていて、約束をしあえるこの幸せが心地いいと思った。




実写はよい↓
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Date:2014/08/21
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