【緋彩の瞳】 「友達」でも油断しないで

緋彩の瞳

みちる&レイ小説[幼馴染]

「友達」でも油断しないで

◆嫉妬まじりの恋のお題
「恋したくなるお題」からいただきました。



「ねぇ、レイ」
丁寧に爪を磨く友人は、視線をあげずに名前を呼ぶ。今のレイの正しい位置は、

ヴァイオリニストの爪>幼馴染

「んー?」
別に爪ごときになんて嫉妬しない。レイだってソファーに寝転がって分厚い小説を広げているわけだし。視線だって上から下に行ったり来たりしているわけだし。
「あなた最近、忙しそうにしているわね?」
「そうかしら?だったらここでこんなことしていないけれど」
「そうじゃないわよ」
シュ、シュ、シュ。細かい作業の音は止まらない。
レイもまだ、文章を追いかける目の動きは止めない。
「じゃ、どういう意味?」
「恋愛でもしているの?」
そこで、レイの視線は小説からみちるへと向きを変えた。
でも、彼女の視線はまだ、爪へと注がれたまま。まだ、立場は逆転ならず。
「恋愛?どういう根拠なのよ」
「あら、反応するのね。心当たりでも?」
「あると思う?男に興味ないわよ」
小説だって恋愛小説を読んでいるわけじゃないし。レイはわかっていても小説のタイトルを思わず確認してしまう。
「あら、恋なんて性別はたいした問題じゃないでしょ?」
ふふ。
彼女はつめを磨きながら小さく微笑んだ。時々、いや結構頻繁にこの海王みちるという人間がわからなくなる。でも、まぁそういうところも嫌いにはなれないけれど。
「…何が言いたいの?」
シュ、シュ、シュ。ある程度綺麗になったのだろう、みちるはヤスリをひざの上において、それから“パー”にして爪が見えるようにレイの目の前にかざした。
「綺麗でしょ?」
「綺麗ね」
その確認はみちるがヴァイオリンを始めたときから続けられてきた二人で行う作業。みちるはレイの一言がないとダメなのだ。
「あの子も、こんな風に綺麗にしてる?」
「あの子?」
誰のこと?レイは眉をハの字にして続きを求める。
みちるは意地悪く笑う。レイは黙って答えを求めた。
「赤いリボンの子」
みちるがレイに逆らえないことを知っている。黙って、じっと瞳を見つめていれば折れることくらいわかっている。
「美奈?」
「そう、美奈っていう子なの。仲良しなのね」
みちるの声は嫉妬が含まれていた。

今、間違いなくヴァイオリニストの爪>レイは、記号が逆転した感じだ。

「仲のいいお友達よ」
「それだけ?」
「えぇ、でもみちる。油断しないほうがいいかもしれないわね」
レイはみちるの愛用しているヤスリを手にして宙に軽く放り投げた。小さく回転したそれは、すぐにレイの手元に戻ってくる。
「油断?」
「そう。仲のいいお友達の美奈>幼馴染のみちるにならないように」
「…浮気ものね」
「さぁ?どうかしら?」
何事もなかったようにまた小説へと視線を落とす。けれどその視線の先にあるのは、読むことを邪魔する綺麗な手の甲。爪が艶めいている。
「何?」
「……」
「邪魔よ。続きが気になるわ」
「私だって、続きが気になるわ」
「何の?恋愛小説?」
レイの視線から逃れようと広い部屋を泳ぐ瞳は、捕まらないようにとレイの背中に顔ごと隠れた。



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Date:2014/08/23
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