【緋彩の瞳】 たとえ相手が子供でも

緋彩の瞳

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その他・小説

たとえ相手が子供でも

◆嫉妬まじりの恋のお題
「恋したくなるお題」からいただきました。




「ネプ、抱っこして」
ドレスの腰の部分より少し低いところを引っ張るかわいいプリンセスは、ネプチューンをとても困らせる。
「もぅ、……マーズったら」
食べちゃいたいくらいの白いほっぺた、撫でても撫でても指の間をすっと通り過ぎる綺麗な髪、ネプチューンしか映らない小さな瞳に、首にまとわりついてくる細い腕。
「ネプ」
そして、鼻をくすぐる幼い匂い。
抱き上げるたびに、ほんの少しずつ成長を感じる。
「マーズ、お休みのときは一人で眠るお約束はどこへ行っちゃったの?」
だけど、ちっとも成長しないところもある。でも、なんていうか成長して欲しくない気もしてしまうのだけれど。
「ん~、寒いからネプと寝るぅ」
アクアマリンの髪に頬をこすりつけ、小さくて冷たい鼻先で頬を撫でてくる。眠そうな声でそう言われると、だめよとは言えないのはなぜなのかしら。
「もぅ…仕方ないわね」
隣の星のウラヌスは、スパルタ教育でヴィーナスのお守りをしているとかいう噂だけれど。
「ネプ、抱っこしたまま寝てくれる?」
もう抱っこしてしまっているのだから、別々のベッドで眠りたくても今度はネプチューンの心がそれを許してくれない。
「えぇ……。その代わり今日だけよ」
今日だけ、今日だけ、と言って結局いまだ一度もマーズを一人で寝かしつけたことがないのは、ウラヌスには秘密だ。
「ねぷ、温かいからずっと一緒に寝る」
抱きついた力は幼いにもかかわらず、胸を圧迫して苦しくさせるくらいで。
「……駄目ね、私ってば」
だけど、下がった目じりは自分自身にカツを入れるつもりなんて全然なかった。


「ほぅ。で、僕を見習いたいと?」
剣術の習得を目的とされたプリンセス・ヴィーナスの育成担当をしているウラヌスは、散々マーズが可愛いだの愛しいだのと聞かされながら、やってられないと腕を組んだ。遊びに来ておとなしくイスに座っているはずもないヴィーナスは、もうとっくにウラヌスの傍から離れている。
「これじゃぁ、私、マーズの育成担当を降ろされそうよ。クイーンにお叱りを受けるわ」
「だろうな、まったく。僕はヴィーナスをスパルタ式に厳しく育てていると言うのに、そっちは一人で眠れないんじゃなぁ」
仲良くパレス内にある静かな海で、小さなマーズとヴィーナスは水を掛けあって遊んでいた。一方的に水を掛けられているヴィーナスを見ている限り、とても厳しく育てられているようには見えない。むしろ、この年齢ですでにマーズの尻に敷かれているのではないかと思うくらい。
「ウラヌスは、ヴィーナスをどうやって寝かしつけているの?」
ネプチューンは視線だけはマーズから放さずにウラヌスに教育方針とやらを尋ねた。自分がクイーンからお叱りを受けることが怖いのではなく、さすがにマーズの心がいつまでも甘えたでは、今後、月の王国を担う戦士をしての役目を果たすことが厳しくなってくるからという理由で。
「そりゃ、泣いても僕は抱っこしないからな。泣きやんで寝るまで、知らんぷりだ」
「知らんぷりねぇ」
マーズに髪を引っ張られて、水を掛けられて、何もないところで勝手に転んでいるヴィーナスをちゃんと目で追いかけているのが、ネプチューンにばれていないと思っているらしい。
「そうだ、“知らんぷり”だ。大体、君は甘すぎるんだ。ちょっと熱を出しただの、手を切っただのと、何かあるとトリトンキャッスルでは大騒ぎなんだろう?」
「あら、ヴィーナスとかくれんぼをしているときに行方不明になったとかって、非常事態宣言しかけたウラヌスに言われたくないわ」
あぁいえば、こういう。こういえば、あぁいう。

「ウラヌス~」
勝手に自分で転んで大泣きしながら、ヴィーナスがこちらに向かって走ってきた。
思わず両手を出して迎えそうになるのを、ネプチューンは見逃さなかった。
「あら、ウラヌスは知らんぷりでしょう?」
自分では気がついていないのだろうが、しっかりと目じりが垂れ下がっている。ネプチューンはやっぱりこの子たちの可愛さには誰もがノックダウンなのだから仕方がないと思うしかないと感じてしまう。
「そ、そうさ。知らんぷりさ」
出しかけた腕を慌てて引っ込めて、また腕を組んで見せるところはなるほど、彼女なりに我慢をしようとしているのが伺える。たんなる見栄かもしれないけれど。
「ウラヌス!ウラヌス~~!!」
ウラヌスにたどり着いたヴィーナスは抱っこしろ、抱っこしろ!と言わんばかりに両手を挙げてジャンプをしている。ネプチューンならその仕草だけで、たとえマーズじゃなくても抱き上げてしまいそうになる。
「…し、知らんぷりさ」
「私、何も聞いていなくてよ?」
「そ、そうか?」
抱っこをしようとしないウラヌスを見上げ、ヴィーナスは両頬にいっぱいの空気を溜めた。
「あら、可愛い」
そっぽ向いて自分の弱さと戦うウラヌス。結局ウラヌスだって、ネプチューンと同類らしいけれど、一応がんばるところは見習わなくてはならない。
「ネプ、抱っこ」
「あら、マーズ。こんなに濡れて。風邪を引いてしまうわよ」
ヴィーナスより遅れてマーズがネプチューンの元へとやってきた。もちろん、ネプチューンはちゃんとその一部始終を見ていたのだけれど。
「卑怯だぞ!」
ヴィーナスと遊んで海水で髪を濡らしたマーズを抱き上げてひざに乗せた瞬間、ヴィーナスを
“知らんぷりの振り”していたウラヌスが立ち上がって叫んだ。
「何なの?」
テーブルをバン!と叩いてネプチューンのことを注意する声。ネプチューンは笑いそうになったけれど、それより先にマーズがその声にびっくりして泣き始めてしまった。
「ウラヌスたら。もう…おとなげないわ」
よしよし、と頭を撫でてあやしても、甘えん坊ちゃんはまだびーびーと泣きやまない。
「どっちが、だ。ずいぶん君のところのプリンセスは泣き虫じゃないか」
それよりも、なぜヴィーナスが足にまとわりついているのを見るまいと必死に上を向いている説明をしてもらいたいものだと、ネプチューンは思った。
「ウラヌス、マーズ泣かしたの?」
ところが、ヴィーナスは抱っこ攻撃から一転、泣き始めてしまったマーズにびっくりしてウラヌスを問い詰めにかかった。
「ち、違うよ。勝手に泣いたんだ」
「マーズ泣かせた!ウラヌスが泣かせた~~!!!」
駄々をこねるように地団駄踏んで、ウラヌスを責めるヴィーナスに、突っ張っていたはずの態度があっという間に消えてなくなっていく。
「ち、違うよ。ハニー、僕はそんなに悪じゃないさ」
「マーズ泣かせたぁぁ!!ウラヌス嫌いぃ!」
ネプチューンに見せていた、自称スパルタ式とやらは今どこへ。ご機嫌伺いに抱っこしようにも、嫌がられる始末。
「ねぷちーん、マーズ泣きやまないの?」
さっきは抱こうとしなかったのに、両手を差し出して抱き上げようとするウラヌスを願い下げだと言わんばかりに、ヴィーナスはネプチューンのひざによじ登って、抱っこされたマーズを覗き込んできた。
「ウラヌスがいじめるからよ、ヴィーナス」
ちびっ子二人をひざの上に乗せたネプチューンはバランスを取り、ここぞとばかりにウラヌスを責めてみる。戦いとかで強いウラヌスは好きだが、へたれているウラヌスもそれはそれで好きだけれど、自分以上にヴィーナスに振り回されているウラヌスは正直言うとがっかりする。
「マーズ、マーズ」
さっきまではウラヌスに抱っこをねだっていたヴィーナスは、泣いているマーズを慰めようと、ネプチューンの真似をするように、マーズの背中に抱きついた。
「あら、可愛いことしてくれるのね」
微笑ましいこと。マーズは誰からも愛されているのね、と思って笑顔を見せていたネプチューンが、次の瞬間固まってしまった。

ちぅ。


愛くるしいマーズの頬をまるでいつもやっているといわんばかりに手馴れたようにキスをするヴィーナス。

「こら!!!!!!!」

慌ててヴィーナスをマーズから引き離したウラヌスと

「駄目よ!」

慌てて立ち上がってマーズをヴィーナスから引き離すネプチューン。

ちびっこたちは、何がなんだかわからずに。

「「ぅわぁ~~~~ん!」」

「あぁ、よしよしマーズ」
「あぁ、ごめんごめん、ヴィーナス」
でも、自分以外の人間とちゅうをするなんて許せないネプチューンとウラヌスは、今後しばらくお互いのちびっ子たちを会わせずにいたとか。

でも、結局はマーズとヴィーナスは月の王国では“仲良し”になったとか、ならないとか。


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Date:2014/08/23
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