【緋彩の瞳】 優しさ小さじ1杯 END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

優しさ小さじ1杯 END

次の日の夜。
うさぎが呼びだした18時を30分過ぎている。
「亜美ちゃん、うさぎは本当にここに来るように言ったの?」
こんな時間から3人を呼びだす事情って何だろうか。誰かの誕生日と言うわけでもないのに、何のサプライズをするつもりなのだろう。
「あの…うん。もうちょっと待ってみよう」
「電話したら?」
「さっきしたんだけど、繋がらなかったんだ」
「はぁ?」
「レイ、とりあえずさ、うさぎは遅刻する性格だし、待ってみようよ」
穏便にしておきたいというまことの気遣いはありがたいが、外でパフェ食べて時間つぶしなんて、
無駄で仕方がない。
「亜美ちゃん、これは本当にうさぎが言いだしたの?」
「そう聞いてる。ミオちゃんが言っていたから」
「そのミオって言う子はうさぎを陥れてるんでしょ?疑った方が良くない?」
「でも……そうかもしれないけれど……」
亜美ちゃんはうさぎが絡んでいるせいなのか、信じたい気持ちが強いのかもしれない。
「ちょっと、電話してくる」
ヴィーナスが気になるという黒木ミオが何か動いているのだろうか。ルナに電話をかけて見た。
「ルナ。うさぎ知らない?黒木ミオと一緒じゃない?」
『レイちゃん。うさぎちゃんと黒木ミオは一緒にいるけれど、なんだか愛野美奈子がプライベートライブをやる、とかで。港公園にクラスメイトを集めているわ』
「……何それ?聞いてないわよ」
昨日の電話でヴィーナスはそんなことは言ってなかった。そんな重要な情報をレイに教えないわけがない。ライブをする?うさぎのクラスメイトを集めて?
誰が主催しているのだろう。
『うーん。なんだか、うさぎちゃんが愛野美奈子にお願いをして、ライブをやるって言う表向きで、でも実際は黒木ミオが愛野美奈子に頼んだらしいわよ』
「……いや、それおかしくない?愛野美奈子がライバルにお願いされて、ライブするなんて」
『でも、そういう話しらしいわ。ただ、18時からなんだけど、まだ愛野美奈子が姿を現さないらしいの。クラスメイトがブーイングを始めているわ』
「………もしかして」
レイはルナとの電話を切って、着信履歴のボタンを押した。“愛野美奈子”がズラリと並んでいる。


「……仕方ないわよね」
誰に言い訳しているのかって自分で突っ込みながら、愛野美奈子の番号に掛けた。
『マーズ。何?!』
心なしか、声が弾んでいるような気がしたけど、何か面白いことをしている途中だったのだろうか。
「ちょっと、あなた」
『何よ?なんでそんな怒った声なのよ』
「うさぎが18時から愛野美奈子のプライベートライブをやるって、ずーっと港公園のステージで待ってるらしいけど。何してんのよ?どこにいるのよ?」
『え?……何の話?』
何もうさぎから聞かされてないのだろうか。ヴィーナスの声は、レイが言っている言葉の意味が全く分かっていないようだ。
「黒木ミオからお願いされてないの?今日、港公園にあるステージで、愛野美奈子のプライベートライブをしてほしいって」
『黒木ミオが?言っている意味がわからないけれど……』
「表向きはうさぎが主催して、うさぎが愛野美奈子を呼んだって言うことになっているみたいよ。うさぎのクラスメイトが集まって、ずーっと待ってるって。いいの?もう45分も過ぎてるのに」
これじゃぁ、愛野美奈子はドタキャンアイドルのレッテルをはられ、うさぎはクラスメイトからウソツキ呼ばわりされるだろう。
『……黒木ミオ、やってくれたわね』
「まさか、あなたと黒木ミオのつまらない争いに、うさぎは利用されたの?」
『一石二鳥でプリンセスと私を貶めたいんじゃない?でも、そうはさせないわよ!』
「ちょっ!」
ぶちっと携帯電話は切られてしまった。ヴィーナスはどうするつもりだろう。
うさぎはここにいても来ることもないだろう。
黒木ミオが亜美ちゃんたちに、うさぎがここに来るようにと言ったことも嘘だということになる。
その場に亜美ちゃん達がいたら、うさぎが黒木ミオにだまされていることに気づくだろう。
「……さて、どうしたらいいかしらね」
亜美ちゃんとまことは、うさぎを信じて待っている様子だ。港公園だと、ここから走ってもちょっと距離はある。ただの学校の嫌がらせなのか、アイドル同士のいじめなのかもわからない。
「あ、レイ。うさぎにでも電話したの?」
「ううん。でも、私、もう帰りたいんだけど」
ついでに気になるから、ちょっと港公園までダッシュしたい。
「でもさ、もうちょっと待ってあげたら?」
「いや……うん。じゃぁ、あと5分だけ」
何をどう説明していこうか。レイは眉をひそめてから、ため息をひとつ吐いた。ヴィーナスに任せるのも手段だ。何やら鼻息荒くして電話を切ったし、あれは黒木ミオに一矢報いる気満々だろう。それが落ち着いたころにヴィーナスに会ってもいい。
「いや、別に会わなくてもいいし」
「えっ……レイ?なに?」
独り言が声に出て、まことに反応された。レイは咳払いをひとつして、落ち着かない心を鎮めようと、深く椅子に腰を下ろした。




「………マーズ」
「プライベートライブ、してあげたみたいね」
どんな技を使ったのかわからないけれど、30分経って港公園に駆けつけると、うさぎのクラスメイト達が口々に愛野美奈子が可愛かっただの上手だっただの、楽しそうに帰っていく姿とすれ違った。愛野美奈子のメンツも、うさぎのメンツも守り抜いたらしい。
「あの黒木ミオ、……タダものじゃないわよ」
「愛野美奈子に喧嘩を売るんだもの。確かにそうね」
「プリンセスのことも……。マーズ、プリンセスに近づく者は誰でも注意して見ておくのよ」
黒い薄手のドレス。こんな寒い季節によく平気で立っていられるものだと、レイは感心する。見ているこっちが寒い。
「だから、ちゃんと毎日連絡してるじゃない」
レイは自分のジャケットを脱いで、ヴィーナスに渡した。
「……何?」
「寒そうだから」
「別に……平気」
「いいから。身体に悪いわよ」
受け取りそうにないから、肩にかけてあげる。そんなことされると思っていなかったと言った驚いた顔。そんな、優しくない人が優しいことしたみたいな驚きはどうかと思う。
「ありが…と」
「じゃぁ、私はみんなのところに戻るわ。あと、一応、今日はありがとう。あなた自身のプライドの問題かもしれないけれど、うさぎのために駆けつけてくれたんだし。あれ、ポケットマネーなんでしょ?」
バンドを引き連れてトラックごと公園に乗り込んだことも、さっきの子たちが興奮して話をしていた。さすが芸能人はやることが大胆というか、間に合わせるには手段を選ばなかった結果なのかもしれないけど、感心してしまう。
「私のせいでプリンセスを泣かせるようなこと、したくないもの」
「そう」
ヴィーナスはレイのジャケットに腕を通して、やっぱり寒かったのだろう、ホッとするような表情をみせた。
「じゃぁね、ヴィーナス」
「うん……また」
レイはつい仲間にするように手を振って、余計な笑顔を見せてしまった。
ヴィーナスが満面の笑顔で手を振り返して、レイと同じように罰の悪そうな顔をして慌てて視線を逸らしている。

「「……ふん」」

お互いに背を向けたのに、呟いた一言まで同じだった。



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Date:2014/08/24
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