【緋彩の瞳】 Moon for you

緋彩の瞳

その他・小説

Moon for you

21時45分

塾が終わってビルから出ると、まるでその姿を見ていたようなタイミングで携帯電話が鳴った。

“火野レイ”

「もしもし?」
『あ、亜美ちゃん。今、大丈夫?お勉強していたかしら?』
「ううん。今、塾が終わって帰るところよ。どうかしたの、レイちゃん」

彼女と出会ったのは、春。
いいえ、正確にいえば亜美はレイちゃんのことをずっと前から知っていた。
時々、塾に行くバスで一緒になるTA女学院の美女。
あの頃から、同じバスになれば運がいいって思って、姿が見えないときは、バスの中をくまなく探してがっかりすることもあった。

彼女は今、亜美の大切なお友達。

『外にいるの?』
「えぇ」
『月、見える?』
「え?…月?」
『そう、お月さまよ』
レイちゃんの綺麗な声で、“お月さま”と言われて、亜美は薄闇を見上げた。
そこは高いビルの立ち並ぶ場所で、月の光はわかるけれど、月そのものが見えない。
「今は、ちょっと建物が邪魔で見えないわ」
『じゃぁ、どこか広い場所に移動できる?』
「えぇ、いいわ」


あぁ、今日は“スーパームーン”の日なのね。

亜美はレイちゃんが何を見せたいのかと言うことがすぐにわかったけれど、それを声に出さずに小走りに近くの公園を目指した。

「……綺麗。凄く眩しい光ね」
そう言えば、1カ月前にもスーパームーンの日は訪れたが、その時の天候は曇り時々雨で、月そのものが分厚い雲に覆われて、全く見えなかったのだ。
『見えた?』
「えぇ、見えたわ。眩しくて、目が痛いくらいの月の光」

受話器の向こうから漏れるホッとしたようなため息

この月の輝きの刹那を、まるでレイちゃんが演出しているようにさえ思える。
子供のような無邪気さを耳に感じて、心の奥底から嬉しい想いがこみあげてきた。

『輝きが増した頃から、ずっと1人で見ていたのよ』
「そうなの」
『でも、なんだか1人で見ていることに飽きちゃって』
「……そんな気持ちになるの、わかるわ」
『本当?誰かと一緒に夜空を見上げるのって、なんだか照れ臭いじゃない?』
レイちゃんが照れ臭いだなんて。
亜美はまばゆい月の光を浴びながら、同じ夜空を見上げる大好きな仲間の顔を心に思い浮かべた。
「本当に綺麗」
『えぇ、本当ね。亜美ちゃんに電話してよかったわ。この気持を亜美ちゃんと共有したかったから』

想いが通じ合うって、こういう感情なのね

「私が今、どれくらいこの月の美しさに感動しているか、見せてあげられないのが残念だわ」

どれくらいレイちゃんを大事に想っているのか、心を開いて見せてあげられないことも。

『大丈夫、私を誰だと思っているの?亜美ちゃんが凄く感動していることくらい、わかってるわよ』
「レイちゃん、ずるいわ」

左耳に聞こえる笑い声が亜美の全身を巡って、幸せにしてくれることが伝わればいいのに。
まばゆい光が、その輝きが、この身体を優しく包んでくれていることが伝わればいいのに。

『来年のスーパームーンは、一緒に見ましょうね』
「えぇ、約束するわ」

一つ一つの約束が、胸を躍らせる

恋と言うものがどんなものなのかわからないけれど
恋ではないものだろう


だけど、もしレイちゃんが亜美と同じように、心躍る気持ちになってくれていたら
どれだけ嬉しいだろう


亜美の祈りが月に届いて
その光がレイちゃんの瞳を輝かせてくれたら


この想いが優しく伝わればいいのに






セラクリだよ☆
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Date:2014/09/09
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