【緋彩の瞳】 I love you, but… ①

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世では恋人]

I love you, but… ①

新学期も始まり、残暑厳しい9月の午後。
レイはいつも通り学校から帰って服を着替えると、クラウンへ向かう。
部屋の設定温度を26度にして、夏前に買いこんでいたペットボトルのコーヒーを自分のグラスに注ぐ。ソファーに寝そべって買ったばかりの推理小説を開いたところで、うさぎとまこと、亜美ちゃんが3人仲良く入って来た。
「レイちゃん、レイちゃん、聞いた~?!」
うさぎは相変わらず主語を飛ばして話しかけてくる。開いたばかりの本を閉じてきちんと座り直すと、鞄を放り投げたうさぎが思いきり両肩を掴んでグラグラ前後へと振ってきた。
「ちょ…ちょっと、何?」
「ビッグニュースだよ!美奈子ちゃんって俳優のユウトと付き合ってるんだって!!!明日の雑誌に写真が載るらしいよ!」

「………ん?…はぁ?」
美奈子が何?

身体を揺らされていたレイは、美奈子と言う単語は聞き取れたけれど、その後がちゃんと聞きとれなかった。
「うさぎ、ちょっと、落ち着けよ。さっきも言っただろ?本人に確認してもいないのに」
うさぎの顔の度アップがまことによって引き離されていく。レイは解放されて頭を小さく震わせた。
「ちょっと、うさぎ。さっき何て言ったの?落ち着いて聞かせてよ。美奈子が何よ?」
「いや、まぁ、何でもないって」
うさぎがしゃべろうとするのを、後ろからまことが口を塞いで止めている。
美奈子に何かあったのだろう。
明日がどうとか、そんな単語も聞こえてきたし。
「何?いいから、うさぎを解放してよ。美奈子が何?」
きっとまことは、レイに気を使っているからうさぎの言葉を止めようとしているのだ。
それは多分、レイの耳に入れたらよくないことなのだろう。
「ぷはっ!だから、美奈子ちゃんが俳優のユウトと付き合ってるって!」
てっきり、レイは自分と美奈子が付き合っていることがうさぎにバレてしまったのかと思ったが、そこにレイの名前じゃない人物が上がった。
「……はぁ?…ユウトって誰?」
「知らないの?俳優のユウトだよ。イケ面で、両親も有名人のサラブレッドの人」

「…………誰、それ?」

それから、うさぎが熱心にその”ユウト“という人のことを教えてくれたようだけど、レイは全く聞いていなかった。耳には雑音として入ってきているものの、言葉を意味としてとらえることを本能的に拒否しているみたいだ。
「レイちゃん、大丈夫?」
「え?」
「……大丈夫?とりあえず、座って」
ぼっと立ち尽くしているレイを、亜美ちゃんが腕を引いて椅子に座らせてくれた。
「それで、テレビのワイドショーによると、もう付き合って1年以上らしいよ!トップアイドルと人気俳優の超ビッグカップルだってさ!明日、雑誌買いに行かないとね。写真では、デートしているところが綺麗に写ってるらしいよ」
「うさぎ、落ち着けって。噂だろ?本人は否定してるんじゃないのか?」
まことがたしなめている言葉だけは理解できる。
「でもさ!仲良くご飯食べていたのは間違いないんだよ?ユウトの事務所は”プライベートは本人に任せている”とか言って。これって付き合っていますっていう意味と同じでしょ?」
レイはそう言うことが良くわからないけれど、うさぎが言うことが本当だとしたら、それはどういう意味だろう。
昨日の夜の電話では、美奈子は何も言っていなかった。
いつも通りにお互いの報告をしあい、次の休みはどこで会おうか、なんて言うことを話していた。夏休みの間、美奈子は仕事が忙しかったし、レイのせいでキャンセルした仕事が押してしまって、本来あった休日がなくなったと言うことも知っている。
そのお詫びにって、次の休みにでも、2人きりで東京じゃないところに行こうっていう話しをしている。ひとつだけ、美奈子の言うことを何でも聞くっていう約束も付けて。
「……美奈子ちゃんの事務所は否定しているから。その、大丈夫だよ、レイちゃん」
「…………そう。ごめん、なんかちょっと、事情が呑み込めてないわ」

毎日、電話をしてきて、楽しそうな声を聞かせてくれる美奈子には彼氏がいた?
1年も前から?

到底、信じられない。

「ということで、美奈子ちゃんに電話してみよう!本人に直接聞かないとさ!」
うさぎは携帯電話を取り出して、レイの目の前で美奈子に掛け始めてしまった。
レイはそれをただぼんやりとみているだけだ。
「…………ん~、繋がらないみたい」
「仕事じゃないかな?」
まことは繋がらないことにホッとしているようだ。今日は雑誌の撮影とインタビューがあるっていうことを昨日言っていた。夜遅くにならないと、電話に出られないだろう。
「……ん~。仕方がない、メールしておこうかな」
うさぎは両手で携帯電話をいじりながら、文字を打っている。どういう内容のメールを送っているのかは知らないけれど、美奈子はそれにどういう返信をするのだろう。
今日も美奈子は電話をしてきてくれるだろうか。
その時に、レイはこのことを聞いてもいいのだろうか。
おそらく否定してくるに違いないだろうけれど……
美奈子は、まさか、彼氏と彼女は別だから、なんて思っていたりするのだろうか。

レイに愛していると囁いてくれた美奈子は
愛野美奈子として、愛しているという言葉を告げたのはレイが初めてだと言っていた
だけど、美奈子に愛していると告げる人間は、この世界にたくさんいても不思議じゃない
美奈子が言葉に出していなくても、関係はいくらでも成り立つような気もする



信じられないけれど、本人から聞かない限りはこの変な気持ちを落ちつけられそうにない。
買ったばかりの本を、ゆっくりと読めそうにもない。
「……大丈夫だよ、レイちゃん」
「……だと思うけどね」
「何も聞いてないの?」
「聞いてないわ……」
亜美ちゃんは心配してくれるけれど、何も知らないレイよりは、うさぎの方が情報を持っているような気もするし、だけどそれをうさぎからこれ以上聞きたくもない。
「あれ?レイちゃん、どうしたの?美奈子ちゃんに彼氏が出来て、落ち込んだ?」
「別に。というか、本当のことなのかはっきりしていないことで、イチイチ騒ぐ必要はないでしょ?」
うさぎは口を尖らせて眉をひそめているけれど、うさぎは美奈子に彼氏が出来て嬉しいと思っているのか、悲しいって思っているのか、どっちなんだろう。
「あ~ぁ。でもさ、驚いたけど、本当なら凄いカップルだよね。お似合いだけど、なんて言うか、ユウトのファンっていう子も多いし、美奈子ちゃんの人気が下がらないか、心配!」
うさぎは何をどうしたいのか、よくわからない。
多分そこが、ファンとそうじゃないレイの気持ちの温度差なんだろうと思う。
今すぐにでも、美奈子にどういうことなのかと聞きたいけれど、夜まで連絡がつかないのだから、仕方がない。
「明日、すぐに雑誌を買って、またみんな集合だよね!今日の夜も、きっとワイドショーとかでやるに違いないよ!とりあえず、美奈子ちゃんの恋を応援しよう!歌わないと!」
うさぎがカラオケを歌い始めるのは勝手だけれど、美奈子の恋を応援と言うのは、この場合はユウトとかいう人のことだろう、なんて考えている自分がいる。
そして、家にテレビなんてないから、ワイドショーなんて見られないわ、と冷静に思った。



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Date:2014/09/13
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