【緋彩の瞳】 星の行く末を ①

緋彩の瞳

みちる&レイ小説[幼馴染]

星の行く末を ①


「大丈夫か?美奈」
「……へ~きっすよ」
赤いゴーグルを外し、変身を解くと美奈子はよれよれとぶっ倒れそうになった。まだ子供から大人に脱皮していないのに、毎日毎日学校行って(授業中はよく寝ているけれど)部活やって、敵と戦って。世のサラリーマンよりがんばりすぎている。
「12時過ぎたら残業手当つかないのかしら?」
「ま、サービス業だから」
「クソ猫……」
足元をちょこちょこ動く白猫に唾を吐く勢いで、美奈子はぶーたれる。
「おかげでまた部活を逃したじゃない。新人なのにこんなにサボってばかりだったらさすがにヤバイよね」
「仕方ないさ」

猫にこの気持ちはわかるまい。

「あ~のさぁ。正義っつーけどね、アルテミス。なんで私がこんな目に合わなきゃならないのよ、えぇ?ご褒美よこせっていうのよ」
ガクンガクンと首を捕まえて揺さぶる。あ、白猫が白目になった。
「・・・・ま、ままま、まぁまぁ。いつかいいことあるさ。案外、いい出会いがあるかもしれないぜ」
「だったら探して来い!っつーの」
正義の戦士なんて、カッコいいのは名前だけじゃない。
誰も見てないし。
誰にも正体ばらしちゃダメだし。
テレビみたいなロマンスもなけりゃ
おいしい物だって食べさせてもらえないし。
学校だって毎日あるし。
いいことなんてない。
美奈子は筋肉痛になった体を“う~、う~”言わせながら、がっくり肩を落として家路を急いだ。





「正義の戦士?」
「何、その興味ないっていう声は」
レイは“バカ?”とまではいかないけれど、明らかにそのような目線を幼馴染に送った。
「あなた、本当に流行に付いて行く気のない子ね」
「っていうか、世の中警察やらなにやらに巨額の税金払っているのに、そんなのが現れるっていうのが腹立つわね。その正義の戦士、誰からお金もらっているのかしら?」
「…もう。夢がないわね、レイは」
「褒めてくれてありがと」
目の前の幼馴染は、ちょっと日本人らしくない顔立ちと容姿で。有名お嬢様学校の生徒で。そのクセに、正座してお茶を飲みながらおせんべいを頬張るような人。レイは最後の1枚を取られてふてくされた。
「もしかしたら一目見ることができるかもしれないのよ」
「どうして?」
「ふふ」
「……みちる、怖い」
ずずっとお茶を飲んだレイの親友は、上品な顔立ちのまま微笑み、畳の上に置かれた学生鞄から1冊の雑誌を取り出して見せた。
「これ」
テーブルに載せてぱらぱら捲り、ブックイヤーのある場所をレイに見せる。
「何、ダイアモンド?」
「ピンクダイアっていうの。希少価値なのよ」
開いた雑誌には、最近セレブの間で流行っているらしいピンクダイアの特集が掲載されていた。
「ママがね、これのけっこう大きなのを持っているのよ」
「みちるんとこ、何でもあるわね。おじ様は油田でも持っているの?」
「さぁ、どうかしら?」
侮りがたし。
レイは突っ込みを入れようと思ったけれど、やめておいた。口を開くだけ無駄というもの。
「あら、冗談よ?」
それを本気にしていると勘違いしたみちるが、クスッと笑った。誰が本気にしているというのだろう。
「で?そのダイアがどうしたの?」
話を逸らすまい。レイは雑誌の写真を指差す。
「最近、宝石泥棒が相次いでいるでしょう?狙われているらしいのよ」
「税金払っているんだから、警察が何とかするでしょう」
「夢のない子ね~。もし、ママのピンクダイアが盗まれそうになったら、きっと正義の戦士が助けてくれるに違いないわ」
コメントの仕様がない。日本の警察も舐められたものだわ、と内心呆れる。もちろん声には出さないけれど。みちるのことだから、狙って欲しいって思っているに違いない。
「で?その正義の戦士とやらは、そんなにハンサムなの?」
「あら、女の子よ。セーラーV。あなたそんなことも知らないの?本当、流行についていけない子」
お金持ちの価値観がわからない。レイは雑誌からみちるへと目線を上げて、舌を出して見せた。
「みちる、何考えてんのかわからない」
「それはお互い様よ。とにかく実物を見なきゃね」
その口調からすると、また面倒なことに巻き込まれる予感がする。
「ね、って。何なのそれは」
レイはブルっと体を震わせた。残念ながらこういう予感は外れたことがない。
「うちへ遊びにいらっしゃい。ピンクダイアを見せて差し上げるわ。運が良ければ、宝石泥棒が入ってくれて、セーラーVに会えるかも」
その理屈、相当おかしいじゃない。
「やっぱり狙って欲しいわけね……正義の戦士会いたさに」
「ふふ」
やっぱり侮れない。どうしてこんなのが唯一無二の親友なんだろう。
こんなのだから、放っておけない。
「さ、善は急げよ」
「善じゃないし、意味間違ってるし」
行くわよ、とせかすみちるに腕を引っ張られながら、ずるずるされるがままのレイ。
逮捕されているみたいだわと、小さな声で呟いた。




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Date:2013/11/10
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