【緋彩の瞳】 御利益頂戴 ②

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

御利益頂戴 ②

「……素直じゃないなぁ。レイは素直な人が好きらしいんだけどなぁ」
まことはそう呟いて、先頭になってうさぎと神社へ向けてスキップするように歩きだした。
本当にクラウンでも構わないのにって言いたい気持ちを我慢して、3人について歩く。
レイがいない4人って、あんまり慣れていない。興奮さめやらないうさぎと歩くスピードは違うし、まことはコンパスが長いし、亜美はわざと美奈子に合わせている感じもするし。
だけど、決して嫌ではないのだ。美奈子にとっては、とても大事な何でもない仲間たちとの時間なのだから。
「レイちゃん、仕事落ち着いているといいね」
気を使って亜美が話しかけてくる。
「そうね。それにしても、世の中の女の子って他力本願だわ」
「御守りのこと?」
「自分で何とかできることだってあるのに」
亜美は恋愛成就の御守りを持っていないようだったから、亜美なら言っても問題ないだろうと思った。あの時見せびらかしてきたのは、うさぎとまことだけだし。
恋愛に興味なさそうだもの、亜美。
「うーん。でも、気休めっていうか、気持ちはわかるかな。受験の時にも、合格祈願とかするのと同じで」
亜美は申し訳ないみたいな顔をしながら、鍵に付けている御守りを見せてくれた。それは“合格”と書かれてある御守りだ。もちろん、火川神社のもの。
「あぁ……亜美まで持ってるのかと思ったわ。合格、ねぇ。あなたは実力だけで十分じゃないの?」
「でも、レイちゃんが気持ちを込めてくれたものだし、応援してくれている人がいるっていうのが嬉しいから」
「へぇ……そう」
仲睦まじいことで。なんとなくイラっと来てしまった。
レイは亜美と仲がいい。何かあるたびに、やたら見つめ合っていることが多い。
いや、うさぎと仲がよかった。いつもうさぎは“レイちゃん、レイちゃん”ってまとわりついている。
でも、まこととも仲良しだ。レイはまことの家にお泊まりしに行ったことがあるし、お弁当を作ってもらったと聞いたことがある。


レイってそんなに好かれる要素あるのだろうか
意地っ張りだし怒ると怖いし
冗談で人を笑わせるタイプでもないし


「美奈子ちゃん、どうしたの?」
「別に、何でもないわ」
うつむいたまま、1人の世界で冷静に考えていると、今度は亜美が覗きこんできた。
「そう。あ、美奈子ちゃんもレイちゃんの神社の御守り欲しいなら、レイちゃんに頼んだら?」
「……別にいらないわよ。特に何も困ってないし」
「そう?……そうだね」
「そうよ」
長い坂を登り切る頃、街灯がついて、若い女の子たちが帰っていく姿と何度もすれ違った。
「人、思ったより少ないね」
「さっきの子たち、きっと神社で御守りを買って帰るところだったんだよ」
キョロキョロしながら、うさぎは薄暗闇の中をどんどん突き進んでいく。美奈子は少し帽子のつばをあげて、石畳にヒールの先を引っ掛けないように慎重になってその後をついて行った。
「あ!レイちゃんだ~!」
数人の参拝客が御守りを買っているその奥に、レイがいるらしい。うさぎは突進しながら大声を出して手を振っている。

レイからの返事はない。

「うさぎちゃん、ここ神社だから。大声出しちゃダメ」
「……聞こえないんじゃない?」
亜美は精いっぱいの小声で走り去るうさぎの背中に声をかけているが、それじゃぁ意味ないだろうに。この子は頭がいいのか天然なのか、判断がつかない。
もうちょっと、しっかりしてくれてもいいと思うんだけど……




「うるさいのが来たと思えば、うさぎじゃない。どうしたの?」
「レイちゃん、レイちゃん~!遊ぼう遊ぼう!」
高校生らしい女の子2人組みに御守りを渡すと、ようやく列が消えた。その瞬間を待っていたのか偶然なのか、うさぎが両手をブンブン振りながらこちらに近づいてくる。
「遊ぶ?もう遅いんじゃないの?」
レイは社務所の扉を一度閉めて、外に出た。薄暗闇になってきていて少し涼しい。
「え~!遊ぼうよ!せっかく来たのに」
「……せっかくって。約束してた?今日は忙しいって言ってなかった?」
足音が複数近づいてくるから、まことたちだろう。うさぎの暴走を止めない人たちしかいないと、こうなってしまうんだから。
「今日ね~、愛野美奈子のライブ見てきたんだ~」
「あぁ、そうだったわね」
「それで、美奈子ちゃんがお仕事もうないっていうから、遊ぼうってことになったの」
「へぇ。いつ?」
相槌を打ちながら、近づいてくる影に手を挙げる。2つしかないと思った影が3つあるのはどうしてだろう。
「今日だよ!」
うさぎの興奮した悲鳴のような声と、レイが美奈子を捕らえたのはほとんど同じだった。
「へぇ……珍しい」
暗闇の中、帽子をかぶったアイドルはレイを一度見つめた後に、気まずそうに視線を逸らした。不可抗力ですとでも言いたいのだろうか。
「でしょ。せっかくなんだもん、5人揃わないと面白くないでしょ?だから神社に来たの」
「はいはい、わかったから抱きつかないで」
巫女の衣装に抱きついて飛び跳ねるうさぎを引っぺがしながらも、まことが“よっ”って手をあげるのに応えて、レイも手をあげた。
「うさぎが言ってることは、本当なの?」
「うん。あと、美奈子ちゃんがレイに会いたいって言うからさ」
まことは芝居じみたため息と、やれやれっていう表情で言う。すかさず美奈子が割って入って来た。
「ちょっと、まこと?いつ私がそんなこと言ったのよ?何時何分に言ったのよ?勝手に話を作らないで」
何をムキになっているのかわからないけれど、子供じみた否定の仕方は、肯定としかとらえようがない。驚いて固まったうさぎを背中にくっつけたまま、レイは美奈子の隣の亜美ちゃんへと視線を変えた。
「……は…はは…。あの、えっと、そう。あの、私も5人で遊びたいって思ったから……」
亜美ちゃんも大変な役割ね。まことは美奈子に睨まれて直立不動のままだ。
「はいはい、別に理由なんてどうだって構わないわよ。でももう暗いし、家に帰らなくても大丈夫なの?」
仕事をしていたレイは、腕時計も携帯電話も自室に置いているから、正確に今が何時なのかはわからない。
「いいよ、亜美ちゃんはママが夜勤で家にいないから、夜はうちに来る予定だったし、うさぎもだよな?」
「うん!」
うさぎはまだレイから離れようとしない。今度はレイの腕を取ってブンブンと振り回してくる。
昨日も学校帰りに会ったのに、よくもまぁ、満面の笑みをずっと保ち続けられるものねと感心してしまう。
「だから、レイちゃんも遊ぼうよ。あ、まこちゃんちに一緒に泊まる?」
「いくらなんでも多すぎでしょう?あんたの布団がなくなるわよ」
「え~!みんなでパジャマパーティしようよ~!まくら投げしようよ~!」
うさぎと亜美ちゃんの鞄がいつもよりパンパンなのは、お泊まりセットが入っているということらしい。まさか美奈子もなのだろうか。美奈子の鞄がいつもパンパンなのは、仕事道具が入っているからだろうけれど、今日もいつもと同じような感じだ。
そう言えば、さっきまで仕事していたって言ってたから、美奈子は除外だろう。あの不貞腐れたうらやましそうな顔を見ていればわかる。
「私はまことの家に行くのは遠慮するわ。とりあえず、うさぎ、手を放して」
「え~~。あ~ぁ~」
名残惜しいと言わんばかりだが、やっとレイの左腕から重みが消えてくれた。しびれそうだった腕を振って暗闇の中、不貞腐れたままの美奈子を覗きこんでみる。
「……何よ」
「別に、なんでも」
レイは乱れた衣装をきちんと直しながら、とりあえず家にみんなを案内することにした。



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Date:2014/09/21
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