【緋彩の瞳】 乙女の唇 END

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

乙女の唇 END

いつもは真っ白い肌のアインが顔をピンク色にして、まるでアニメのようにキャーキャー叫ぶ後輩たちを追いかけている姿。
「ハルカ、シズル。何してるの?行きなさい。なんなら2発殴っていいわ」
「せやかて…なんや、怪しい気配ですよって」
「お酒を飲んで色ぼけているのよ」
「お酒?フィアお姉さまが飲ませたのですか?」
「ハルカ、本気で聞いてる?」
気分はまるで、人質を盾に立てこもっている凶悪犯を物陰から見ている警察官だった。ハルカは自分が単にフィアお姉さまの命令に従っているだけなのだが、まるで初めから全てを悟ったような態度でお姉さまの背中越しに犯人アイン・ルーを見ている。
「あらぁ、食べられてしまいますなぁ~」
クラスメイトが餌食になっていくのを、ため息交じりに見物している場合じゃない。
「シズル」
背後でフィアが拳を温めはじめる。平手ではない。
拳だ。
「い、行きますよって。ほな、ハルカさん。うちがお姉さまをひきつけるさかい、後ろからこれで」
これ、と言われてハルカが手を出すと、ずっしりと重たい木槌が載せられた。
「あんた、いったいどこから」
「秘密兵器ですよって」
「……自分のお姉さまの頭にこれを振り下ろすことに躊躇はないのね」
「ハルカさんがやるんどす。そしたら、捕らわれのプリンセスたちを解放できますよって。モテモテどすえ」
「あんたって人は……」
軽蔑の眼差し。
「やりなさい」
こっちは目が座っている。
「フィアお姉さま……」
もしや、自分が一番まともな思考回廊なのだろうか。いつも振り回されていじられているハルカは、この日初めて自分以外は宇宙人なのだと知った。


「お姉さま、嫌がる女の子を無理やり脱がしたらあきまへん」
広いホールの隅に3人のコーラルを追い詰めていたアインの背後から、シズルはいつもと同じ口調で声をかけた。獲物の捕獲に後一歩のところで声をかけられたアインは、自ら網に引っかかりに来た女の子に即座に反応する。
「あら~?シズル~!あなたのこと探してたのよ~」
キツいアルコールの臭いがシズルをぶるっと振るわせた。シズルは知っている。アインお姉さまにお酒を飲ませるとどうなるかということを。
「お、お姉さま。ちょぉ、飲みすぎどす」
両手を広げてシズルに一歩、一歩と近づいてくる。いくらパールNo.1大人気のアインお姉さまとはいえ、ピンクに染まった頬、すわった瞳と指の動きに、流石のシズルも喜んで飛びつく勇気は出てこない。笑っているものの、近づく距離と同じくらい下がっていってしまう。
「ジパングのお酒はぁ……ぐ~!なのよ」
何か揉むつもりなのか、シズルにロックオンされた指の動きは確かに普通の子なら叫ぶだろう。
「ジ、ジパングどすか。そないな強いお酒飲みはって。おいたしたらあきません」
自分はほかの子たちのように追い詰められずにかわすことなど簡単。そう思っていたシズルは、ジパングのお酒と聞いて更にひるんだ。
いつだったか、あまりに隙をくれないアインにいたずら心から飲ませたお酒で散々ひどい目にあったことがある。次の日は腰が砕けて起き上がれなかった。
いただくつもりがいただかれてしまった苦い経験。
「シズル~。こっちにいらっしゃい~。可愛がってあ・げ・る」
「遠慮しときますさかい」
「お姉さまの言うことがぁ、聞けないっていうわけぇ~?」
追い剥ぎにあっていた生徒たちは、みんな涙目になりながら救世主フィアお姉さまの背後という安全地帯に避難完了している。ハルカがじわりじわりとシズルを追い込むアインお姉さまの背後から、距離を縮めて来ているのも確認できた。
「無粋どすなぁ。お誘いはベッドの上でしてくれなぁ」
「シズルは素直ねぇ~~フィアと大違い」
あまりにシズルが逃げると、木槌を振り上げたハルカがその分追いかけてこなければならない。
覚悟を決めて、シズルはフェロモンを撒き散らすアインお姉さまの広げる両手内へと収まろうとした。
『いまや!』

「どぅりゃ~!」
狙いを定めたハルカが思い切り木槌を振り下ろす。
「ハルカさんみ~っけ」
しかし、どんなに酔っていてもパールNo.1。気合いを入れたハルカの掛け声に即座に反応すると、広げた両手のまま180度向きを変えて、ハルカの巨乳をむんずと掴んだ。
「あんぎゃ~~!」
「どあほぅ…」
なぜ、そっと後ろから襲うのに気合いの声なんて出すのだろう。せっかくの作戦を自分でぶち壊すなんて、やっぱりハルカは気合いだけの人だ。
「あかん、失敗やわ。ハルカさん、そのままお酒が抜けるまでお相手しはる?」
タコのように向かってくる唇を避けようとアインお姉さまの顔を両手で押し返すハルカには、首を振る余裕さえない。
「まぁ、一応これで何事もなかったことにしましょう」
安全地帯で見学していたフィアは、落ちている木槌でハルカを襲うアインの頭になんの躊躇いもなく一撃を落とした。



「……というわけなの。文句はアインに直接言って頂戴」
シズルのベッドにどかっと落とされたアインは、今度こそしばらく起きることが出来ないだろう。
「ケーキどすか」
二人の机の上には、確かにフィアの話しの通りケーキがおかれてあった。まだ、おいしそうな状態だ。
「お姉さまが目を覚ますのを待っていると、パサついてしまいますな」
「日が暮れるんじゃない?」
胸を鷲掴みにされたハルカは、ズレたブラを直しながら頬をパンパンに膨らまして不貞腐れている。
「先にお食べなさい。おいしい時を逃したほうがアインは残念がるわ」
どうせ、起きたら騒動のことなんて忘れているでしょう。そう言いながら幸せそうに寝ている頬に優しく平手打ちをするフィア。
「ほんなら頂きましょか。紅茶淹れんとな。ハルカさん、手伝って」
「一人で行きなさいよ」
「ここでケーキ食べるわけにはいかへんやろ?お姉さまを起してしまうさかい、場所を移動しましょ」
なんだかんだあっても、フィアお姉さまがアインお姉さまを見つめる瞳は優しい。優しくて嫉妬してしまう。察したシズルは、全然察しないハルカの腕を引っ張った。
「あぁ。だったらアインの部屋に私たちの分のケーキを置いてあるから、それを食べたらいいわ」
「そうどすか。ほんなら、ここのケーキはお姉さま方で」
「アインが起きたらね。二人は行きなさい」
「ほんなら、よろしく頼みます」
部屋から出たシズルは、ぶーたれているハルカに向かって、負けじと頬を膨らませると肘でつつきあいながら、無言でアインお姉さまの部屋を目指した。




おまけ

眠っているのを確認して、フィアは立ち上がろうとした。
が、何か引っかかっていて立つに立てない。スカートの袖をたどっていくと、白い手がぎゅっとフィアのスカートを握り締めていた。
「……何よ、この手」
聞いても寝た振りしているのか、本当に無意識に握っているのか、返事は返ってこないし顔にも変化は見られない。
フィアは特大のため息を漏らすと、アインの横に寝転がって目を閉じた。アインたちに振り回されていたせいで忘れていた頭痛が、今になって振ってくる。
2つ余ったケーキは、まだしばらく二人の胃に収まりそうもなかった。




HiMEで好きなキャラは、アインとシズル、フィアでした。
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Date:2014/09/23
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