【緋彩の瞳】 親子?!

緋彩の瞳

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親子?!

「似てるわ」
アフリカのライオンの親子を題材に扱ったドキュメンタリーをテレビで見ていたみちるは、ぽつりと呟いた。
「似てるな」
「確かに、似てますね」
隣で見ていたはるかとせつなも、うんうん、と頷く。
「なんて可愛いのかしら」
「そっくりだな。こういう困ったときの目とか」
「とりあえず、一人で耐えてみようとする考えとかも似ていますね」
ゾウの大群に住処を荒らされないように、お母さんライオンは一匹一匹銜えて1キロ離れたところへお引越し。けれど、1匹だけ忘れたのかそれとも見捨てたのか、置いてけぼりになった赤ちゃんライオン。待っても待っても、お母さんライオンは迎えに来てはくれない。
「どうなるのかしら?」
「…死んだらどうする?」
「私が許しません」
もはや3人の頭の中は赤ちゃんライオンから身近な人物へとスイッチされてしまっていた。
「僕なら、真っ先にこの子を連れて行くな。他の赤ちゃんライオンなんて後回しだ」
「私もよ」
「私もです」
ここには、残念ながら突っ込んであげられる人がいない。3人はテレビにかじりついて赤ちゃんライオンの行く末を見守っている。
夜が明けて、雨が降り、赤ちゃんライオンの体温を奪う。
「酷いじゃない!何やっているのかしら親は」
みちるは憤慨してよく響く声を大きくした。
「かわいそうに、震えて。おなかも空かせているだろうに」
「でもえらいですね。ちゃんと本能で敵から身を守ろうとがんばっています」
二日経ってもお母さんライオンは迎えに来ることがなく、かわいそうに骨がみえるほど痩せて、体力を奪われて動けない赤ちゃんライオン。テレビを見ている3人は、しくしくと鼻をすすり始める。
そして、赤ちゃんライオンは何かを決心して、ヨロヨロと立ち上がった。
「おおっ!」
「探すのね、お母さんを。偉いわ!!」
「さすがです!」
どこの青春ドラマを見ているのかと突っ込める人はいない。3人は割れんばかりの拍手をして、テレビに向かって応援を始めた。
「途中で、ヒョウとかに食べられちゃわないかしら?」
「大丈夫だよ、僕が付いてる」
「いざとなったら、時間を止めます」
よろよろと、細く小さな体で一生懸命母親の匂いを求め歩く赤ちゃんライオン。
「やっぱり愛する人って言うのを本能で探す力ってあるのよ」
みちるは手を合わせて祈りを捧げている。
「あ、母親だ!」
「このスットコドッコイ、大切な可愛い赤ちゃんに何てことするんですか!」
赤ちゃんライオンを見つけたお母さんライオンが、駆け出すシーン。BGMとともに、3人はすすり泣きながらテレビに語りかけている。
誰も突っ込む人などいない。
「そうよ、可愛い瞳を持っているのに」
「そうだそうだ。めちゃくちゃかわいいんだぞ。僕なら絶対離れたりしないね」
「当然です。それが勤めです」
無事、親子が再会し、他の赤ちゃんライオンたちとも合流できて元気に遊ぶ赤ちゃんライオンに拍手を送りながら、3人のテレビ観賞はようやく終わりを迎えた。

「・・・何よ」
今日はゆっくりできると思っていたはずなのに。凄まじい車のエンジン音が裏手から聞こえてきたと思ったら、雨戸を強引に開ける乱暴な音。
かなりびびった。
新手の敵か、もしくは強盗か。すでにお風呂に入っていたレイは寝巻きのまま変身ペンを握って出てきた相手をにらみつけ、しばし固まる。けれどやつらはお構いなしにずかずかと乗り込んできたかと思えば。
「「「あぁ、レイ!」」」
なんていいながら、いきなり飛びついてくる。
この人たちの恐ろしいまでの愛情表現には馴れたと思っていたけれど、今日は今までで一番怖かった。
「偉いわ、レイ!よくがんばってたどり着いたわね!ご褒美に何でも買って差し上げるわ」
「・・・どこかへ行った覚えはないわ」
「もう離れないからな!僕はいつでも君の傍で守ってあげるから」
「・・・邪魔だから、ずっと離れていてもらいたいわ」
「いいんです。私が毎日あなたを養ってあげます。おいしいご飯を作って。寒さで震えておなか空かせたりなんてさせませんよ」
「・・・今は初夏で、別に餓えてないわよ」
抱きついてくる3人の妄想は、いつものことと言えばいつものことだけれど。
いったい今日は何に影響されたのだろう。
「暑苦しいから離れなさいよ」
「「「放さない」」」
あぁ、誰か何とかして。
わけもわからず3人に愛されるレイは、その後、引き摺られるように3人の邸宅へと拉致されていった。



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Date:2014/09/23
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