【緋彩の瞳】 SUPER MOON

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

SUPER MOON

旧サイトのキリ番



「すごくまぶしい月ね」
遊びに来ていたみんなを坂の下まで見送っている途中、美奈は首が痛くなるほど空を見上げながらレイに声をかけて来た。
「あぁ……スーパームーンよ」
「セーラームーン?」
「……スーパームーン。地球と月が接近しているのよ」
お約束のボケを聞き流して、レイは冷たく言い放つ。まこちゃんたちは一足先に来たバスに飛び乗って帰って行ってしまった。美奈は違う方向だし、どうせ走って帰るだろうから心配はしていない。
「へぇ。まぶしいよね。それにすごく綺麗」
「そうね」
普段、意識して月を眺めるなんてことはない。スーパームーンだと言うことも、朝の新聞で知った情報だったけれど、美奈に言われなかったらそれを見ようとも思っていなかった。
「めったに見られないものでしょう?」
「そうね、確か18年近く前に一度あったぐらいだわ」
「そっか。幸せだね、そう言うのをレイちゃんと見られるって」

そういうことをさらりと言ってしまうから
身体が一瞬だけ震えて、焦ってしまう
見られてないか、気付かれていないか
そんなことを心配してしまう

自分が嫌になる

「変なの」
「なによ。私もよ、って言ってくれてもいいんだけれど?」
「言うと思う?」
「思ったんだけどな~。こんなきれいな月の夜くらいは」
美奈にとって、隣を歩くことはもう当たり前になってしまったのかもしれないけれど
まだ、レイはそのまぶしさが怖くて慣れそうにない
スーパームーンよりもずっと、美奈という存在がまぶしすぎる
「自惚れているんじゃない?」
階段を下りて、50メートルほど下ればそこで今日も美奈と“おやすみ”って言って別れる。
手を繋いでも、どこかに2人で遊びに行っても、好きだと言われても、それ以上に発展しないのはそれが美奈の優しさだとわかっている。
だから、その優しさにいつまでも甘えられないのも分かっている。
「………レイちゃんさ、私、レイちゃんの性格分かってるつもりよ」
“はい”って差し出された美奈の左手。
この手はただ、“愛”という存在だけを抱きとめるためにある。
冗談の中に混じる美奈の純粋な気持ちを、同じようにさらりと返してあげられないのはなぜだろう。
「手をつないでも……もう、すぐそこなのよ?」
「帰らないもん。今から、この階段をまた上がるのよ」
「……え?」
「だって、スーパームーンなんでしょ?もうしばらく、レイちゃんと見ていたいもの。ここより、高台の神社の方がいいでしょう?人も来ないし」
行こう。そう言ってレイの手を握り締めて降りたばかりの階段をまた上がっていく。
「美奈……遅くなっていいの?」
「明日休みだから、泊めてよ」
「何でそうなるのよ」
「いいじゃん。別に襲ったりしないわよ」

そう言う優しすぎるところがあるから、もっと辛くなると言うのに。
どこまでも彼女の愛の流れに任せてしまおうと言う気持ちを、美奈は許してくれない。
レイの気持ちを辛抱強く待ち続けて、“レイが選んだ”という確かなものを待ち続けている。
もう、出会ってからずいぶんと年月は過ぎたと言うのに。
ただ繋いだ手を引っ張られるだけ。

「やっぱり綺麗ね。月の光りってこんなにもまぶしいものなのね」
見上げる美奈の横顔が、月に照らされていつもより柔らかく見える。
繋がれたままの指と指は、たぶんレイから解こうとしない限りずっとこのまま。
ならば、まだこうしていてもいいかもしれない。
甘えていると思う。
彼女の気持ちに。
美奈が好きだと言い続ける限り、ただ、その気持によりかかっているだけ。
その波に揺られる心地よさをもらうだけで、美奈には何一つ差し出せない苛立ち。
誰のために守ろうとしているプライドだろう、といつも想う。
愛し合うことがただ、怖い。
愛を推し量ることが伴う痛みを想うと、愛を噛み砕いて飲み込む勇気が出てこない。
だから、こうやっていつも、美奈の気持ちに自惚れて無駄な時間を費やしてしまうだけ。
「………美奈」
「ん?」
まぶしいものを見上げる美奈を見ていられなくて、暗い足元に視線を落とした。
「………いつまで……待つ気なの?」
「いつまででも。レイちゃんが頷いてくれるまで」
「そんな日が来ないかもしれないわよ?」
「来るわよ。だって、レイちゃんの瞳は私を好きだと言っているもの」

じゃなきゃ、いくらなんでもこんなにしつこくしないって。

美奈はそう言って小さく声を出して笑った。
レイはゆっくりと、その横顔を見つめるだけ。
何か、文句を言ってやりたいのに何も言葉が浮かばない。


「………美奈」


月に照らされた美奈の唇に、無意識に唇を押しあてる。

その愛を身体が欲しくなった。





「………レイちゃん。私、…襲わないっていう約束……破る」

不意に訪れた二人の初めてのキスは、出会ってからずいぶんと年月が経っていた。

「自分で言ったことは守ってよ、馬鹿」
「嫌……。3年も待ったんだから、いいでしょ?」
「いつまででも、待つんじゃなかったの?」
「今、さっきレイちゃんからキスしてきたじゃない」
「…………撤回…」
「しない」

力強く抱きしめてくる腕が愛しい。
素直に口に出せない。だけどもう、それを悔やんだり苛立っていても仕方がないのかもしれない。美奈と同じ性格になれないのだから。
「いつまででも愛するわ。それだけは絶対、守る」
「守らなかったら、呪い殺してやるわ」
「そんなの大丈夫。だから、もう一度キスして」
「……調子に乗ってるでしょ?」
「待ち続けたんだから、キスしてよ。何も言わなくてもいいから、キスしてよ」

きついくらいの月の輝きが愛の女神を照らす
せがまれて、レイは女神の腰に腕をまわしてゆっくりと唇を重ねた。
冷たい唇を、誰かの唇で温めることができるのだと、生まれて初めて知った。


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Date:2014/09/23
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