【緋彩の瞳】 おとぎの国へ ①

緋彩の瞳

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おとぎの国へ ①

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『起きてください、プリンセス』
起きてと誰かに言われたということは、つまり、寝ているということになる。
さっきみちるが絵本を持ってきて、読み聞かせてくれていたのに。
また頬を膨らませて文句を言われちゃう。
「……ん~、ごめん。………みちる」
背中をさすって起こしてくれた人の名を呼んでも、気配がない。
「あれ~?みちる?」


確かにみちるのベッドの上に並んで、一緒に絵本を広げていたはずなんだけれど。
「……ここ、どこ?」
視界に飛び込んでくるのは、お城のような建物。
大理石で作られた道。
綺麗な色とりどりのバラがアーチになって、ずーっとお城に向かって続いている。
「みちる~~!!」
ここはどこだろう。
みちるにいたずらされたのかもしれない。
でも、みちるの家にこんなものはなかったのに。
どんなに広いお庭でも、全部探検して一緒に地図を作った。真白いお城なんてなかった。

『プリンセス』
何のいたずらだろうか、それとも夢だろうか。
立ちつくして首をいっぱい回して周りを確かめていると、誰かが呼ぶ声が聞こえた。
『プリンセス』
「………妖精」
真上を見てみると、小さな小さな妖精みたいなのが二人、羽をパタパタしてこちらを見ている。
『私の名前はフォボスです』
『私はディモスです』
「フォボス?ディモス?………私はレイです」
目と同じ高さまで下りてきてくれた妖精たちは、レイに深く頭を下げた。
よくわからないけれど、怖いというよりも“懐かしい”。
会ったことがあるかもしれない。

妖精は子供にしか見えないって聞いたことがある。
ママが言っていた。“ママも小さいときは、妖精と仲良しだったのよ”、って。
名前もあったらしい。この妖精たちと似たような名前だった気がするけれど、思い出せなくて。
「みちる、知らない?」
『みちる様は、ここにはおられませんよ』
ディモスと言っていた方が笑顔でこたえてくれた。よくわからないけれど笑顔だから、何か怖いような気持ちが沸いてこない。
「ここ、どこ?」
『ここはシルバー・ミレニアム。月ですよ』
「……月?」
『そうです。ここは月の王国』

もしかしたら、レイは起きていると思っていたけれど、これは実は夢の真っ最中ではないだろうか、と思えてきた。

「………お城」

これが夢なら、何をしてもいいということになる。
みちるもいないし、たぶんこの妖精は自分が都合よく作り出したお助けキャラに違いない。

『はい、お城です。プリンセス、こちらへどうぞ』
こちらと言われたのは、バラのアーチが作るお城へと続く道。
「フォボス、ディモスも一緒に行くのよね?」
『もちろんです』
『いつまでも、どこまでもプリンセスの傍にいます』
バラの香りに吸い込まれるように、羽音をさせずに飛ぶ妖精とともに歩み始める。
どこかで見たことがある風景は、夢の中だから自分が作り出した世界ということなのか。
この前遊びに行った、大きなテーマパークに出てきたお城はこんなのだったかしら。
よくわからないけれど、誘われるようにお城へと近づいてゆく。
“こちらへ”と誘われて、大きな門の前へたどりついた。
「ん~………」
勝手に開いてもいいのに。これは夢なんだから、レイが思った通りに動くはずなのに。
硝子細工が施された厚そうな扉を見上げても、自動扉ではないことはわかる。
『プリンセス、そっと押してみてください』
フォボスが肩に降りてきて、レイの髪につかまりながら耳元で教えてくれる。
「開くの?」
『大丈夫です』
ディモスは扉に手を添える、そのすぐ傍で見守ってくれている。
レイはさほど力を入れずにそっと押してみた。


「……うわ」
お城の中なのに、大きな広場のその真ん中に、首が痛いほど見上げなければならないくらいの噴水が上がっている。
「扉がいっぱいある」
真ん中に続く広い廊下とは別に、円を描いていくつも扉があった。
「どこへ行けばいいの?」
『まずはまっすぐです』
噴水の向こう側の廊下。レイは言われたとおりに噴水を迂回して一番広い廊下を進んだ。

「………あれ?」

何か、奥の方で白いものが横切る。
大理石の白い廊下だから、錯覚かもしれない。
「今、何かいた?」
右上にいるフォボスに声を掛けてみたら、ちょっとだけ首をかしげてレイを見つめ返してくる。
『さぁ、何でしょうか?』
「……追いかけてみてもいい?」
少し走らないと、その白いものがどこへ消えて行ったのかわからなくなってしまう。
『構いませんよ』
裸足のままのレイは、急いで廊下の突き当たりをめがけて走った。
広い広い廊下。
幾つもの柱。
レイ以外に音を立てるものは何もなくて、でも別に怖いとは思わない。

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Date:2014/09/23
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