【緋彩の瞳】 おとぎの国へ END

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おとぎの国へ END

「レイ、起きなさい」
「………ん~~」
なんだろう、何か変な夢を見ていた。
あれ、夢じゃなかったのか、やっぱり夢だったのか。
「………あら?」
「レイ。人の家に上がって早々、ソファーで熟睡って何なの?」
でっかいみちるがいる。
あれ?
みちるに絵本を読んでもらっていた気がするんだけれど。
目の前にいるみちるはちゃんと大人。

……
………

さっきまでのは、夢の中で夢を見ていたということかしら。

なんてややこしい。

「みちる……。絵本とか読んでた?」
「……寝ているときに頭ぶつけたの?」
念のための確認も、憐れんだ目で見つめられるだけ。
「いえ、なんでもない。ちょっとシャワー浴びて、頭すっきりさせてくるわ」
「そうね。何か、寝ながら誰かと会話していたわよ?」
「……そう?」
シャワーを浴びながら、やっぱりあれは小さいころに一度見たことがある夢なのではないかと思えてきた。
子供のころ、変な妖精に導かれて月の王国に行った夢を見たことがあった。
確かあの時もみちるに起こされて、みちるに話して聞かせたはず。
その妖精はきっと、フォボスとディモス。
「何でまた、子供のころに見た夢と同じものを見たのかしら」
もしかしたら、美奈も同じ夢を見ていたのかもしれない。
美奈に聞いて、アルテミスにも聞いてみようかしら。
子供の頃のあれは夢の中の出来事なのか、本当にあった出来事なのか。





「あ、その夢……何か覚えてる」
「やっぱりあんたも見たの?」
夢を共有するなんて信じられない。
だからそれはたぶん夢じゃない。
おそらく、意図的に誰かが見せた幻想か、あるいは本当に月の王国へ子供の頃の二人を連れて行ったのだろう。
みちるの家に呼び出した美奈は、レイが見た夢の話を聞いて、思い出そうとして腕を組んで首をかしげた。
「レイと美奈子が同じ夢を?たしか、あの時レイは5歳くらいだったわ」
「みちるに話して聞かせたのよね?」
「えぇ。面白そうに見た夢を語っていたわよ。今になってすっきりしたんじゃないかしら。あのときにレイは、月の王国に行って前世の自分と会って来たということよ。厳密に行ったということなのか、何か意志だけを飛ばしたのかはよくわからないけど」
前世の記憶はそぎ落としてしまっていることもあるから、そのあたり自分のことだけどよくわからない。
「アルテミス、どう思う?」
「いや~。まぁ、夢と現実の間くらい、…かなぁ?」
美奈の問いかけに、アルテミスは明らかに何か知っている感じで視線を外した。
「あんた、知ってるんでしょ。あれは子供の頃の私たちを月の王国に連れて行ったんでしょ。夢じゃなかったんじゃない?」
「いやまぁ……あれはクイーンが言い出したことで……」

アルテミスが言うには、クイーンはプリンセスを身ごもった時、先見の力を持つマーズから月の王国の行く末を知らされていたらしかった。
銀河千年王国といえども、星は必ず終焉を迎えるということ。
その運命には抗うことはできない。
選ばれた四守護神もまた、その運命の渦に身をゆだねるしかない。
たとえ、生まれて間もないプリンセスに死が訪れるとしても。

それならばいっそ、我が子と繋がっているうちに自らの手で幕を閉じようとクイーンは考えた。
死ぬためだけに王国に仕えるセーラー戦士たち、なにより幸せの絶頂で死を迎える娘のことを思うと、ただ絶望しかない未来。
何もかもをすべて消し去ってしまいたい。
しかし、運命に抗うことはできない。

憂鬱な日々を過ごすクイーンは、遠く未来で同じ運命をたどる前のマーズとヴィーナスが、その運命を拒否して、未来を変えてくれないだろうかと考えた。あるいはこの身をその手で殺めてくれはしないか、と。
そして、マーズの目を盗んでフォボスとディモスを呼びつけて、遠い未来のレイを月の王国へ連れて来たという。アルテミスはそう言う事情を知らされずに、ただ、命令を受けて寝ている美奈を王国へ連れて来た。現世に送り返した後に、クイーンとマーズからその事情を聴かされて驚いたんだとか。
「クイーンは、……ずっと死にたがっていたから。でも、誰もがみんな強い意志で運命を受け入れていく。未来の小さなマーズたちでさえ、月の王国のせいで背負わされた運命を受け入れて生きていくのであれば、その命を摘み取ることは許されないと悟ったんだと思う」
クイーンはそんなに弱い人だったのかしら。
レイはおぼろげな記憶をたどってみても、最期に幸せそうに微笑んでいた印象しか残っていない。
「あのお方なら、やりかねないわね。言われてみれば、そんなことがあったかもしれないわ……プルートから聞いたことがあるかもしれない」
「え?みちるは前世のこと、覚えてるの?」
意外なことに、みちるがクイーンの名を懐かしそうに呼ぶ。
みちるはどこまで記憶があるのか。
「そりゃね。あなたたちよりも長い間クイーンといたもの」
「へぇ……。ネプチューンたちと私たちって全然関わり合いなかったの?」
「え?レイちゃん、そのあたりも覚えてないの?」
美奈が突っ込んでくる。まさか、美奈は記憶があるということ?
やっぱりレイだけ覚えていないことがまだまだあるみたい。
「……え?何かあったかしら?」
「美奈子、余計なことは言わなくていいわ」
「嘘~!みちるさんってレイちゃんに言わなかったの?なんて皮肉な運命、とか思わなかった?」
「思ってないわよ」
「ちょっと、皮肉って何よ?」
「何でもないわ」
みちるが白を切る。
何か前世でも多少は縁があったみたい。
まぁ、どうだっていいことだけれど。
知ったところで、今の世界でみちるは幼馴染で、とりあえずいろんな腐れ縁で繋がっていて、それは少なくともレイから言わせれば、前世とは何ら関係がないことだと思っている。
「だよね。まさかネプチューンがマーズの部下だったなんて、言えないよね」
「……美奈子、思い切り口に出してるわよ」
ゴンって美奈はみちるにグーで殴られた。
「へぇ~。みちるは私の命令に絶対服従?」
「まさか。だいたい、レイには記憶がないのでしょう?もう、無効だわ」
「でも、私のことは命を投げ捨てても守ってくれるのでしょう?」
「それは前世とか使命とかではなく、海王みちるとしての意志でそうするわ」
言うと思った。
「あ、私もレイちゃんのことは命を投げ捨ててでも守って見せる。前世のマーズとの約束でもあるしね」
前世のマーズに頬を撫でられて、小さい美奈は顔を赤くしていた。
前世で二人はやっぱり、そう言う関係だったんだろうけれど、そのあたりもまた、レイには身に覚えがない。
美奈は前世のマーズとどんな風に愛し合っていたかなんて、一度も口にしたことはない。
だからレイも一度も聞こうと思ったことはない。
今、二人が愛し合っていることが、前世からの運命であったとしても、抗う理由が見当たらない。
「前世ね~。私だけほとんど記憶にないことだから、別にどうだっていいけれど」
「マーズは先見の力のせいで、人よりも長い時間を生きているに等しかった。蓄積された誰にも知らされない辛い真実を抱きしめたまま、この世界でもう一度生まれ変わることを、クイーンは可哀想に思ったのでしょう。マーズが持っている記憶を消したのはクイーンよ」
「なるほど……あのお方ならやりそうね」
美奈が納得したように腕を組んで頷いている。
「そう言う人だったの?」
「そう言う人だったわ。でもいいんじゃない?前世は前世。今のレイちゃんとは別の人だし、別の意志を持った人だから」
「……それもそうね」

運命なんていうものは、結局はあと付でそう呼ぶしかないものだと思っている。
その方がいい。
そうじゃなければ、生きていられなくなる。

「私がレイちゃんを選んだのも、前世とは無関係とは言わないけれど、でもレイちゃんには拒否する権利もあるわけでさ。その権利を行使しなかったんだから、今は今よ」
「いつでも行使するつもりはあるわよ」
前世のマーズが、愛しそうに美奈の頬を撫でたという記憶。
子供の頃のその記憶の断片が、美奈を選んだ原因かもしれない。
前世の自分に対して負けず嫌いを発揮した、なんて言えないから、黙っていようと思う。


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Date:2014/09/23
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