【緋彩の瞳】 御利益頂戴 ④

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

御利益頂戴 ④

「……ねぇ、レイ」
「ん?」
「レイのところの御守りって、御利益あるんでしょ?」
「どうかしら?縁結びの御守りは“恋愛成就”に効くってよくみんな求めに来るのよ。うちってそういうのを売りにしているつもりはないはずなんだけどね」
今度はレイの指が美奈子の髪をいじり始めた。レイに身体を預けていた美奈子は、ずるずるとレイの膝の上にうつ伏せになって顔をうずめてしまう。
なんていうか、顔を見ているのが苦しいって思う。
ドキドキして、苦しいって。
それなのに、レイはちっともドキドキした様子もないし、うさぎをあしらうのと大して変わらない態度。
「うさぎが御利益あるって、力説してた」
「そう?……なんだ、やっぱり美奈子も欲しいわけ?」
図星を言いあてられたから、全身がビクッと震えてしまって、だから余計に顔をあげることができなくなる。クスクス笑う声が頭に振ってきた。

でも、どうすればいいのかわからない。

「へぇ、美奈子も誰か好きな人がいたりするのね」
「………悪い?」
「別に?なんとなく、アイドルって恋愛禁止みたいなものだと思ってたから」
「やってる人はやってるわよ。別に、ばれなきゃいいし」
「へぇ~。で?どんな人?御守りじゃなくて、占ってあげましょうか?タロット、結構あたるのよ」
なんでそんな楽しそうな声なんだろう。
からかいたいっていう感じしかない。
何かあったらまずレイに相談、なんてうさぎもまことも亜美も声をそろえて言うけど、美奈子の恋愛は笑う対象ってどういうことだろう。
「………別に」
「何よ、拗ねちゃって」
「………別に、レイに話す義理なんてない」
「素直じゃないわね。言いたくないなら、聞かないわよ」
レイは美奈子の恋愛なんて、たいして興味もないんだろう。こうやって傍にいて触れ合っていてもドキドキするのは美奈子だけで、レイは仲間の1人と言う感覚しかなくて……
「レイは……いないの?」
「何が?」
「だって……自分の神社の御守りがどれくらい効くか、自分で確かめようとか思わない?」
そっと顔をあげると、そんなこと考えたこともないみたいなレイの表情が飛び込んできた。
聞くだけ無駄って、それでもう十分わかるくらい。
「考えたことないわ」
「……でしょうね」
態勢を変えて膝枕をしてもらいながら、美奈子はレイの頬に両手を伸ばした。こんなに傍にいて、こんなにドキドキして、こんなに好きでも、レイは美奈子の気持ちなんてわかったりはしないだろう。
火野レイを好きだと言う気持ちで悩んでいる人間が、目の前にいることなんて、気づいたりしないだろう。
「何よ、甘えてきて。うさぎじゃないんだから」
「うさぎがオッケーなら、別に私がしてもいいじゃない」
「子供の面倒は1人で十分よ」
「今は私だけでしょ」
「………まったく。何よ?片想いしている相手と何か嫌なことでもあったの?」

そういう勘は鋭いくせに

「何もないわよ。相手は私の気持ちになんて絶対気づかないんだから」
「言わなきゃ気づかないんじゃない?」
「うん、だからさ、……御守りでも渡そうかな」
「そんなの御守りに頼らないで、自分で何とかすれば」

何とかできる相手なら、何とかしてる。
気持ちが伝わっていないから、こうやって甘えても許してもらえている。
レイに気持ちがバレたりでもしたら、こんなことはできない。
気持ち悪いなんて思われるに違いない。
友情と愛情の違いはとてもクリアだけど、レイは理解なんてしてくれないだろう。


だけど
この距離を保ち続けてどうするんだろう

レイはいつか誰かを好きになって
その人と付き合うようになったりして

それを美奈子は友達と言う位置で、応援しなければならないのだろうか
そんな高度な演技、できるだろうか

「……何とかできる相手じゃないんだよね。面倒な相手だから」
冷たい頬を包むこの掌。
引き寄せられない腕の長さ以上に、縮められないものがある。
「アイドルっていうだけじゃ、どうしようもないっ相手っていうの?」
「さぁ。そもそも、テレビ見ないらしいから。あんまり私が何してるとか、わかってないと思う」
「美奈子が弱気になるなんてね。らしくないじゃない」
弱気も何も、レイは本当にアイドルとしての美奈子のことはわかってない。美奈子の仕事だって、こっちから情報を提供しないといけない。ブログやってるって言っても“ブログって何”なんだから。

見上げると、真っ黒な瞳が見つめてくる。
頻繁に電話で話しているけれど、あんまり会えないから、こうやって2人でいられるときにちゃんとこの瞳の彩を目に焼き付けておかないと。

「私らしいってさ、どうすればいいわけ?」
「はっきり言えば?好きって。その方が美奈子らしいと思うわよ」
「………そうでもないんだけど」
「そうみたいね。案外ウジウジするのね」
「……悪い?」
「別に。なんか、女の子っていう感じ」
相手がレイじゃなかったら、もう少し違う態度に出られたような気もするんだけど。
「レイも好きな人がいたら、女の子、みたいになるんじゃない?」
自分で言いながら、ベタなことを聞くわって思った。安っぽい携帯小説にありそうな、好きな人に好きな人がいるかどうかをそれとなく聞くシチュエーションって、本当にやってしまうものだなんて。しかも、わりとしつこく。
「だから、興味ないって。そんな時間があるなら、他のことに使いたいわ」

まぁ、好きな人がいるって言われないだけよしと思おう。
レイが言いそうなセリフを本当に耳にして、美奈子はホッとするようなできないような、いやこれはたぶん、ホッとしていい部類なのだと心に言い聞かせた。

自分は好きだと言わないくせに、ひそかに自分のことを好きだったりして…なんて期待は、女々しさの代表みたいなことだ。

そのまま膝枕をしてもらい、仕事の疲れもあったせいか、うつらうつらしてレイに甘えていると、3人組が帰って来た。
足音が聞こえたから起きあがろうと思うよりも早くに、凄い勢いで襖をあけられたから、間に合わなかった。
「ただいま~~!……あ~~!美奈子ちゃんズルい!レイちゃんの膝枕!!」
「………そっちなの」
アイドルと2人きりでいたレイを羨むのではなく、レイに膝枕をしてもらっている美奈子を羨むなんて。うさぎも相当レイが好きなのね。
「なんだ、2人きりになるとイチャイチャするとか……振り回されるなぁ」
食材を抱えたまことは顔を出してそう言うと、キッチン借りる!と、さっさと居なくなるし、亜美は美奈子とレイをそれぞれ見つめてから、無言でまことを追いかけていく。
「レイちゃん、レイちゃん!うさぎにも膝枕してよ~」
「嫌よ、なんでうさぎにしなきゃいけないの?」
「え~!だって、美奈子ちゃんには、やったじゃん!」
「勝手に頭乗っけてきただけよ。してあげるなんて一言も言ってないわ」
起きあがった美奈子の背中を押して、レイは抱きつこうとするうさぎからさらりと逃げる。
「ズルいよ、美奈子ちゃん」
「いや……別に。普通に頭、置いただけで」
「うさぎ、ちょっと静かにしなさいよ。ご飯作るの手伝いに行くわよ」
「後でしてよ、レイちゃん!」
「嫌よ。子供のお守りは私の仕事じゃないわ」
「ケチ!ケチ!レイちゃんのケチ!」
立ち上がったレイは、美奈子のことなんてほったらかして部屋を出て行く。その背中を追いかけながら文句を言ううさぎも、当然のように部屋から出て行く。

「何、また……存在無視なわけ」
このままレイの部屋で誰かが呼ぶまで居てやろうかと思ったけれど、美奈子のご飯を作ることすら忘れられそうな気がして、結局うさぎの後を追いかけることになった。



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Date:2014/09/24
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