【緋彩の瞳】 星の行く末を ④

緋彩の瞳

みちる&レイ小説[幼馴染]

星の行く末を ④


「……早い時間から変装して屋敷の中にいたのね。ずいぶんと面倒なことをしてくれるじゃない」
セーラーVが言ってやろうと思っていたセリフを先に言ったのは、あの屋敷にいた女の子だ。
「君、気付いていたんだね」
「えぇ。様子がおかしかったから」
「そうか。悪いけれど、ちょっとの間だけこのピンクダイアを借りるよ」
「お断りするわ」
タキシード仮面の目の前に仁王立ちする、黒髪の少女。怖がる様子もなく、殺気立って、盗んだものを返せだなんて。

こっちの立場がない。

「アルテミス、どうする?」
「……あぁ、少し様子を見よう。あの子……まさか」
「まさか?」
「いや……」
アルテミスの知っている子なのかしら。それは美奈子がどこかで会ったことがあると思ったことと関係があるのかもしれない。

「一般人を傷つけるつもりはない。誰かを傷つけたくはない」
女の子に向かってスティックを構えながら、脅しているんじゃないわよ、この変態泥棒。
セーラーVは少女の背後に場所を移し、気配を消した。万が一にもタキシード仮面がこの子を襲おうものなら、半殺しにしてしまおう。
「もう、あなたはすでに人を傷つけているのよ。そのダイアは大切な人の形見なのよ。深美ママの心を傷つけた罪は、重いわよ」
怖くないのかな、この子。
真っ直ぐに睨みつけている。その背中、なんでだろ、凄く懐かしい。
「それはすまない。用が済んだら必ず返すと約束しよう」
「泥棒と約束なんて、するわけないでしょ」

そりゃそうだ。

その子は、どこからか何か紙切れのようなものを出したかと思えば、呪文を唱えている。

火川神社の霊感少女……

最近よく耳にする、噂の子。
失くしたものの場所をぴたりと言い当てたり、事故を予言して当ててしまったりとか……
アルテミスがプリンセスかもしれないって、調査しようとしていた子。

まさか、じゃぁ、プリンセスなの?

「悪霊退散!」
5,6枚のお札がタキシード仮面に向かってビュッと投げられた。
だけど、なんというか、甘い。
簡単にその攻撃をよけられそうな甘さ。
ほら、タキシード仮面も素人相手にしている感じで、余裕の笑みでそれを回避して……

と、心の中で解説を交えて見ていると、タキシード仮面が何者かによって不意打ちを食らってアスファルトに倒れていた。
「甘いって、内心思っていたでしょ。トリを私に譲ってくれたのよ」
何か、柔道の技でも掛けたのかしら。もう1人のふんわりパーマの美人の子がタキシード仮面をぶっ飛ばしていた。

そして、右手にはピンクダイアがキラリって…

おいおい、セーラーVの出番なく取り返すってどういうこと?!

「みちるは合気道を習っているのよ。お金持ちのお嬢様はね、自分のことは自分で守る術を持っていないとダメなの」
わざとお札を外すように投げていた、霊感少女もしてやったりみたいな顔で。

「セーラーVより役に立つな」
「アルテミス、何か言った?」
「いや、でも…本当のことだろ」
このまま何もしないで帰ってもいいのか迷うところ。
でも、タキシード仮面だって馬鹿じゃないんだから、力づくで取り返すとも限らないし。

「あなたたち、気持はわかるけれど危ないことをしちゃダメよ」
タキシード仮面が起き上がろうとしたから、セーラーVはとりあえず2人の前に姿を現した。姿を見せたら、奴も引き下がるだろうから。
「セーラーV!」
「……みちる、さっきからこの人はずーっと見てたわよ」
目をきらきら輝かせて、ふんわりパーマのお嬢様が嬉しそうにこっちを見ている。
あぁ、やっぱり人気ものなのねっ!
でも、霊感少女は、こっちの気配までわかっていたみたいで、“遅い”と言いたげに睨んでくるし。
「ごめんなさいね。あなたたちが結構頑張るから、出ていくタイミングがなくなっちゃった」
「レイ、ほら!やっぱり私たちが頑張る必要はなかったんじゃなくて?」
「得体のしれない人間に、貸しを作ってどうするのよ」
「そういう問題?」
「そう言う問題」
せっかくだから、サイン貰おうなんて言いだして。色紙もペンもないでしょ、って突っ込まれて。おいおいここで漫才を始めたら、こっちの立場はどうなるのよ。
「……えっと、とりあえず、ダイアは取り戻したし。タキシード仮面もいなくなったことだし…」
どさくさにまぎれて、タキシード仮面はひらりと逃げてしまっていた。
「あなた、追いかけないの?」

うぉ、霊感少女。
凄い剣幕で迫ってくる。
可愛い顔して。
どこか懐かしい気がするんだ、その怒った顔。

「これから闇が深くなるのに追いかけっこしてどうするの。ダイアはもう取り戻しているのだから、今はこれでいいのよ」
「……役に立ってないじゃない」
「そりゃ……悪かったわね」
「あなた、警備員に変装して、ずっと部屋の中をうろうろしていたでしょ?」

ぎくっ

流石、何でもお見通しの霊感少女ね。

「レイ、それ本当?なんで言わなかったのよ」
「みちるが騒ぐから」
「んも~!こそっと教えてくれてもよかったのに」
「そしたら、こそっとサインをもらいに行くでしょ」
「しないわよ」


また、漫才始めるの?
セーラーVは結局、最初から最後まで役に立つことはなかった。

「あーぁ。なんだかなぁ。いったい何なの、この子たち」

のちに再会した美奈子は、レイとみちるに、ピンクダイア事件をネチネチ責め立てられるのだった。

もちろん、地場衛も。




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Date:2013/11/10
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