【緋彩の瞳】 御利益頂戴 END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説[実写・前世設定なし]

御利益頂戴 END



5人で協力して夜ごはんを作って、初めて5人で誰かの家で手料理を食べる。何皿もおかずが並んで、こんな風に友達とワイワイ楽しくご飯を食べたなんて、ほとんどしたことがない美奈子にとっては、心の底から嬉しかった。
畳に腰を下ろして、ゆっくりごはんを食べて、今日のライブのこと、今までの仕事で面白かったことや、嫌だったこと、グラビアを撮影するときのポイントなんかを、うさぎたちに聞かせると、嬉しそうに瞳を輝かせてくれて、レイにもこれ以上興味ないとは言わせたくないから、一生懸命仕事のことを話した。うさぎたちの学校生活、4人で美奈子が主役を演じた映画を観に行ってくれたこと、話しは次から次に溢れ出てきて、デザートを食べおわったあとも、5人でずっと話しこんだ。
「あ、22時過ぎてる」
「本当だわ」
亜美の声に、みんな部屋の時計を見上げた。あれからあっという間に時間が過ぎたのだ。こんな楽しい時間はいつまででも続けていたい。仲間たちの顔を何度も見渡しながら、美奈子は名残惜しいため息をひとつ落とした。
「どうする?2人ともうちにくる?」
まことは立ち上がって、大きな伸びをした。1人荷物の軽い彼女は間違いなく帰らなければならない。
「このままレイちゃんちに泊まりたいけど、まこちゃんちに行こうかな」
うさぎはずっとレイにベタベタひっついている。世話の焼ける妹がなついているみたいに。
「誰も泊まっていいなんて言ってないわよ」
「言うと思った~。亜美ちゃん、行こうか」
「うん」
名残惜しそうなうさぎがレイの腕を解放して、部屋に荷物を取りに行った。それを亜美とまことが追いかけていく。
「美奈子は、明日お仕事?」
「うん、そうだけど……」

もしかして、泊まったら?なんて誘ってくれたりするのだろうか。
朝早いけど、一緒に寝て、5時前に起きて家に帰れば問題ない。
頭の中で時間を逆算してみる。

全然いける。

「そう。がんばってね。夜、おまわりさんに気をつけるのよ。私、これくらいの時間に見つかって、親に連絡されたことがあるから」
心の中で描いた妄想は、数秒で炎に焼きつくされた。美奈子は言いたいことを言って部屋を出て行くレイの背中をがっくりしながら追いかけて、うさぎたちと一緒にレイの神社を後にすることになった。

馬鹿

レイの馬鹿



暗闇の中、3人仲良く帰る姿を美奈子は見送った。ちょっとだけ方向が違うし、面倒だからタクシーを呼んだのだ。レイと2人きりになった鳥居の前で、空高い月を見上げながら、自分は何をしているのだろう、と、ふと思う。

たぶん、恋をしている
たぶん、ではない


「どうしたの?しんみりした顔して」
「……別に」
首が痛いくらい月を見上げていると、レイの声が耳を刺激した。レイのことを考えていたって言ったらどんな顔をするだろう。
「好きな人のことでも考えてたの?」
「さぁね」
「へぇ。アイドルでもそうやって、悩むものなのね」
いつもレイをからかっていたからなのか、ここぞと思って美奈子をからかっても、レイを苛立たせるような嫌みなんかを言い返せない。
「………レイも本気で人を好きになれば、わかるわよ」
「いや、いらないし」
「……そんなの…つまんない人生だわ」
月を見上げていた瞳をレイに移すと、余計なお世話っていう表情が現われていた。
レイは本当に、恋を知らないんだろう。

人を好きになる気持ちが、どれほど苦しいことなのか……

「そんなに両想いになりたいなら、うちの神社の御守りあげるわよ」
不貞腐れた顔のまま、レイはくるりと向きを変えると走って行ってしまった。
「え?…いや…ちょっと……」
呼びとめようと思ったけれど、ムキになったレイは美奈子の声なんてまるで聞いていなくて。
タクシーの光が神社に向かってくるのと同じタイミングでまた戻ってきた。
「あ、運転手さん。少しだけ待っててください」
美奈子は運転手に告げると、少し息を切らして戻ってきたレイの手元を見た。
「あ、でも初穂料は……。私が美奈子にあげたんじゃ、何か誤解を招くから」
白い小さな紙袋に入れられたそれは、タクシーの光に照らされて、中の御守りが赤いものだとわかった。

恋愛成就の御守り

欲しいけど……


「どうしたの?いらないの?」
「……いくら?」
「500円お納めください。ごめんね、本当はもっとちゃんと服も着替えて、きちんと渡すべきよね。でも、いつも以上に願いを込めてあるから」
「いや……別に…」
丁寧な言葉を使うレイの声を聞いて、美奈子は鞄から財布を取り出し、どうしよう、と思った。思いながらもちゃんと500円をレイに渡してしまっている。
「どうぞ。願いが叶うといいわね。もし、叶ったら教えてよ。なんなら、2人でうちに参拝に来て」
レイは参拝客を相手にでもした気持ちになっているのだろうか。

受け取った小さな袋の中から、そっと赤い御守りを取り出してみた。

『縁むすび・火川神社』

「……もし、叶わなかったらテレビで言いふらそうかな」
「神様に喧嘩を売らない方がいいわよ」
「でも、レイの願いが込められているんでしょう?じゃぁ、効くわよね?」
「まぁ、美奈子がちゃんと好きな人に渡せて、あとはそれがいいご縁だっていうならね」
美奈子は何か言葉を紡ごうと思ったけれど、レイの事務的な口調と、友達を応援するような口調があまりにもサバサバしていて、どうすればいいのかがわからなくて。
「タクシー、乗ったら?気をつけて帰ってね」
「……うん」
軽く手を振るレイに、美奈子は引きつった笑みで応え、開かれたままの後部座席に渋々と乗った。
「バイバイ、美奈子」
「……レイ」

バタン、と扉が閉じた。

「どちらまで?」
メーターのスイッチを押されて、ゆっくりと走りだしたタクシー。
「ちょっと!忘れ物。……その、止めてください。すぐですから」
「あ、はい」
20メートルも走っていないタクシーを止めた美奈子は、鞄を置いたまま自分でドアを開けて鳥居へとダッシュした。


「レイ!!!」
美奈子を見送ったレイの背中はまだ、見える場所にあった。
「……え?何……忘れ物?」
驚いた声で振りかえったレイが、眉をひそめて暗闇の中の美奈子を捕らえている。
怪訝な顔。

ドキドキうるさい胸の鼓動は、急に走ったせいじゃない


「…………これ!」
「何……美奈子が欲しかったものじゃないの?」
「だから、これ」
赤い縁むすびの御守りをレイの前に差し出した。



『好きな人に渡せば、両想いになれる』



「何?不満なの?」
「……違う。レイにあげる。だって、こうすればいいって言ったの、レイでしょ」



……
………

「……………は?」


レイは美奈子の手元と美奈子の顔を何度も何度も往復させた

何度目かで、美奈子の言わんとしたことがだんだんわかってきたみたいで、それを認めたくないのだろう、一歩ずつ後ろへと下がっていこうとする。
美奈子はレイの右手を掴んで、持っていた御守りをその掌にぎゅっと握らせた。
「言われたとおり、ちゃんと渡したから。あとは神様に委ねることにする」
「………ちょ…ちょっ…ちょっと、待って…………冗談でしょ?」
レイは握らされた御守りをどうすればいいのか、わかりやすくうろたえていて。

あぁ、本当に今まで全く美奈子の気持ちには気付いていなかったんだと、痛いくらいわかる。

「本気だから」
胸の高鳴りは痛みを伴っているけれど、勢いって時々怖い。
美奈子はさっきと同じように走ってその場から逃げるようにタクシーに戻った。

身体が小刻みに震えるのを抑えられずに、両腕をさすりながらさっきのレイの顔を思い出す。
驚きに目を見開いて、何がどうなっているのかわからない、といった顔。


明日から、電話しづらい……


勢いでこんなことをしてしまったけれど
レイに気持ちを打ち明けてしまってから、どうやってレイに電話をすればいいのだろう。
着信拒否なんて、されたらどうしよう。
もうきっと、膝枕なんてしてもらえないだろう。


「………馬鹿かも、私」

抑えられない気持ちを解放させて、すっきりして会えなくなってもいい覚悟をしたわけじゃない。
押し殺して、会う方がまだ楽しいって思っているくせに。



「レイだって…悪いんだし」


レイは今頃、どんなことを考えているだろう。
いまだに呆然と立ち尽くしたままだろうか。


レイは美奈子を、どんなふうに想ってくれるだろうか。


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Date:2014/09/25
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